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小説「廃屋の町」(第68回)

2017年9月8日ニュース

「そういえば、小林副議長が市長選に出るという噂が昨年の暮れ頃に流れていたけれど、これって本当なの?」久保田が高橋に尋ねた。副議長の小林俊二は市議会最大会派「田沼クラブ」の若手ホープで会派の幹事長を務めている。
「そういう話も一時出たけど今はないよ。会派のなかでは若手ホープの小林副議長を市長選の候補に推す声もあったけれど、市長会派の田沼クラブから候補者が出ると井上市長と保守票を分け合う形になって選挙戦では不利になると考え、井上市長に一本化したそうだよ」高橋が言った。
「あのケチで有名な小林副議長がタダで出馬を取りやめるはずがないわ」久保田が言った。
「保守候補の一本化ため、お金を使って候補者調整が行われたという話も聞くけれどね。小林副議長の出馬取り止めの真相は分からないよ」高橋は答えた。
「立候補を辞退させるために買収をすれば、公職選挙法違反になりますよ」
 元田沼市選挙管理委員会事務局長の米山修二が言った。米山は公職選挙法第223条を示して、「立候補辞退等の買収罪」を説明した。
「さすがに米山さんは選挙実務のプロだけあって詳しいですね。これからも、ど素人の僕たちにご教示を賜りたく、よろしくお願いします」風間が言った。
「公職選挙法の条文解釈や運用は私に任せてください。甘木さんにはフェアプレー精神で選挙戦に臨んでもらいたいと思います」米山が言った。
「ありがとうございます。公職選挙法に則って正々堂々と選挙に臨むことを誓います」
 甘木は米山に向かって選手宣誓をした。
「高橋は編集長なんだから、編集長の立場を利用して甘木のいいところをたくさん書いてくれよ。同級生としての頼みを聞いてくれるだろう?」風間が言った。
「選挙用の記事になるから、肩入れせずに公平に扱わないとね」
「高橋さんの言っていることは正しいですよ。そうしないと公職選挙法違反になります。新聞や雑誌が、選挙に関する報道や評論を掲載するのは『報道の自由』によって制約を受けることはないのですが、嘘や事実を曲げて掲載すれば、『表現の自由』を乱用したことになり、編集責任者や経営者が処罰されます」米山は公職選挙法第148条の2と235条の2を示して説明した。
「選挙ってダメダメの決まり事だらけじゃないか」風間が不満そうな顔つきで言った。
「仕方がないですよ。公職選挙法は、違反のない公明正大な選挙が行われるようにと作られた法律です。選挙は厳格なルールの下で行われるスポーツ競技と同じですよ」米山が言った。
(作:橘 左京)

posted by 地域政党 日本新生 管理者