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橘左京の暮らし雑感(第1回)~お金は汚い?

2017年7月31日ニュース

 私は、先日、町内会主催のイベントに使うグッズの購入経費(レシート)の合計金額と町内会から預かったお金の残金を計算していた。私は封筒から取り出した残金を一万円札、五千円札、千円札の紙幣と五百円玉、百円玉、五十円玉、十円玉、五円玉、一円玉の硬貨を金種別に分けて、机の上に価値の高い順に並べていた。私がお金を手際よく振り分ける様子を6歳になる娘が、傍らで興味深そうに眺めていた。
 突然、娘から「お父さん、一番大きなお金はどれ?」と尋ねられた。私は娘にお金について教える好機と考え、一万札を娘に見せながら「これが一番高いお金の一万円札だよ」と教えた。娘は紙幣の価値よりも印刷されている人物に興味がそそられたようで、「この紙に人の顔が書いてあるけど、この人は誰?」と尋ねた。私は「福沢諭吉という偉い人だよ」と答えた。娘は「ここにも人の顔が書いているわ」と言って、五千円札や千円札を指して言った。私はお札を娘に見せて「これは樋口一葉だよ。これは野口英世という人だよ。二人とも偉い人だよ」と答えた。娘からは「ええ!そうなんだ」という言葉が返ってきて、第一ラウンドの会話はそこで終わった。娘から「偉い人ってどういうこと?」と言われたらどう答えようか、内心、びくびくしていたが、それ以上の追及はなかったのでほっとした。
 娘は貨幣価値の高い紙幣にはこれ以上の関心は示さず、キラキラ光る硬貨に視線が向かった。硬貨は10枚ずつ積み上げながら分けた。五百円、百円、五十円、五円は10枚までは積み上がらなかったが、十円と一円については10枚のタワーが2、3棟出来上がった。金種別に積み上がられた硬貨の山を見た娘から「これって全部でいくらになるの?」と尋ねられた。私は娘にお金の計算方法を教える好機ととらえ「五百円玉が1枚で五百円。百円玉が6枚で600円。五十円玉が2枚で100円。十円玉が……。全部足して1559円だよ」と答えた。娘はお金の計算よりも穴の開いた硬貨に興味を示して、「お父さん、このお金、穴が開いているよ!」と言った。私は「そうだね。五十円玉と五円玉は穴が開いているんだよ」と相槌を打った。娘から「この硬貨、どうして穴が開いているの?」と質問されたらどう答えようか、内心、びくびくしていたが、娘からはそれ以上の追及はなく、第二ラウンドの会話は終了した。
 私は娘にお金の計算方法を教える好機と考え、五百円玉1枚、百円玉1枚、十円玉2枚、五円玉1枚、一円玉3枚を娘に渡し、「幾らになるか計算してごらん?」と言った。娘はしばらく考えた後「お父さん、分かんないよ」と言ったので、私は「628円だよ」と答えた。娘には10倍ごとに次の桁に上がっていく十進歩を理解させるにはまだ早かったのかもしれない。
 傍らで私と娘の様子を見ていた妻が、突然、娘に向かって「後で手を洗いなさい」と言った。妻から言われた娘は「はい」と答えた。娘から「どうして、手を洗わなくてはいけないの?」と言われたら、妻は娘にどう答えただろうか?妻が娘に言った言葉を聞いて、私は子供の頃に母親から言われた同じような言葉を思い出した。微かに残っている当時の記憶を辿ってみると、お金を触った手を洗わなければならないのは「お金は大勢の人の手を介在していることから、手についた汚れや黴菌がお金に付着していている。汚れたお金を綺麗な手で触れば汚れが手に移る。だから手を洗う」という理屈だったと理解している。
 子供の頃は母親から受けた注意に対し何ら疑問を持つことなく「はい」の一言で終わってしまったが、これは明らかな誤りだ。しわくちゃになった紙幣や摩耗したお金は所持したことはあるが、汚れた状態のお金を持ったことはこれまで一度もない。生活するうえで大事なお金はいつも綺麗な状態で流通している。災害などで持ち主の手元から離れたお金は一時的に泥などで汚れているかもしれないが、泥まみれになった硬貨は水で洗えば「綺麗」になるし、汚れの付いた紙幣は発券銀行(日本銀行)に持って行けば「綺麗」なお札に代えてくれる。人間の手からお金に移った目に見えない黴菌(有害な微生物)だって、食べ物(養分)の無い硬貨や紙幣では生活はできない。むしろ皮脂にまみれた手の方が居心地が良い。
 しかし、不正な方法で得られ流通しているお金は外見上は「綺麗」なお金であっても、最初から「汚れ」たお金だ。詐欺で得たお金、麻薬など禁制品の取引で得たお金、賄賂、賭博で得たお金、公職選挙法違反の買収資金……。汚れた心で流通する「汚れたお金」。母親が私に教えたかった「お金が汚い」本当の意味はこういうことだったのではないだろうか。(作:橘 左京)

posted by 地域政党 日本新生 管理者