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小説「廃屋の町」(第44回)

2017年7月24日ニュース

 プルルル、プルルル
 甘木の携帯が鳴った。電話は風間健一からだ。
「風間だ。今、いいかい」
「ああ、大丈夫だ」
「この前、ウチの店で市役所課長会の親睦会があってね。財政課長をしている杉田昇が、途中、宴席を抜け出して帳場にいた俺のところにやってきてね。甘木に会って話したいことがあるって言うんだ」
「杉田昇って、中学の同級生の杉田君だよね」
「そう、同級生の杉田だよ」
「杉田君が僕に話したいことがあるって、どんな話だろう?」
「公共工事の入札についての話だって。詳しい話は甘木に会った時にするそうだ」
「公共工事の入札の話?」
「杉田が言うには、入札情報の漏洩だよ」
「それって官製談合ってこと?」
「そう、官製談合が行われているかも知れないってことだよ。そこで、杉田との会合の日程について相談したいんだけど……」
「日時や場所については、風間にまかせるよ」
「分かった。それじゃ今度の日曜日の午後2時にウチの店ということで、どうだい?杉田が甘木と会っているのを市役所の職員に見られたくないというもんだから。ウチの店を提供することにしたよ。昼間は使っていないカラオケルームなんかどうだろう?あそこなら、防音壁もあって話し声が外に漏れる心配もないからね」
「僕の方はそれで構わないよ。日曜日の午後2時だね。日程を入れておくよ」
「杉田との会合には久保田恵子にも声を掛けることにしたよ。恵子には市役所に務めている妹がいるんだ。その妹から市役所の内情を知ることもできるからね」
 日曜日の午後2時。風間が経営する店の中にあるカラオケルームに、甘木雄一、杉田昇、久保田恵子、それに店主の風間健一の4人が集まった。
「風間、面倒をかけて悪かったね。この時間帯は夜の宴会の準備で忙しいんじゃないかい?」
 杉田が言った。
「日曜日は昼間に宴会が入ることはあっても、夜に入ることはめったにないんだ。宴会といってもウチの場合、市役所や会社関係の飲み会がほとんどで、仕事がある平日や土曜日に入ることがあっても、仕事が休みの日曜日の夜に入ることはないね」
「健ちゃんから、市長選挙の作戦会議をウチの店でやるから来てくれって言われてきたけど、ここはカラオケルームじゃないの?まさか、これからカラオケをやるってこと?私、この前、友達とカラオケボックスに行ったばっかりよ」久保田が言った。
「恵ちゃん、会議が終わったら、二人でデュエットでもする?『銀恋』なんかどうだい?」
「音痴な健ちゃんと一緒に歌うのはもう懲り懲りだわ!この前の同級会で健ちゃんとデュエットしたけど、音程が崩れてめちゃくちゃだったじゃないの!」
「冗談はここまでにして、杉田君の話を聞こうじゃないか」甘木が杉田に目配せをした。
(作:橘 左京)

posted by 地域政党 日本新生 管理者