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橘左京の暮らし雑感(第1回)~お金は汚い?

2017年7月31日ニュース

 私は、先日、町内会主催のイベントに使うグッズの購入経費(レシート)の合計金額と町内会から預かったお金の残金を計算していた。私は封筒から取り出した残金を一万円札、五千円札、千円札の紙幣と五百円玉、百円玉、五十円玉、十円玉、五円玉、一円玉の硬貨を金種別に分けて、机の上に価値の高い順に並べていた。私がお金を手際よく振り分ける様子を6歳になる娘が、傍らで興味深そうに眺めていた。
 突然、娘から「お父さん、一番大きなお金はどれ?」と尋ねられた。私は娘にお金について教える好機と考え、一万札を娘に見せながら「これが一番高いお金の一万円札だよ」と教えた。娘は紙幣の価値よりも印刷されている人物に興味がそそられたようで、「この紙に人の顔が書いてあるけど、この人は誰?」と尋ねた。私は「福沢諭吉という偉い人だよ」と答えた。娘は「ここにも人の顔が書いているわ」と言って、五千円札や千円札を指して言った。私はお札を娘に見せて「これは樋口一葉だよ。これは野口英世という人だよ。二人とも偉い人だよ」と答えた。娘からは「ええ!そうなんだ」という言葉が返ってきて、第一ラウンドの会話はそこで終わった。娘から「偉い人ってどういうこと?」と言われたらどう答えようか、内心、びくびくしていたが、それ以上の追及はなかったのでほっとした。
 娘は貨幣価値の高い紙幣にはこれ以上の関心は示さず、キラキラ光る硬貨に視線が向かった。硬貨は10枚ずつ積み上げながら分けた。五百円、百円、五十円、五円は10枚までは積み上がらなかったが、十円と一円については10枚のタワーが2、3棟出来上がった。金種別に積み上がられた硬貨の山を見た娘から「これって全部でいくらになるの?」と尋ねられた。私は娘にお金の計算方法を教える好機ととらえ「五百円玉が1枚で五百円。百円玉が6枚で600円。五十円玉が2枚で100円。十円玉が……。全部足して1559円だよ」と答えた。娘はお金の計算よりも穴の開いた硬貨に興味を示して、「お父さん、このお金、穴が開いているよ!」と言った。私は「そうだね。五十円玉と五円玉は穴が開いているんだよ」と相槌を打った。娘から「この硬貨、どうして穴が開いているの?」と質問されたらどう答えようか、内心、びくびくしていたが、娘からはそれ以上の追及はなく、第二ラウンドの会話は終了した。
 私は娘にお金の計算方法を教える好機と考え、五百円玉1枚、百円玉1枚、十円玉2枚、五円玉1枚、一円玉3枚を娘に渡し、「幾らになるか計算してごらん?」と言った。娘はしばらく考えた後「お父さん、分かんないよ」と言ったので、私は「628円だよ」と答えた。娘には10倍ごとに次の桁に上がっていく十進歩を理解させるにはまだ早かったのかもしれない。
 傍らで私と娘の様子を見ていた妻が、突然、娘に向かって「後で手を洗いなさい」と言った。妻から言われた娘は「はい」と答えた。娘から「どうして、手を洗わなくてはいけないの?」と言われたら、妻は娘にどう答えただろうか?妻が娘に言った言葉を聞いて、私は子供の頃に母親から言われた同じような言葉を思い出した。微かに残っている当時の記憶を辿ってみると、お金を触った手を洗わなければならないのは「お金は大勢の人の手を介在していることから、手についた汚れや黴菌がお金に付着していている。汚れたお金を綺麗な手で触れば汚れが手に移る。だから手を洗う」という理屈だったと理解している。
 子供の頃は母親から受けた注意に対し何ら疑問を持つことなく「はい」の一言で終わってしまったが、これは明らかな誤りだ。しわくちゃになった紙幣や摩耗したお金は所持したことはあるが、汚れた状態のお金を持ったことはこれまで一度もない。生活するうえで大事なお金はいつも綺麗な状態で流通している。災害などで持ち主の手元から離れたお金は一時的に泥などで汚れているかもしれないが、泥まみれになった硬貨は水で洗えば「綺麗」になるし、汚れの付いた紙幣は発券銀行(日本銀行)に持って行けば「綺麗」なお札に代えてくれる。人間の手からお金に移った目に見えない黴菌(有害な微生物)だって、食べ物(養分)の無い硬貨や紙幣では生活はできない。むしろ皮脂にまみれた手の方が居心地が良い。
 しかし、不正な方法で得られ流通しているお金は外見上は「綺麗」なお金であっても、最初から「汚れ」たお金だ。詐欺で得たお金、麻薬など禁制品の取引で得たお金、賄賂、賭博で得たお金、公職選挙法違反の買収資金……。汚れた心で流通する「汚れたお金」。母親が私に教えたかった「お金が汚い」本当の意味はこういうことだったのではないだろうか。(作:橘 左京)

posted by 地域政党 日本新生 管理者

小説「廃屋の町」(第47回)

2017年7月30日ニュース

「冬場に備えて消雪パイプの補修が必要だし、冬になれば道路除雪も出てくる。雪崩が起きる場所だってある。雪が解けると、今度は除雪作業で傷んだ道路の補修が必要だ。梅雨や台風の時期になれば土砂災害で林道が流されるとか、毎年繰り返される小さな自然災害による道路の損傷に備えて、一定量の維持補修予算が確保されているんだ。維持系の公共事業予算って呼んでいるんだけどね。これが地元建設業者の安定した収入源になっている。建設業者の食い扶持ってとこかな。一方、道路の新設や公共施設の建設など、新設系の公共事業の方は、事業が終われば予算は付かなくなる。もっとも、道路が損傷した場合の維持補修や老朽化に伴う施設の修繕は維持系の公共工事として残るけどね。建設業界を有力な支持母体に持つ民自党の県議会議員は、維持系の公共事業予算の確保に腐心しているよ。特に選挙の年になると、建設業界の票を当て込んだ民自党からは県政与党という立場を利用して、公共事業予算の増額要望が県に出される。要望どおりの予算を確保した後は、『箇所付け』といって、公共工事の施工場所を巡って民自党の議員の間で予算の分捕り合戦が行われるんだ。この時に、個々の議員の力量の違いが出てくる。より多くの公共事業予算を自分の選挙区に持ってくれば、選挙の時に建設業界が強力な集票マシーンとなって動いてくれるからね。その点、田沼市選出の山田県議は大きな力を持っているよ」
「この前、ウチの店で建設業協会の総会があって、その後に行われた懇親会の席で、来賓の山田県議が挨拶の中で、田沼市内で行われる県の事業予算を大幅に増やしたことで、民自党の同僚議員からやっかみを買ったというような話をしていたけどね」風間が言った。
「これだけ沢山の公共事業予算を地元に持ってくるんだから、来年春の県議選には沢山の票を集めて欲しいってことね。田沼市内で行われている県の公共事業って、どんなのがあるの?」久保田が尋ねた。
「大きな事業といえば、田沼川の河川改修工事があるね。田沼川は安曇野連峰を水源に田沼市内を流れる二級河川で県が管理している。田沼川は総延長が約40キロある河川で、国が管理している一級河川の信州川に合流している。田沼川は川幅が狭いので、梅雨期に水量が増えると堤防が決壊する恐れがあるということで、今、河口から20キロの区間で川幅を広げる工事をしている。右岸側は市街地になっているので、左岸側の田んぼを買収して川幅を広げる工事が行われているんだ。総事業費は約400億円、事業の実施期間が20年だ」
「400億円と言えば市の年間予算と同じくらいだね。400億円を20年かけて田沼川の改修工事につぎ込む。平均すれば毎年20億円もの公共事業予算が田沼市内で使われているんだね」甘木が言った。
「そして県工事を受注するのは田沼市の建設業者ということか。当然のことながら、山田県議の実兄が経営する山田組も工事を受注しているってことだろうね?」風間が言った。
「もちろんだよ」
「上手くできているね。山田県議は挨拶の中で『田沼川の改修工事は私のライフワークだ』って言っていたけど、実兄が経営する建設会社の利益確保という趣旨も含んでいたんだね」風間が言った。
「公共工事や予算のことについてはだいたい分かったわ。市が発注する公共工事の入札で官製談合が行われているって話だけど、入札についてはまだ分からなことが多いわ」久保田が言った。
(作:橘 左京)

posted by 地域政党 日本新生 管理者

小説「廃屋の町」(第46回)

2017年7月28日ニュース

「今、杉田君が話したように、土木工事とか建築工事とか、公共工事っていろいろと種類があるみたいだけど、その辺、私のような素人でも分かるように説明してもらえない?」久保田が言った。
「ごめん、ごめん。つい専門用語が出てしまった。公共工事といっても様々な『業種』に分かれているんだ。入札に参加できる建設業者が登録された『入札参加資格者名簿』をみると、登録業者数が多い業種の順で『土木』、『建築』、『電気』、『菅』、『舗装』、『機械器具設備』などがあるよ。例えば、道路や河川工事の場合は『土木』に、道路の舗装工事だけであれば『舗装』の登録業者に発注される。一方、公共施設を建設する場合は、『建築』、『電気』、『機械器具設備』の登録業者に発注されるけど、移転新築の場合は、建設用地の造成工事を伴うので『土木』の登録業者も加わってくるんだ。もっとも大手の建設業者は『土木』と『建築』というふうに複数の業種で登録されていることが多いね」
「『菅』って何?」久保田が尋ねた。
「管工事のことで、道路の下に水道管や消雪パイプなど、長い管を敷設する工事のことだよ。そして、この『入札参加資格者名簿』には、業者名、本店の所在地、総合評点、格付結果が記載されているんだ。」
「総合評価、格付結果って何のこと?」久保田が尋ねた。
「総合評価は、公共工事の施工実績や技術力などを総合的に評価して点数化したものだよ。点数が高いほど評価が高くなる。格付結果は総合評価点を基にAからDまでランク付けされている。格付けの順番はAが一番高くて二番目がB、一番低いのがDということになるよ」
「田沼市内に本店を置いている地元業者にはどういった業種が多いの?」甘木が尋ねた。
「大手業者では『土木』、次に「建築」かな。中小の業者では『土木』、次に多いのが『菅』だね」
「『建築』を受注できる中小の地元業者が少ないんだね」甘木が尋ねた。
「そのとおり。建築工事には様々な専門技術者が関わっている。これらの人材を確保できるのは大手業者しかないんだ。専門の技術者を確保できない中小の建設業者は受注できる工事は土木工事や菅工事に絞られてしまうんだ」
「井上市長は文化会館と総合体育館の建設を市長選の公約に挙げるそうだけど、この施設を請け負える地元業者は大手しかないということ?」久保田が尋ねた。
「そうだね。受注できる業者は限られてくるね。それと、これら公共施設の入札は、たぶん共同企業体(JV)方式で行われると思うよ」
「共同企業体方式って?」久保田が尋ねた。
「ごめん、ごめん。また、お役所言葉が出てしまったよ。共同企業体方式っていうのは、一社だけでは請け負うことのできないような大規模な工事を複数の業者が協力して請け負うことだよ。文化会館と総合体育館の建設工事の入札が共同企業体方式で行われるということになれば、地元業者と県内ゼネコン、大規模な工事になればスーパーゼネコンも入ってくるかもしれない」
「県内大手の信州建設も入って来るかもしれない。社長の佐川郁夫は田沼市の出身だし、井上市長とは県庁時代から昵懇の間柄だ。何かきな臭い匂いがするよ」風間が言った。
「田沼市だけのことじゃないけど、建設業者のなかでも土木業者が多くなっている一因に、降雪が多くて山間部が多い長野県の地理的な特徴が関係しているよ」
「地理的特徴?」甘木が言った。
(作:橘 左京)

posted by 地域政党 日本新生 管理者

小説「廃屋の町」(第45回)

2017年7月26日ニュース

「確証はないけど、市が発注する公共工事の入札情報が入札前に業者側に漏れている『官製談合』が行われているんじゃないかと思っているよ」
「官製談合って何?」久保田が尋ねた。
「公共工事の入札は、発注者が『設計図書』っていう工事の仕様書を入札に参加する業者に示して、幾らで工事を受注できるかを、業者間で競わせて、一番安い価格を提示した業者と契約をするんだ。ところが入札前に業者同士が話し合って、落札する業者や落札価格を決めておいて、業界全体で不正に利益を分け合うことを『入札談合』っていうんだ。この入札談合は刑法で禁じられている違法な行為だ。この入札談合に発注者側の公務員が関与することを『官製談合』と呼んでいるんだ」
「杉田君の考えでは、市が発注する公共工事で官製談合が行われているってことね?」久保田が尋ねた。
「そう、田沼市内で行われる公共工事の落札率が県内市町村平均よりも高いのは、官製談合が行われていると思われてもしかたがないよ」
「官製談合には上層部も関わっていると思うけど誰か分かる?」風間が尋ねた。
「上層部では井上市長、市議会の遠山議長、小林副議長あたりだね。それと、山田良治県議会議員だよ」
「井上市長は県の土木部出身だし、遠山議長や小林副議長は市議会の最大会派『田沼クラブ』のツートップだ。田沼クラブは民自党の山田良治県議会議員系列の会派だからね」風間が言った。
「さっき、杉田君が、『田沼市内で行われる公共工事の落札率が県内市町村平均よりも高い』って言っていたよね。これは市が発注する公共工事だけでなく、県が発注する田沼市内の公共工事の落札率も高くなっているってこと?」甘木が尋ねた。
「そのとおり。田沼市内で行われる県の公共工事でも入札談合や官製談合が行われていても不思議じゃないね。井上市長は県の土木部出身だ。県の土木部には井上市長の部下だった職員だって多いだろう。また山田県議の実兄は山田組の社長だ。山田社長は建設業協会の会長をやっている」
「それと、『官製談合』に関わっている市の関係部署ってどこか分かる?」風間が尋ねた。
「道路や河川などの土木工事であれば建設課だし、新たな公共施設の建設になれば、出来上がった施設を所管する部署になる。それと入札業務を統括している入札課だ」
「この前、教育委員会に務めている妹から聞いた話だと、井上市長が市長選挙の目玉政策にしようと、文化会館と総合体育館の建設を公約に挙げるそうよ」久保田が言った。
「文化会館も総合体育館も教育委員会の所管だからね。でも入札に必要な設計図書の作成は、一級建築士のいる建設課が担当することになるよ」
「杉田君の話では、公共工事の入札を巡って政官業の鉄のトライアングルができているってことか」
 甘木が言った。
「そう、まさに『一蓮托生』の関係だね」杉田が言った。
(作:橘 左京)

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オンブズマン通信15.2~ハイテク園芸ハウスで育てた官業トマト(その2)

2017年7月25日ニュース


【地域政党日本新生イメージキャラクターウィズ」君】

 地元紙の伝えるところによれば、国道290号沿いの村杉温泉入口付近にある阿賀野市の観光物産施設「うららの森」に、市が国の地方創生交付金2500万円を使って整備した大型園芸ハウスで5月頃から栽培されていたトマトの収穫が始まり、同所で地元の旅館が考案したトマト料理の試食会が開かれたという。市ではこのトマトを「うららトマト」と命名し、将来は阿賀野市産のブランド品として売り出したいという。
 「ブランド品のトマト?」果たして、園芸ハウスで栽培された「うららトマト」のどこにブランド価値があるのだろうか?胸をワクワクさせながら記事を追っていくと、ブランド価値はトマト本体ではなく、トマトを栽培している園芸ハウスにあるようだ。( ´艸`)
 この園芸ハウス、遠方からハウス内の温度や湿度をスマートファンで把握でき、換気窓やカーテンも遠隔操作できるという。まさにハイテク施設だ。もしかしてトマトの栽培もオートメーション化され、ロボットが作っているのではないかと思ったが、記事には誰が栽培したトマトなのか書いていなかった。そこで市議をしている弟に聞いたところ、市(農林課)の職員がトマトを栽培しているという。
( ´艸`)
 記事によれば、「うららトマト」の料理を試食した参加者からは、「さっぱりして食べやすい」「夏バテに効きそうだ」などのコメントがあったという。「うららトマト」ではなく、スーパーで買った普通のトマトを使って同じ料理は作ったらどんなコメントがあっただろうか?「さっぱりして食べやすい」「夏バテに効きそうだ」?( ´艸`)
 この「うららトマト」は園芸ハウス前で6個230円で販売しているという。実は「うららの森」には野菜直売所がある。地元の農家が丹精込めて栽培した旬な野菜が所狭しと並んでいる。この時期、直売所にはトマトも並んでいることだろう。これって官業による民業圧迫ではないかだろうか?(#^ω^)
 うららトマトの記事が掲載された22日付けの地元紙にスーパーの折り込みチラシが入っていた。スーパのチラシに新潟県産のトマトが198円(税別、Sサイズなら4個、Мサイズなら3個)の値段が表示されていた。、1個当たりの価格をうららトマトとスーパーのトマトとで比較してみると、66円(スーパーMサイズ)、50円(スーパーSサイズ)、38円(うららトマト)の順になる。「うららトマト」は市の職員が作っている。職員の人件費をコスト(経費)に含めれば、「うららトマト」の1個当たりの値段を1000円くらいにしないと、経営収支が合わないのではないだろうか?( ´艸`) ※この項終わり。
(あとがき)
 小生、連日の熱帯夜で寝不足気味の中、このブログを書いている。ブログは毎回、午前零時にアップされる。読者諸氏におかれましては、眠れぬ夜にはブログを開いていただきたい。ブログが一服の清涼剤になって、安眠への誘いとなれば幸いである。なかには不眠症の誘因になってしまうケースもあるかも知れないが、そういう方は、ブログの閲覧はご遠慮いただきたい。
 ネット情報のヘビーユーザーなら、お気付きのことと思われるが、起動させたパソコン画面の周辺に突然、最近閲覧したサイトに関連した広告が表示されることがある。なかには見たくもない広告が見たい場所を占拠している悪質なケースも時々見受けられる。ご安心あれ。このサイトはブログを見たい人に、見たいだけ開放している極めて良心的なサイトである。
(代表:天野 市栄)

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小説「廃屋の町」(第44回)

2017年7月24日ニュース

 プルルル、プルルル
 甘木の携帯が鳴った。電話は風間健一からだ。
「風間だ。今、いいかい」
「ああ、大丈夫だ」
「この前、ウチの店で市役所課長会の親睦会があってね。財政課長をしている杉田昇が、途中、宴席を抜け出して帳場にいた俺のところにやってきてね。甘木に会って話したいことがあるって言うんだ」
「杉田昇って、中学の同級生の杉田君だよね」
「そう、同級生の杉田だよ」
「杉田君が僕に話したいことがあるって、どんな話だろう?」
「公共工事の入札についての話だって。詳しい話は甘木に会った時にするそうだ」
「公共工事の入札の話?」
「杉田が言うには、入札情報の漏洩だよ」
「それって官製談合ってこと?」
「そう、官製談合が行われているかも知れないってことだよ。そこで、杉田との会合の日程について相談したいんだけど……」
「日時や場所については、風間にまかせるよ」
「分かった。それじゃ今度の日曜日の午後2時にウチの店ということで、どうだい?杉田が甘木と会っているのを市役所の職員に見られたくないというもんだから。ウチの店を提供することにしたよ。昼間は使っていないカラオケルームなんかどうだろう?あそこなら、防音壁もあって話し声が外に漏れる心配もないからね」
「僕の方はそれで構わないよ。日曜日の午後2時だね。日程を入れておくよ」
「杉田との会合には久保田恵子にも声を掛けることにしたよ。恵子には市役所に務めている妹がいるんだ。その妹から市役所の内情を知ることもできるからね」
 日曜日の午後2時。風間が経営する店の中にあるカラオケルームに、甘木雄一、杉田昇、久保田恵子、それに店主の風間健一の4人が集まった。
「風間、面倒をかけて悪かったね。この時間帯は夜の宴会の準備で忙しいんじゃないかい?」
 杉田が言った。
「日曜日は昼間に宴会が入ることはあっても、夜に入ることはめったにないんだ。宴会といってもウチの場合、市役所や会社関係の飲み会がほとんどで、仕事がある平日や土曜日に入ることがあっても、仕事が休みの日曜日の夜に入ることはないね」
「健ちゃんから、市長選挙の作戦会議をウチの店でやるから来てくれって言われてきたけど、ここはカラオケルームじゃないの?まさか、これからカラオケをやるってこと?私、この前、友達とカラオケボックスに行ったばっかりよ」久保田が言った。
「恵ちゃん、会議が終わったら、二人でデュエットでもする?『銀恋』なんかどうだい?」
「音痴な健ちゃんと一緒に歌うのはもう懲り懲りだわ!この前の同級会で健ちゃんとデュエットしたけど、音程が崩れてめちゃくちゃだったじゃないの!」
「冗談はここまでにして、杉田君の話を聞こうじゃないか」甘木が杉田に目配せをした。
(作:橘 左京)

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オンブズマン通信15.1~ハイテク園芸ハウスで育てた官業トマト(その1)

2017年7月23日ニュース


【地域政党日本新生イメージキャラクターウィズ」君】

 私が愛読する地元紙(日刊紙)には、週に5回、地域版ニュースとして県内を7つの地域に分けて、地域ごとの旬な話題が掲載される。私が現在、住んでいる阿賀野市は「下越」地域に入る。「下越」地域に含まれる市町村は9つある。私は、毎朝、今日はどんな地元のニュースが掲載されているのだろうかと、胸をワクワクさせて地域版(下越版)の紙面を開く。「あれ?今日も載っていない」「下越」版に地元の話題が掲載される回数が、ここ数年、極端に少なくなっている。なぜだろうか?たまに掲載されるニュースと言えば、毎年、恒例の観光イベントぐらいである。
 人口の多い地域であれば、至る所で多種多様な住民活動が行われ、必然的に地域版に掲載される話題も多くなるのではないかと考え、「下越」地域に含まれる9つの市町村の人口を調べてみた。阿賀野市の人口は、現在約4万3千人で、9市町村中5番目の人口規模であるが、残念ながら人口規模の割には記事の掲載回数が少ないように感じる。一方、同じ「下越」地域に含まれる、隣町の阿賀町の人口は阿賀野市の4分の1程度であるが(9市町村中7番目)、阿賀野市と比べると記事の掲載頻度は高いように感じる。記事の掲載頻度は必ずしも人口規模に比例している訳でもないようだ。
 ところで、この新聞社には下越地域に村上、新発田、五泉、津川の4つの支局がある。阿賀野市を担当する支局は新発田支局だ。新発田支局は4つの市町村(新発田市、阿賀野市、胎内市、聖籠町)を担当している。阿賀野市を担当している記者が同時に聖籠町も担当しているという話を、市議をしている弟から聞いたことがある。一方、阿賀町には津川支局がある。阿賀野市を担当する記者は兼任、阿賀町を担当する記者は専任。もしかして、阿賀野市と阿賀町の掲載頻度が違うのは、担当記者が兼任か専任かの違いによるものかもしれない。
 地元の旬な話題が「下越」版に掲載される日を待ち望んでいたところ、昨日(7月22日)、久々に地元の記事が掲載された。「阿賀野 市の園芸ハウス産トマト初収穫 地元旅館が料理考案」という見出しである。※次号に続く。
(あとがき)
 五頭連峰(標高約千メートル)を境に隣接する「阿賀野」市と「阿賀」町は名前がよく似ていることから、時々、間違えられることがある。市外に住む知人に言われたことがあるが、両市町に対する市外の人の見立ては阿賀野市≦阿賀町だそうだ。阿賀町の方が阿賀野市よりも知名度(地名度?)が高いという意味である。両市町に対する地元紙の記事の扱いが知名度の優劣を決めているとすれば、事は深刻だ。
(代表 天野 市栄)

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小説「廃屋の町」(第43回)

2017年7月22日ニュース

 10月上旬、県議会議員の山田良治と田沼市土地改良区理事長の松本正蔵が市長の井上将司と、市長室のソファーで向き合っていた。松本正蔵は井上市長の後援会「将進会」の会長を務めている。
「先日、井上市長の出馬表明の新聞記事を見た後援会の幹部から、どうして前もって知らせてくれなかったんだ、というからお叱りの電話をいただきました。私からは、市長の4選出馬は本人が悩んだ末に下した苦渋の決断で、あらかじめ後援会の役員会で相談して決める内容ではない、というような話をして、うまくとりなしておきました」
「ありがとうございました。松本会長さんには大変ご迷惑をお掛けしました。9月の市議会で出馬表明する前に、マスコミに漏れてはいけないと考え、松本会長さんや一部の後援会幹部の方にだけ、私の胸のうちをお話しさせていただいたのですが、結果的に会長さん一人にご迷惑をお掛けする結果になってしまい、申し訳ありませんでした」
「そんなことは、たいしたことじゃありませんよ。それよりも、年が明けたら後援会総会を開いて、井上市長の4選出馬を後援会の皆さんに周知させて、選挙戦に向けた準備に取り掛かろうと思っていますが、所詮、相手は政治経験も行政経験もない素人です。年齢が若いだけの泡沫候補ですから、そんなに急いで準備を進める必要もないとは思いますが……」
「松本会長さん、後援会の方はよろしくお願いします。いくら相手が無名の新人とはいえ油断は禁物ですよ。元総理の大泉俊太郎さんがこんなことを言っていましたね。『人生には三つの坂がある。のぼり坂、くだり坂、そしてまさかである』って、政治の世界には、この『まさか』が付き物だってことですよ。大泉さんの後任の浦部総理が体調不良で突然辞任したのは、この『まさか』だったわけですよ」
「確かに、浦部総理は就任一年足らずで辞任しましたからね。誰もそうなるとは思っていませんでしたから、本当に『まさか』の辞任劇でした」松本が言った。
「松本理事長、その『まさか』が選挙になると、時々起きることがあるんだよ」山田が言った。
「もしかして『戸板の奇跡』のことですか?」松本が言った。
「そう、ちょうど一年前の10月に行われた戸板市長選は、現職と保守系候補の新人で争われた選挙だったよ。民自党長野県連は現職を推薦して盤石な体勢で臨んだ選挙だったよ。現職の当選は間違いないと、高を括っていたら、大差で現職が新人候補に敗れてしまった」山田が言った。
「戸板市長選挙で、その『まさか』が起きたってわけですね。実は、今日、こちらにお伺いしたのは、県が事業主体になって行う圃場整備事業に対して、市から財政支援をお願いできないかと思いまして、山田県議さんと一緒に伺ったわけです。市長もご存知のとおり、田沼市内の田んぼの多くが2反歩(約20アール)区画になっています。こんな小さな区画の田んぼでは大型の農業機械も使えません。そこで大型の機械が入るように4反歩(約40アール)区画に田んぼを広げれば、作業効率も上がって農家も助かるわけです。しかし、この圃場整備事業は農家負担があることから、事業の施行区域に田んぼを持っている農家全員の同意がないと事業を実施できないんです。米の販売価格が下がっていく中で、特に小規模経営の農家から同意を得るのが大変難しくなっています。農家負担が軽減されれば、全員の同意が得られそうなので、農家負担に対する市の財政支援をお願いしたいということです」
 松本が言った。
「井上市長、私からも、農家負担の軽減のためにも市からの財政支援を是非ともお願いしたい。長野県内の平場にある田んぼは、その殆どが4反歩区画に整備されたが、田沼市内の田んぼは、まだ2反歩区画の小さな田んぼが多い。農家全員の同意がないと、県は事業採択ができない。私は田沼市内で行われる県の公共事業予算をなるべく沢山確保し、工事は市内の建設業者からやってもらうことが、田沼市選出の県議会議員としての役目だと思っているよ」山田が言った。
「確か、圃場整備事業の事業費は、国、県、市町村、農家の4者で負担することが法律で決まっていたはずですが……。その上、更に市が農家負担に対して助成するってことができるんでしょうか?」
 井上が言った。
「市長、心配はいらないよ。合併特例債を使えばいいんだよ。特例債は返済額の7割を国が負担してくれるので、実質、市の負担は3割で済む。私のライフワークにしている、県事業の田沼川の河川改修工事も、市の負担分は合併特例債を使っているじゃないか。国からの財源手当が厚い合併特例債を残しておくのはもったいないよ。特例債の発行期間が10年から15年に伸びたんだから、限度額の350億円全部を使い切る覚悟を示さないと、来春の市長選挙で、建設業界からの支援は難しくなるよ」山田が言った。
「脅しですか?それは山田県議さんも同じことですよ。分かりました。ご期待に沿えるよう検討します」井上が言った。
「市長、お互いに来春の地方統一選挙で当選して、まだまだ遅れている田沼市の農業基盤整備を充実させようじゃないか。田沼市内の公共事業予算が増えれば、建設産業の雇用も増えて、若者の地元定着も図られる。若者を市外に流失させないようにするためにも、田沼市の基幹産業である建設産業の振興は大事だよ」山田が言った。
「私も県の土木部出身ですから、山田県議さんが今おっしゃたことはよく分かっていますよ。早速、担当部署に指示を出しますよ」井上が言った。
「よろしくお願いします」松本が深々と頭を下げた。
(作:橘 左京)

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小説「廃屋の町」(第42回)

2017年7月20日ニュース

 甘木と風間の挨拶回りは12月になっても続いた。二人は子育て世帯の多い新興住宅地を尋ねた。ある家では障害を持った子供を養育している主婦から、ごみの無料チケットの枚数を増やして欲しいという要望を受けた。次に訪ねた家では、休日に子供を遊ばせる場所が少ないので、遊具付きの児童公園を作ってほしいという要望を受けた。また別の子育て世帯の主婦からは子供の医療費の完全無料化や小中学校の学校給食費の無償化の要望を受けた。甘木と風間は子育て世帯の多い住宅団地を回ってみて、子育て支援の拡充が必要だと感じた。
「田沼市は県内18市の中で最も子供の割合が少なく、人口10人に対して子供は2人しかいない。一方、お年寄りは3人だ。残りの5人が働いている世代の人口だ。また田沼市の合計特殊出生率が県内最下位の1.16になっているのは田沼市が子育てしにくい環境にあるからだよ」
「今、甘木が言った子育てしにくい環境にあるってどういう意味だい?」
「田沼市が誕生して今年で8年目に入ったけれど、合併後の8年間を振り返ると無駄な公共事業が大変多くなっている。無駄は公共事業が増えたおかげで市が抱える借金も増えている。その借金を返すのは今働いている世代だし、将来働く世代になる子供たちだ。彼らに借金返済の負担を負わせようとしているのが今の井上市政だよ。ここ数年、子育て支援の厚い戸板市に子育て世代が逃げている。子育て世帯は子供と一緒に動くから子供の人口が減るのは当然だよ」
「まったく、甘木の言う通りだ」
 田沼市の近隣にある戸板市は、市営の工業団地に企業進出が続き、固定資産税など、市税収入が増え財政力指数が1を超えたことから、普通交付税の不交付団体になっている。財政的に豊かな町になった戸板市では、保育料の無料化、学校給食費の無償化など、急激に増えた子育て世帯に対する支援が充実している。
(作:橘 左京)

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小説「廃屋の町」(第41回)

2017年7月18日ニュース

「さっき話した圃場整備事業だよ。この事業によって大きな区画になった田んぼが、簡単に転用されてしまうことがあるんだ」
「転用って何ですか?」風間が尋ねた。
「農地を農地以外の用途に変えてしまうことだよ。土地改良事業の事業費は、農家負担以外は全て税金で充てられている。圃場整備事業で大きな区画になった田んぼは、8年間は転用できないことになっているが、公共事業用地として買収されると8年間の縛りがなくなるんだ。農家にとっては農地のままで売るよりも、公共用地として売った方が高い値段で売れるし、税金もかからない。いいこと尽くめだ。自分では耕作しないで農地を持っているだけの『土地持ち非農家』のなかには、将来、公共事業用地として転用されることを期待して農地を持っている農家もいるよ」
「興味深いお話を伺いました。多額の税金を使って美田を作っておいて、その美田を多額の税金を使って、公共事業用地として買収されて転用される。多いなる税金の無駄遣いですね」甘木が言った。
「そういえば、昨年、竣工した市立病院は田んぼを埋め立てて建設したんじゃなかったかな」
 風間が言った。
「思い出したよ。あの場所は圃場整備事業によって4反歩(約40アール)区画の田んぼに整備された優良農地があった場所だよ。事業が終わってまだ5年しか経っていないので、公共用地といえども転用はできない農地だったんだ。それが例外的に県から転用の許可が下りたんだよ。聞いた話だけど、病院建設用地として買収された田んぼの多くは、田沼市土地改良区の松本正蔵理事長が所有する田んぼだったらしいよ」
「え、え!ほんとうですか?山田県議が県に圧力をかけて、本来であれば転用できない農地に対して無理やり県の許可を出させたんじゃないですか?我々が支払った税金で私腹を肥やすなんて許せないね!井上市長は選挙公約で、文化会館と総合体育館の建設を目玉事業として挙げるらしいけど、建設予定地は高速道路インター付近の農地だって噂が流れているよ。市立病院の用地買収の時みたいに、何かきな臭い匂いがするよ」風間が言った。
「最後に一つ、甘木さんに検討してもらいたいことがあるんだ」
「それはどんなことですか?」
「農家の後継者対策だよ。昔の農家は、夜が明けると朝飯前に田んぼに出掛けて仕事を始め、朝飯を食べた後、また田んぼに出掛けて行って、日が暮れるまで仕事をしたもんだよ。田植えや稲刈りの時期になると、昼の弁当を持って、朝から日が暮れるまで田んぼで仕事をしたもんだ。私は小さい頃から家の手伝いをしながら、親の背中を見て育った。だから、自然と自分は農家の後継ぎになるんだって思うようになって、農業高校を出た後、家に入って農業を継いだよ。しかし、今の若いもんは、家業よりも会社勤めの方を選ぶ。二人の息子も農家は嫌だって言って会社勤めを選んだ。今は、家に残っている娘から手伝ってもらっている。ゆくゆくは婿養子をもらって農家を継いでもらいたいと思っているよ。甘木さんには期待しているよ。是非、市長になって我々専業農家のための農政をやってもらいたいと考えているよ」
「町場の商店主からも後継者が見つからないという話は伺いました。後継者難から廃業に追い込まれる中小零細な事業者が多いという話はよく聞きますね。農業であれ、商工業であれ、個人経営の事業者は、みんな後継者不足に悩んでいることが良く分かりました。今ほど頂いたご意見は、市長選に向けた政策に反映させたいと思います。お仕事中、時間を割いて頂きありがとうございました」
 甘木と風間は農家に礼を言って、次の目的地に向かった。
(作:橘 左京)

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