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小説「廃屋の町」(第7回)

2017年5月9日ニュース

「僕の当選祝いの会に出席している君たちはいいの?」
「僕たちは同級生の集いに出ているだけだから、全然、問題はないよ。『市政の私物化』で、もう一つ思い出したんだけど、井上前市長は長野市内にマンションを持っているらしいんだ。マンションは県庁に務めていた頃に購入したらしいよ。時々、公用車を使って、市役所とマンションを行き来していたらしいよ」木下が言った。
「そのマンションはセカンドハウスってこと?」甘木が言った。
「公私混同も甚だしいね。人伝に聞いた話だけれど、そのマンションで愛人と密会しているって話だよ」風間が言った。
「いずれにしても井上前市政の闇の部分を明らかにしないと、田沼市の未来は切り開けないよ。まずは官製談合疑惑の徹底究明だよ」甘木が言った。
「亡くなった坂井さんの遺志に報いるためにも、甘木には、3年前に行われた市立病院の移転新築工事の入札談合の真相解明をやって欲しいよ。当時、入札課で市立病院の入札を担当していた坂井さんは、命を賭して井上前市長らの不正行為を弾劾しようとしたんだ」杉田が言った。
「市立病院の入札談合の件で、三月に公正取引委員会の調査が行われたようだけど……」
「あの時は、結局、証拠が見つからなくて終わってしまったが、不正が行われた証拠は今も残っているさ。市長の権限を使って、坂井さんの無念を晴らしてもらいたいよ」
「杉田君に木下君、是非、君たちの力を借りたい。よろしく頼むよ」
 甘木は、杉田と木下のコップにビールを注いだ。
「甘木、伏魔殿の居心地はどうだい?」
 月刊「たぬま新報」編集長の高橋義男が甘木のコップにビールを注いだ。
(作:橘 左京)

posted by 地域政党 日本新生 管理者