選挙と民主主義(第13編)~利益誘導政治は健在か?(その3)
二つ目の根拠は、公共事業予算の財源に関わる制約です。公共事業予算の財源は建設国債(国の借金)の発行によって賄われています。税収不足を補うために発行される赤字国債と併せた国債発行残高は約709兆円(平成24年度当初予算ベース)にも達し、GDP比率が148%にまで上昇しています。平成24年度の国の一般会計歳入予算総額(約90兆円)に占める国債の発行額の割合は49%、実に歳入予算の半分は借金で賄われている計算です。また、歳出予算総額(約90兆円)に占める国債費(国債の返済額、利息を含む)の割合は24%、4分の1の割合です。新たに借金をしても、その借金の半分は過去に借りた借金の返済に充てられていることになります。
さて、この国債を買っている人は誰でしょうか。私たち国民です。国債を買った覚えは無いと回答する方が多いと思われますが、半分は本当の話です。実際に国債を大量に買っているのは金融機関(銀行、保険会社など)ですが、その資金は私たち(主に高齢者)が金融機関に預けた預貯金です。金融機関は私たちから低い金利(預金金利)で集めたお金を企業や個人に高い金利(貸出金利)で貸し付けて利ザヤを稼いでいます。しかし、景気の低迷で企業や個人がお金を借りてくれないことから、金融機関は金利の低い国債を大量に買って利ザヤを稼いでいます。国債の金利は低い(新発物10年債の金利は0.8%前後で推移)ことから大量に買わないと利益が確保できないからです。しかし、近年、高齢者が年金では足りない生活費を賄うため預貯金を取り崩していることから、貯蓄率が低下しています。国債の金利は需給関係で決まることから買い手が少なくなれば金利は上昇します。金利が上昇すれば元本価格(時価)は下落し、大量の国債を抱える金融機関の含み損が拡大し財務体質が悪化します。日銀が直接、国債を引き受ければよいとの考え方もありますが、現状では日銀法を改正しなければ直接引き受けはできません。財政規律の問題や市場を通さない大量の貨幣供給によって引き起こされるハイパーインフレの懸念も出てきます。
国内資金(円)で消化しきれなければ、海外から資金調達すればよいとの考え方もありますが、ソブリンリスク(国家に対する信用リスク)の問題に突き当たります。今や国と地方を合わせた日本の公的債務残高のGDP比率(平成24年度ベース)は214%で、先進国では突出して高くなっています。債務危機が表面化したあのギリシャですら137%程度です。ソブリンリスクが高まると、国債の格下げ不安やデフォルト(債務不履行)懸念から、海外から資金調達が厳しくなってきます。このように公共事業予算の財源が国債発行に依存する限り、財政政策や金融政策による規律・規制に従わざるを得ない宿命にあるのです。
(PS)
今年も残すところ本日一日限りとなりました。皆さんにとって、今年はどんな一年でしたか。私にとっては、大きな挫折を経験した一年でした。今は、捲土重来を期すべく「雌伏して時の至るを待つ」心境です。一年間このブログをご愛読いただいた皆さまに感謝を申し上げ、今年の締めくくりといたします。ありがとうございました。
(代表 天野市栄)