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小説「廃屋の町」(第90回)

2017年10月22日ニュース

 プルルル、プルルル
 井上市長の携帯が鳴った。電話は山田県議からだ。
「例の政財界信州の根津から吹っ掛けられた1000万円の件だけど、根津は社長の指示で動いていたようだ。ウチのマスコミ担当が社長と面会して交渉したんだが無理だったよ。先方の要求どおり1000万円を用意してもらえないだろうか。それと手間代も貰えるかね。両手でいいよ」
「1000万円ですか!」
「一桁違うよ。100万だ」
「分かりました。早速1100万円を用意させます。お手数をお掛けして申し訳ありませんでした」
「それと橋爪の交通違反歴だけれど、昨年、駐停車違反をやっているね。違反点数は2点だ」
「駐停車違反ですか。こちらで確認しますが、その程度の交通違反で懲戒処分ができますかね?県議さんにはお手数をお掛けしました。どうもありがとうございました」
 電話を終えた井上は日下部に指示して、総務課長の立川智を市長室に呼んだ。
「失礼します」立川が市長室に入った。
「まあ、掛けたまえ」
「はい」
「この前は、橋爪係長の運転免許証のコピーの件、ありがとう。コピーは用が済んだのでシュレッダーにかけて処分しておいたから大丈夫だよ。一般論として君に聞きたいんだが、駐停車違反をした場合は懲戒処分になるのかね?」
「橋爪が駐停車違反をしたってことですか?」
「一般論として聞きたいって、今、言っただろう!」
「ああ、そうでしたね。駐停車違反のような軽微な交通法規違反では懲戒処分にはなりません」
「では、どういった交通違反なら懲戒処分になるんだね?」
「田沼市が定めている職員の懲戒処分の指針によりますと、飲酒運転をした場合は免職、停職、減給となりますが、事故を起こすと厳しい処分となります。酒酔い運転で人を死亡させ、怪我をさせた場合は免職になります。酒気帯び運転で人を死亡させ、怪我をさせた場合は免職か停職になります。飲酒運転以外の交通法規違反では、過労運転や無免許運転をした場合は停職になりますが、事故を起こすと厳しい処分となります。死亡させ、怪我をさせた場合は免職になります。30キロ以上の速度超過をした場合は、停職、減給、戒告になりますが、事故を起こすと免職になる場合があります」
「部下の交通違反に対して上司が処分されることもあるのかね?」
「あります。管理監督者としての指導監督に適正を欠いていた場合は、減給や戒告となります」
「いろいろと教えてくれてありがとう。もう帰っていいよ」
 総務課長の立川智は市長室を後にした。
「橋爪の懲戒処分は無理か」井上はつぶやいた。
(作:橘 左京)

posted by 地域政党 日本新生 管理者