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小説「廃屋の町」(第73回)

2017年9月18日ニュース

「はい、私が入札係の主任をしていた頃に市立病院の入札を担当しました。端から見るとおかしな入札だったように見えたかもしれませんが、法令や要綱に基づいて適正に行われた入札です。市議会でもそのように説明しています」
「誤解しないでください。別に、坂井さんを疑っている訳じゃないんです。不自然な入札になったのは上層部の意向が働いた結果じゃないかって、思っただけですよ」杉田が言った。
「坂井さん、どうしたんですか?顔色が悪いですよ」課長補佐の佐野が言った。
「大丈夫です。いずれ、はっきりすると思います」坂井が言った。
「話が大分、横道に逸れたね。本筋に戻そう。合併特例債の上限額が350億円あるからといって、全部使い切る必要はないんじゃないか?東日本大震災の発生で特例債の発行期間が合併後15年間に伸びたからといって、無理して使い切る必要はないと思うけどね」杉田が言った。
「でも国が返済額の7割を負担してくれるんだったら、使わない手はないですよ」佐野が言った。
「そうかな?合併特例債で行う事業が載っている合併建設計画には、270億円分の事業予算しか計上されていないじゃないか」杉田が言った。
「中山総務部長から聞いた話ですけど、合併建設計画の適用期間が5年延長されたことに合わせて、特例債が使える事業を追加して350億円を全部使い切るようにと、市長からご下命があったそうですよ」佐野が言った。
「ほんとかい!私は聞いていないけどね。じゃ残りの80億円は何に使うんだい?」
 杉田がぶ然とした顔で言った。
「中山部長の話では、合併前の旧4か町村が整備した公民館や体育館が老朽化したので、建て替えるって話ですよ」佐野が言った。
「合併特例債は類似の公共施設を統廃合する場合にしか使えないじゃないか?合併前の旧4か市町村は、公民館や体育館など同じような公共施設をそれぞれ持っていた。これら類似の施設を一、二か所に集約する場合に限って、合併特例債が使えるんじゃないのか?」杉田は言った。
「複合施設にするそうですよ」佐野が言った。
「複合施設?」杉田が怪訝な顔をして言った。
「例えば、支所庁舎と公民館、公民館と体育館を合体させせた施設とか、だそうですよ」佐野が言った。
「誰がそんなことを言ったの?」杉田が尋ねた。
「中山部長です」佐野が言った。
「それは詭弁だよ。そんなことをしても集約化したことにならないよ。合併して8年が経つけれど、合併当初の人口と比べて7%減少した。8年でマイナス7%ということは、大まかに計算すれば、40年でマイナス35%の人口減少だ。合併時に約11万人あった人口が40年後には約7万2千人になるってことじゃないか。それなのに、同じような公共施設を統廃合しないでそのまま建替えるなんて、将来の利用人口を無視した税金の無駄使いじゃないか!」杉田は語気を強めて言った。
(作:橘 左京)

posted by 地域政党 日本新生 管理者