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小説「廃屋の町」(第45回)

2017年7月26日ニュース

「確証はないけど、市が発注する公共工事の入札情報が入札前に業者側に漏れている『官製談合』が行われているんじゃないかと思っているよ」
「官製談合って何?」久保田が尋ねた。
「公共工事の入札は、発注者が『設計図書』っていう工事の仕様書を入札に参加する業者に示して、幾らで工事を受注できるかを、業者間で競わせて、一番安い価格を提示した業者と契約をするんだ。ところが入札前に業者同士が話し合って、落札する業者や落札価格を決めておいて、業界全体で不正に利益を分け合うことを『入札談合』っていうんだ。この入札談合は刑法で禁じられている違法な行為だ。この入札談合に発注者側の公務員が関与することを『官製談合』と呼んでいるんだ」
「杉田君の考えでは、市が発注する公共工事で官製談合が行われているってことね?」久保田が尋ねた。
「そう、田沼市内で行われる公共工事の落札率が県内市町村平均よりも高いのは、官製談合が行われていると思われてもしかたがないよ」
「官製談合には上層部も関わっていると思うけど誰か分かる?」風間が尋ねた。
「上層部では井上市長、市議会の遠山議長、小林副議長あたりだね。それと、山田良治県議会議員だよ」
「井上市長は県の土木部出身だし、遠山議長や小林副議長は市議会の最大会派『田沼クラブ』のツートップだ。田沼クラブは民自党の山田良治県議会議員系列の会派だからね」風間が言った。
「さっき、杉田君が、『田沼市内で行われる公共工事の落札率が県内市町村平均よりも高い』って言っていたよね。これは市が発注する公共工事だけでなく、県が発注する田沼市内の公共工事の落札率も高くなっているってこと?」甘木が尋ねた。
「そのとおり。田沼市内で行われる県の公共工事でも入札談合や官製談合が行われていても不思議じゃないね。井上市長は県の土木部出身だ。県の土木部には井上市長の部下だった職員だって多いだろう。また山田県議の実兄は山田組の社長だ。山田社長は建設業協会の会長をやっている」
「それと、『官製談合』に関わっている市の関係部署ってどこか分かる?」風間が尋ねた。
「道路や河川などの土木工事であれば建設課だし、新たな公共施設の建設になれば、出来上がった施設を所管する部署になる。それと入札業務を統括している入札課だ」
「この前、教育委員会に務めている妹から聞いた話だと、井上市長が市長選挙の目玉政策にしようと、文化会館と総合体育館の建設を公約に挙げるそうよ」久保田が言った。
「文化会館も総合体育館も教育委員会の所管だからね。でも入札に必要な設計図書の作成は、一級建築士のいる建設課が担当することになるよ」
「杉田君の話では、公共工事の入札を巡って政官業の鉄のトライアングルができているってことか」
 甘木が言った。
「そう、まさに『一蓮托生』の関係だね」杉田が言った。
(作:橘 左京)

posted by 地域政党 日本新生 管理者