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小説「山田研一 ただ今 単身赴任中」(第4話)

2016年12月10日ニュース

 研一が普段、買い物に利用しているお店は社宅近くにあるスーパーだ。このスーパーの菓子コーナーに研一の会社が製造・販売している「柿のタネ」をはじめ数種類の自社商品が棚に置かれている。お米のコーナーには新潟県産のコシヒカリも並んでいる。店内にあるお惣菜コーナーにはいろいろな種類のお惣菜がパック詰めでワゴンに並べられている。調理せずにそのまま食べられる気楽さだろうか、お惣菜コーナーには大勢の買い物客が集まっている。高齢化が進んで夫婦二人暮らしや一人暮らしのお年寄りが増えたのだろうか、お惣菜コーナーには高齢な女性の姿もみられる。研一のように一人暮らしの単身者向けなのだろうか、少量パックの惣菜が多いのに気づいた。研一は、この惣菜であれば食べ切りサイズと思い、好きなハンバーグに手を伸ばそうとするが、由紀子の顔が思い浮かび、直ぐに手を引っ込めてしまった。

 研一は、時間に余裕があるときは駅前の商店街で買い物をすることもある。商店街にあるお店にはスーパーにはない魅力がある。店員や店主との会話が楽しい。特に野菜・肉・魚など生鮮食品を扱う店の主人がプロの目利きを披露してくれる。
「お客さん。魚はね。目の澄んでいるもの、えらが鮮紅色のもの、全体がピンと張っていて、うろこがしっかり付いているものがいいよ。目が白かったり、充血しているものはやめておいた方がいいよ。どうだい。今朝、入った千葉県沖でとれたアジだ。刺身にできるほど新鮮だよ。」
「お客さん。牛肉は肉色が鮮やかな濃紅色で、表面につやのあるもの。 脂肪はクリームがかった白色で、赤身との境がはっきりとしているもの。豚肉は肉色が淡いピンク色で、表面につやのあるもの。 脂肪が真っ白で固いもの。鶏肉の方は胸の肉色は淡いピンク色、ももの方は濃いピンク色のもの。 表面に張りとつやがあるものがいいよ。パック入りの肉類は肉汁が出ていないものを選ぶこと。うちのはどれもおすすめ品だ。」
「お客さん。大根・人参・ジャガイモ・かぼちゃは、程よい大きさで、しっかりした重さのあるもの。色が鮮やかで均一のもの。 かぼちゃは実がしっかりと詰まっているものがいいよ。どうだいこのかぼちゃ、今朝入ったばかりの品だ。煮物にいいよ。わかめとひき肉を入れたそぼろ煮にすると美味しいよ。」

 こんな具合に店の主人が鮮度の高い食品の選び方やその食材を使った調理方法まで教えてくれる。 研一は店主から伝授された“目利き”をスーパーで生鮮食品を買う時に活用している。商店で買い物をするもう一つの利点は、必要な食品を必要な量だけ買うことができることだ。いわゆる量り売りである。確かに百グラムあたりの単価で比べるとスーパーで買う方が安くなるが、生鮮食料品のように鮮度が要求されるものを余分に買っても、結局、腐らせてしまう。

 研一がある八百屋の主人から聞いた話であるが、スーパーでは売れ残りの生鮮食品を揚げ物などの加工食品にして売りに出されることが多いそうだ。もしかしてスーパーのお惣菜はコーナーに並ぶ加工食品もそうなのだろうか。鮮度の落ちた生鮮食料品を揚げ物などに加工品すれば新たな食品に生まれ変わり、スーパーの売上に貢献する。これもスーパー業界がコスト競争の中で生き抜くための知恵の一つではないかと感心する一方で、価格よりも品質を優先する消費者もいる。そのような消費者は新鮮な食材を使った加工食品の方を望むのではないかと研一は思った。

 研一の会社で製造する米菓の原料に使う米は、そのほとんどが地元新潟県産の米だ。農薬や化学肥料はできるだけ減らして堆肥などの有機肥料を使った米作りをしている農家と契約して栽培してもらった米を仕入れている。自社の米菓は他社の商品と比べ少し割高な価格設定ではあるが、価格よりも品質を求める顧客層のニーズには応えているとの自信がある。
(作:橘 左京)

posted by 地域政党 日本新生 管理者