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小説「廃屋の町」(第46回)

2017年7月28日ニュース

「今、杉田君が話したように、土木工事とか建築工事とか、公共工事っていろいろと種類があるみたいだけど、その辺、私のような素人でも分かるように説明してもらえない?」久保田が言った。
「ごめん、ごめん。つい専門用語が出てしまった。公共工事といっても様々な『業種』に分かれているんだ。入札に参加できる建設業者が登録された『入札参加資格者名簿』をみると、登録業者数が多い業種の順で『土木』、『建築』、『電気』、『菅』、『舗装』、『機械器具設備』などがあるよ。例えば、道路や河川工事の場合は『土木』に、道路の舗装工事だけであれば『舗装』の登録業者に発注される。一方、公共施設を建設する場合は、『建築』、『電気』、『機械器具設備』の登録業者に発注されるけど、移転新築の場合は、建設用地の造成工事を伴うので『土木』の登録業者も加わってくるんだ。もっとも大手の建設業者は『土木』と『建築』というふうに複数の業種で登録されていることが多いね」
「『菅』って何?」久保田が尋ねた。
「管工事のことで、道路の下に水道管や消雪パイプなど、長い管を敷設する工事のことだよ。そして、この『入札参加資格者名簿』には、業者名、本店の所在地、総合評点、格付結果が記載されているんだ。」
「総合評価、格付結果って何のこと?」久保田が尋ねた。
「総合評価は、公共工事の施工実績や技術力などを総合的に評価して点数化したものだよ。点数が高いほど評価が高くなる。格付結果は総合評価点を基にAからDまでランク付けされている。格付けの順番はAが一番高くて二番目がB、一番低いのがDということになるよ」
「田沼市内に本店を置いている地元業者にはどういった業種が多いの?」甘木が尋ねた。
「大手業者では『土木』、次に「建築」かな。中小の業者では『土木』、次に多いのが『菅』だね」
「『建築』を受注できる中小の地元業者が少ないんだね」甘木が尋ねた。
「そのとおり。建築工事には様々な専門技術者が関わっている。これらの人材を確保できるのは大手業者しかないんだ。専門の技術者を確保できない中小の建設業者は受注できる工事は土木工事や菅工事に絞られてしまうんだ」
「井上市長は文化会館と総合体育館の建設を市長選の公約に挙げるそうだけど、この施設を請け負える地元業者は大手しかないということ?」久保田が尋ねた。
「そうだね。受注できる業者は限られてくるね。それと、これら公共施設の入札は、たぶん共同企業体(JV)方式で行われると思うよ」
「共同企業体方式って?」久保田が尋ねた。
「ごめん、ごめん。また、お役所言葉が出てしまったよ。共同企業体方式っていうのは、一社だけでは請け負うことのできないような大規模な工事を複数の業者が協力して請け負うことだよ。文化会館と総合体育館の建設工事の入札が共同企業体方式で行われるということになれば、地元業者と県内ゼネコン、大規模な工事になればスーパーゼネコンも入ってくるかもしれない」
「県内大手の信州建設も入って来るかもしれない。社長の佐川郁夫は田沼市の出身だし、井上市長とは県庁時代から昵懇の間柄だ。何かきな臭い匂いがするよ」風間が言った。
「田沼市だけのことじゃないけど、建設業者のなかでも土木業者が多くなっている一因に、降雪が多くて山間部が多い長野県の地理的な特徴が関係しているよ」
「地理的特徴?」甘木が言った。
(作:橘 左京)

posted by 地域政党 日本新生 管理者