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小説「廃屋の町」(第122回)

2017年12月25日ニュース

「こんにちは、米山です。これ、皆さんで召し上がってください」
 事務所に入った元田沼市職員の米山修二が菓子折りを久保田に渡した。
 菓子折りを開けた久保田が、
「あら、美味しそうなイチゴのショートケーキ。ごちそうさまです。早速、頂きましょう」と言って、その場にいる4人に熱いコーヒーと一緒に配った。
「高橋、今日は取材?」甘木が尋ねた。
「半分は取材で、半分は情報提供だそうよ」久保田が言った。
「何だい、情報提供って?」甘木はコーヒーカップを手に持って尋ねた。
「一つは選挙情勢についてだよ。多分知っていると思うけど、県議選は無競争になりそうだよ」
 高橋が言った。
「最初の頃、民自党の元国会議員の秘書をやった手島って人が県議選に出るって噂が流れていたけど。その話はなくなったんだね?彼が出れば、保守票が割れて現職の山田県議は苦戦するだろうとみていたけどね」風間が言った。
「手島さんはまだ年齢も40代と若いんで、県議になる前に市議になって、政治家経験を積んだ上で、次になるのか、その次になるのか分からないけど、山田県議の後継者として県議選に出るということで、話がまとまったらしいよ。何でも田沼クラブの最年長者の山崎光蔵市議が今期限りで市議を引退するので、その後継候補として、手島さんが市議選に出るらしいよ」高橋が言った。
「それだけで、県議選の出馬を取り止めにするかしら?手島って人は秘書時代に政治資金の着服事件を起こしたって聞いたことがあるわ。立候補を取りやめる条件にお金を要求したんじゃないの?」
 久保田が言った。
「お金を使って立候補を辞退させれば、立候補辞退等の買収罪になりますよ」
 元田沼市選挙管理委員会事務局長の米山修二が、公職選挙法第223条を説明した。
「手島に立候補をやめさせるために、お金を使ったかどうかは分からないけど、県議選は今回も無競争になりそうだよ。一方、市長選挙の方は、こちらも最初、市議会副議長の小林俊二さんが市長選に出るつもりでいたけど、井上市長が4期目も当選すれば、次の選挙には出ないで、小林さんに禅譲することで話がついたらしいんだ」高橋が言った。
「あのケチで有名な小林副議長がタダで立候補をやめたなんて信じられないわ。お金をもらって立候補を取りやめたんじゃないの?」
 久保田が言った。
「そうだとすれば、それも立候補辞退等の買収罪になりますよ」米山が言った。
「その結果、市長選は現職の井上市長と新人の甘木が四つに組むという構図だね」高橋が言った。
「八百長試合が発覚した大相撲は人気に陰りが出てきましたが、市長選挙は大入りが期待できそうですね」米山の冗談で一瞬、場が白けた。
「さっきの話の続きだけど、県議選の田沼市選挙区は市長選の選挙区と重なることから、民自党の長野県連は、現職の井上市長を推薦していることもあって、県議選と併せて市長選についての世論調査も一緒に行ったそうなんだが、甘木が頭一つリードしているって結果が出たそうだよ」
「ええ!それってホントなの?」久保田が驚いた様子で言った。
(作:橘 左京)

posted by 地域政党 日本新生 管理者