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小説「廃屋の町」(第80回)

2017年10月2日ニュース

「市長、そんなに気を使わなくてもいいですよ。いつものことですが、新年度事業予算については、我々、田沼クラブの要望を入れた形で作っているじゃないですか?それが市議会の審議、承認前に、一部が市長の選挙公約として公表されたからといって、文句を言う人はいないじゃないですか。いいことがいっぱい書いてあるしね」
「そうですか。しかし、市議会の承認を得ていない段階で、新年度事業を事業費込みで公表していいのかといった意見も、一部の市議さんから頂戴したものですから、一応、議長さんにはご了解をいただきたいんですが……」
「誰ですか?一部の市議って?新生会や共立党の市議連中ですか?市長選では新人の甘木雄一を推薦するようですが……」
「実は、田沼クラブの市議さんからなんですが……。名前は、ちょっと申し上げられませんが……」
「もしかして小林副議長ですか?」
「ええ、そうですが……」
「小林君は、市長選にまだ色気を見せているようですね。私に任せてください。市長選に出るには時期尚早だと言っておきますよ。ただし、彼の性格からして、市長選からの撤退を働き掛けるには交換条件を出さないと、簡単には引き下がらないと思いますよ」
「承知しています。議長さんに全てお任せします」
「おそらく、それなりの解決金が要ると思いますよ」
「了解しました」
「やー、皆さん御揃いで。ご苦労さまです。奥さん、これは今日の集会に集まった婦人部の皆さんで召し上がってください」建設業協会の山田信夫が菓子折りを井上市長の妻君子に渡した。
「わー、美味しそうな銅鑼焼きですこと。山田会長さんには、ここで婦人部の集会があるたびに、いつも美味しいお菓子を届けて頂いて、ありがとうございます」君子が礼を言った。
「今日はお昼を挟んで六光学会婦人部の集会があるって麗子から聞いていました。それとお昼に出す弁当の注文を頂いたって、妻が喜んでいましたよ」山田が言った。
 山田信夫の妻麗子は六光学会婦人部の役員を務めている。麗子は商店街にある居酒屋『寄り道』の経営者で、昼間は仕出し弁当を作っている。
「ここで集会がある時は、奥様のお店で松花堂弁当を作って頂いています。一流の料理人が作ったお弁当だけに、料亭で食べる懐石料理みたいに美味しいって、皆さん褒めていましたよ」
「ありがとうございます。妻に言っておきますよ」
 井上事務所では六光学会婦人部の集会がお昼を挟んで行われる。お昼に出す弁当は、いつも麗子の店で作ってもらっている。午後に入って、六光学会婦人部の集会が始まった。婦人部長の井上君子が挨拶した。
「会員の皆様におかれましては、休日にもかかわらず、沢山の方から御参加をいただきありがとうございます。ご存知のとおり、市長選まであと2か月ほどとなりました。開催にあたりまして、主人、いや失礼しました、井上市長から一言ご挨拶をいただきます」
(作:橘 左京)

posted by 地域政党 日本新生 管理者