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小説「廃屋の町」(第110回)

2017年12月1日ニュース

 坂井盛男は懲戒免職処分の通知書を田沼署の留置場で受け取った。逮捕されてから20日間の留置・拘留の後、釈放された坂井盛男は数日後、廃業した実家の工場の中で首を吊って自殺した。坂井は自殺した日の前日、公正取引委員会委員長宛てに一通の手紙を投函した。

 公正取引委員会委員長 様
 向春の候、益々ご清栄のこととお喜び申し上げます。
 私は長野県田沼市職員で財政課予算係長をしています坂井盛男と申します。3年前に行われた市立病院建設工事の入札で官製談合が行われたものと考え、貴職にお手紙を差し上げた次第です。当時、入札課に在籍していた私は入札執行職員としてこの工事の入札を担当しました。
 病院の建設工事は建築、電気設備、機械設備の3つの工事種別に分割され、それぞれの工事について、特定共同企業体(JV)による入札方式で行われました。JVは3社で構成され、必ず1社は市内に本社を置く建設業者を入れることが条件になっていました。
 電気設備と機械設備の2つの工事は、それぞれJV二者が入札に参加しましたが、建築工事の方は、一者だけの入札参加で行われました。建築工事の入札に参加したJVは、県内ゼネコンの信州建設と森山組、それに地元業者の山田組の三社で構成されていました。
 建築工事の入札は総合評価方式で行われました。この入札方式は、建設業者から提示された入札価格だけでなく、施工計画、施工実績、企業の社会性、地域貢献度など、あらかじめ設定された評価項目も考慮して、総合的に落札業者を決定するものです。
 言い換えれば、総合評価方式の場合、入札価格が他の業者が入れた価格よりも高くても、評価点が高ければ落札できるという入札方式です。田沼市では総合評価方式による入札が行われたのは、今回が初めてのケースでした。また、入札執行日は建築工事が2月10日、電気設備と機械設備の2つの工事が2月20日に行われました。建築工事の入札は、電気や機械の入札よりも早く行うようにとの課長の指示でしたが、どうして別の日に行う必要があるのか、疑問に思いました。
 JV方式による入札、総合評価方式による入札、入札執行日を建築と電気や機械とで分けた理由について、当時の入札課長だった中山邦夫総務部長に尋ねたところ、中山課長からは「全ては上層部の意向で決まった」と言われました。
 2月10日に建築工事の入札が市役所本庁舎3階にある入札室で行われました。入札書を持って来た業者は幹事社である信州建設の営業部長でした。入札書を持って来た人が代表者本人でなかったので、入札を始める前に、入札書と一緒に提出された委任状で、営業部長に代理権があることを確認しました。入札執行職員は私と野上敏夫入札係長の二人でした。また、立ち合いで中山課長が同席していました。入札室には、業者側は信州建設の営業部長一人、市の方は入札執行職員の私と野上係長、立ち合いで中山課長の4人が在室していました。
(作:橘 左京)

posted by 地域政党 日本新生 管理者