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小説「廃屋の町」(第119回)

2017年12月19日ニュース

「ところで、オタクの集票システムの値段は幾らだね?」
「両手で3本です」
「300万円かね?」
「御冗談を。一桁違います」
「3000万円!大層な値段を吹っ掛けてきたな!」
「お客様の資力に合わせた金額です。3000万円の内訳は着手金として2000万円。残りの1000万円は成功報酬です」
「分かった。オタクに頼むよ」
「ありがとうございます。井上さまが当選できるように当社の社運をかけて取り組んでまいります」
「よろしく頼むよ。ところで甘木陣営の事務所には営業に行ったの?」
「私どもの仕事は商売でやっています。資力の無いところ、利益の出ない所には行きません」
 遠山は思わず苦笑をした。
 井上陣営は前回の市長選と同様に今回も組織戦で臨む。県議選は今回も無競争となることがほぼ決まったことから、井上市長の後援会だけでなく山田県議の後援会組織も活用した票集めを行うことになった。それと新年度予算事業を前面に出した業界団体への働きかけもある。選対本部長の遠山は現職と新人の一騎打ちになった4年前の市長選挙を思い出した。現職の強みを生かした組織戦に大胡坐をかいていたら、後半、新人に追い上げられて僅差での勝利だった。
 今回の選挙も現・新一騎打ちの構図だ。高齢化が進んで、井上市長と山田県議の後援会組織のフットワークは4年前と比べて落ちている。業界団体に井上支持を働きかけても社員とその家族など末端、細部まで現職支持が広がるかどうかは分からない。遠山は、先日、息子や娘に現職支持を頼んだところあっさりと断られたことを思い出した。会社の朝礼で井上市長に投票するようにと社長の話があったことを、息子と娘から聞いていた遠山であるが、業界団体に働きかけても、案外、効果がないのかもしれないと思った。
(作:橘 左京)

posted by 地域政党 日本新生 管理者