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小説「祭ばやし」(第12回)

2017年2月4日ニュース

 祭り2日目の25日は朝から厳しい残暑に見舞われていた。夏祭りに合わせて、午前中、町内会主催のイベントが公園で行われた。徹は春香と由紀子、それに由紀子の甥にあたる小学6年生の英人君と4年生の浩司君を誘ってイベント会場に向かった。公園は親子連れで賑わっていた。金魚すくい、ヨーヨー釣り、スカットボールなどのゲームや綿菓子、ポップコーンなどの食べ物コーナーが設けられていた。金魚すくいやヨーヨー釣りの前では子供たちが並んで順番を待っていた。これらのイベントは主に子供向けに企画されたものだが、大勢の子供たちから参加してもらおうと、無料の参加券が町内の全世帯に配られた。この参加券を持って行けば人数に関係なく誰でも参加できる。参加券には「子供の参加は大歓迎!」と書いてあったので、由紀子は甥にあたる2人の小学生を誘った。春香、英人君、浩司君の3人はこの無料チケットを使ってイベントに参加した。
 徹たちはゲームを一通り楽しんだ後、本部テントに入った。本部テントの中ではかき氷が振る舞われていた。春香の同級生の雄太君がお母さんと一緒にかき氷を食べていた。
「雄太君、こんにちは。今日も太鼓、頑張ろうね」春香が雄太君に向かって言った。
「もちろんさ。春香ちゃんも頑張ってね」雄太君が答えた。
 かき氷のシロップは赤、黄、緑、青の4種類が用意されている。春香、英人君、浩司君の3人はそれぞれ好きなシロップを掛けてもらった。春香は赤、英人君は青、浩司君は黄のシロップを掛けてもらった。3人のかき氷の色を見て、徹は思わず含み笑いした。
「お父さん。どうして、にやにや笑っているの」春香が徹に尋ねた。
「だって3人のかき氷のシロップが赤、青、黄の3色でしょう。まるで信号機の色みたいじゃないか。春香のかき氷は赤だけど、赤信号の時は横断歩道を渡っちゃいけないよ。みんなが渡ろうと言っても、絶対に渡っちゃ駄目だよ」徹は言った。
 ゲラ、ゲラ、ゲラ
 ギャグを入れた徹の一言が周囲の笑いを誘った。
「そんなこと、お父さんに言われなくても分かっているわよ」春香の顔が興奮して赤くなった。
「野上さん、こちらで生ビールでもどうですか。祭典委員の中村さんが手を上げて徹を誘った。今日の中村さんはイベントを担当している。徹は中村さんから紙コップに入った生ビール受け取って喉に注ぎ込んだ。つまみに出された枝豆を食べながら、しばらく中村さんと歓談した。
「野上さんのお子さんはお1人でしたね」
「はい、そうです。今日は娘と妻の甥にあたる小学生の男の子を誘ってイベントに参加しています」
「そうですか。町内に住んでいる子供がだんだんと少なくなりました。結婚して町外に出て行った女の人はお盆ではなく夏祭りの時期になると、子供を連れて里帰りする人が多いんですよ」
「そうだったんですか。お祭りになると子供が増えてくるので不思議に思いましたが、その訳が分かりました」
 中村さんから言われて回りを見渡すと、確かに祖父母、娘、孫と思われる3世代の家族が何組かいる。向かいに住む藤田さん夫婦も隣町に嫁いだ娘さん、それと2人のお孫さんと一緒に金魚すくいにチャレンジしている。中村さんの話は続いた。
「最近、囃子方をやる町内の子供たちが少なくなって困っています。灯篭の担ぎ手のように町外から助っ人を呼ぶというわけにはいきませんからね」
「私の実家がある農村集落では、秋祭りの神輿を担ぐ若者がいなくなって今は行われていません」
「そうですか。こっちはまだいい方ですね。昨日、春香ちゃんが仁和加(にわか)に乗って太鼓を叩いていましたが、練習の成果が出ていましたよ」
「ありがとうございます。昨日は初めての本番だったので緊張して叩いていたようです。今日は昨日よりもうまく叩けると本人は言っていますが…」
「そうですか。春香ちゃんのようにお祭り好きな子供たちがいると助かります」
(作:橘 左京)

posted by 地域政党 日本新生 管理者