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小説「廃屋の町」(第114回)

2017年12月9日ニュース

「本当に、皆さんには、選挙が間近に迫る中、御尽力を頂きありがとうございます。市長選の状況でありますが、結論から申し上げれば、新人候補の甘木雄一との一騎打ちになりそうです。当初、市長選への立候補を模索していた市議会副議長の小林俊二さんは、今回は見送ることになりました。自分が出れば保守分裂となり対立候補を利するだけとして、小林さんは大英断を下されました」
「今ほど井上市長がお話しになった件について、私から補足説明をさせていただきます。井上市長におかれましては、今回の選挙に当選すれば、次の選挙には立候補せず、副議長の小林さんに市長の椅子を禅譲したいという意向であります」松本が言った。
「副議長の小林さんは、本当にそれだけの理由で、市長選への立候補を取り止めたんでしょうか?小林さんが立候補を取り止めるにあたって、解決金とか、お金の話は出なかったんでしょうか?」
 森山が尋ねた。
「私からはこれ以上のことは申し上げられません」松本は不機嫌な表情を浮かべて言った。
「次に、市長選の選対本部長を務めております私の方から、皆さんのお知恵をお借りしたいことがありますので、申し上げます」と言って、遠山は長野日刊新聞のコピーと政財界信州3月号のコピーを一同に配った。
「今ほど配ったコピーにも書いてあるように、3年前に行われた市立病院の移転新築工事の入札について、官製談合の嫌疑がかけられ、公正取引委員会による調査が近々、工事を発注した市役所と工事を受注した建設会社で行われます。官製談合がマスコミ報道されたことで、戦況は我が陣営にとって大変不利な展開となっています。選挙まで残すところ一か月余りとなり、早急に手を打たないと大変な事態になります。そこで、皆さんにご相談申し上げたいと思います」遠山は厳しい表情を浮かべて言った。
 続いて、山田県議が
「民自党長野県連幹事長の立場で、田沼市長選挙の戦況について申し上げたいと思います。今ほど、遠山議長が言ったように、このままいけば、大変厳しい結果になるという調査結果が出ています。民自党長野県連が県議選の選挙区ごとに行った県民世論調査、これは民間の調査会社に委託して行った電話による調査ですが、田沼市選挙区においては、新人の甘木が頭一つリードしています!」と報告した。
 山田県議の方向を聞いた井上市長の表情がこわばった。
「え、え、ほんとか!」一同がどよめいた。山田県議は話を続けた。
「昔であれば、実弾を用意して一発逆転を狙うところでございますが、捜査当局の取り締まりが厳しくなっています。特に現金の授受を伴う買収行為には目を光らせています」
「松本理事長さん。資材・機材の調達、それに人員の確保など、網の目のように広がっている建設業界の結束力は強固です。皆さんが当選すれば、公共工事という食い扶持を頂くわけですが、選挙の準備で疲れ切った胃袋に、選挙が終わって後、丼飯を入れても消化不良を起こしてしまいますよ。我々建設業界は選挙が終わるまでは手弁当で票集めを行いますが、着手金として弁当代くらいはもらえないかという提案なんですが、いかがでしょうか?両手で結構です」佐川が言った。
「今、佐川さんのおっしゃたことはよく分かりました。井上市長の後援会長として申し上げますが、票集めでお難儀をかけます皆さまには、弁当代として1社当たり10万円ずつ用意させていただきます」
 松本が言った。
「松本さん、一桁違うよ」山田会長が言った。
「あ、あ、失礼しました。早速、軍資金の手配をします」松本が言った。
(作:橘 左京)

posted by 地域政党 日本新生 管理者