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小説「廃屋の町」(第72回)

2017年9月16日ニュース

「話は変わるけど、ウチもあと5年で30年の住宅ローンが完済するけど、毎月の給料や年2回のボーナスからローンの返済額が自動的に差し引かれ、残ったお金で生活しなければならない。25年間、そういう生活をしてきたよ。二人いる子供も社会人になったので、今は家計も楽になったけど、大学生の頃は大変だったよ。二人とも東京の大学に進学したもんだから、子供たちの仕送り分を差し引いてカツカツの生活だったよ。もちろん、私の小遣いは雀の涙ほどだったけどね」
「私の家もそうでしたよ。どこの家も同じですね。亭主の給料は女房が管理し、住宅ローンの返済、子供の教育費、生活費の順で引かれ、残ったお金の一部が亭主の小遣いですからね」
 佐野が相槌を打った。
 国は平成の大合併を強力に推し進めるために、様々な財政上の優遇措置を講じた。その一つが、公共施設の整備や基金の造成に使える合併特例債だ。合併後10年間、合併建設計画に掲載された、合併に伴って必要な公共事業の財源にするため、合併特例債を発行することができる。合併特例債の返済時に元利償還金の7割が地方交付税として国から交付される。しかし、東日本大震災の発生がきっかけとなって、平成24年6月、被災地では合併後20年間、被災地以外は15年間に渡り特例債の発行が可能になった。
 なお、長野県では平成の大合併で120市町村が77にまで減少した。減少率は35.8%。長野県の隣にある新潟県では112あった市町村が4分の1に近い30まで減少した。減少率は73.2%で、全国第3位の減少率だ。
「返済額の7割を国が負担するとはいえ、合併特例債が借金であることに変わりはないよ。ところで、田沼市が使える合併特例債の上限は幾らだったかな?」杉田が尋ねた。
「約350億円です。このうち6割にあたる210億円は既に使っていますので、残り140億円を7年間で使うことになります」坂井が答えた。
「そういえば、一昨年10月に竣工した市立病院も合併特例債を使って建設したんだよね?確か、総事業費は約130億円だったと思うけど、この借入金は210億円に入っているの?」杉田が尋ねた。
「全部は入っていませんが、130億円のうち80億円が合併特例債で残りの50億円は病院事業債を充てています」
「ああ、そうか。今、思い出したけど、確か市立病院の入札はJV(共同企業体)方式で行われ、入札に参加したJVは一者しかなくて、結局、その一者が落札したんだったよね。一回目は入札価格が予定価格を上回って不落になって、その場で二回目が行われた結果、落札率が99.9%と極めて高く、異例尽くめの入札だったよね。市議会の一般質問で改進党系や共立党の議員さんたちが、官製談合があったんじゃないかって、市長や入札課長に質問していたけど、うやむやに終わってしまった感じだったよね。当時、坂井さんは入札課にいたから、その辺の事情はよく知っているんじゃないの?」
 杉田が尋ねた。
(作:橘 左京)

posted by 地域政党 日本新生 管理者