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小説「山田研一 ただ今 単身赴任中」(第10話)

2017年1月6日ニュース

 由紀子と弥生が東京に来て2日目。3人は研一の社宅で朝を迎えた。今日は東京ディズニーランドに出掛ける日だ。昨夜の熱帯夜に続いて、今朝も夏の強い日差しが朝食を食べている部屋に容赦なく差し込んでいる。
「お父さん。東京の夜って、どうしてこんなに暑いの。よく眠れなかったわ。」弥生が研一に尋ねた。
「ヒート‐アイランドって言うんだけれど。東京のように建物や地面がコンクリートで覆われた街では、木造の建物や地面が多い街よりも温度が高くなってしまうんだ。日中の強い日差しでコンクリートにたまった太陽の熱が街の中に残っているし、エアコンの室外機から外に出ていく人工の熱も加わって、街全体が暑くなってしまうんだ。特に風が弱い晴れた夜は、ヒートアイランドになりやすいんだ。」研一が答えた。
「でもお家では夏になっても夜にこんなに暑くならないわ。さっきお父さんが言ったように、木の家や地面が多いからなの。」弥生が尋ねた。
「その他にも、我が家の周りには温度を下げてくれるものがあるよ。水が張られた田んぼがあるし、家の近くを流れる大きな川があるだろう。田んぼや川の水が蒸発して気体になる時に周りから熱が奪われるため、周辺の温度が下がってしまうんだ。夜に窓を開けておくと、外から涼しい空気が部屋に入ってくるだろう。東京でも、夜になると東京湾から涼しい海風が吹いてくるけれど、東京湾を囲むように都心に建っている高い建物に遮られ、涼しい風が街の中まで入って来ないんだ。」
研一は答えた。
「昨日もそうだったけれど、今日も真夏日になりそうだわ。熱中症にならないように帽子をかぶって出掛けましょう。弥生、日焼け止めクリームをたっぷりと塗って出かけないと、肌が焼けてヒリヒリになってしまうわよ。」由紀子が弥生に言った。

 暑さ対策を済ませた3人は電車に乗って東京駅で京葉線に乗り換えて東京ディズニーランドのある舞浜駅で降りた。舞浜駅から入場口に向かって大きな人の流れができていた。チケット売り場では当日券を求めて大勢の人が長蛇の列を作って並んでいた。研一たちは、インターネットで購入した日付指定券を持っていたので、直接、入場ゲートに向かった。幾つもある入場ゲートも大混雑していた。研一たち家族のように夏休みを利用して地方から来園したと思われる家族連れもいる。
 東京ディズニーランドは千葉県の浦安市舞浜に建設され、1983年4月に開園した国内最大のテーマパークだ。アメリカ国外では初となるディズニーのテーマパークとして、開園当初から国内外の注目を集めた。開園した83年には来園者が500万人を超え、2年目には1000万人を超えた。当時、都内の大学に在籍していた研一も在学中に、何度か友人と訪れたことがあった。また由紀子と結婚してからも2回来園している。
 
 入場ゲートを抜けると、そこは日常の生活空間とは全く違うファンタジックな空間が広がっている。
「あ、ミッキーマウスだ。あそこにミニーマウスがいる。向こうにドナルドダッグもいるよ。」初めて東京ディズニーランドを訪れた弥生は、来園者に愛嬌よく振る舞っている人気キャラクターを見て興奮気味に言った。
「弥生、ミッキーと並んで立ってごらん。写真を撮ってあげるよ。」研一が弥生に言った。
「はいー、チーズ。」研一はスマホのレンズを二人に向けてシャッターを押した。
カシャ
「そうだ。年賀状用の写真も撮ろうか。」
研一は近くにいたスタッフの人にスマホを預けてシャッター押しを依頼した。家族3人の両脇にミッキーとミニーが立った構図の写真だ。
「はい、いいですか。チーズ。」スタッフの人がスマホを向けて言った。
カシャ
「このミッキーと一緒に撮った写真を学校に持って行って友達に自慢しちゃおうかな。」スマホに記録された画像を見ながら弥生は言った。
 研一たちは下調べをして、行きたいアトラクションをあらかじめ決めていた。ガイドマップを見ながら、目的のアトラクション会場に向かった。人気のアトラクションなのだろうか。入り口前には長い列ができていた。最後列のボードを持って立っていたスタッフの人に聞いたら、1時間ほどの待ち時間になるという話だった。炎天下での1時間待ちは辛い。ここは諦めて次のアトラクション会場に向かったがこちらも長い列ができていたので、並ぶのを諦めた。3か所目のアトラクション会場も同じように長蛇の列ができていた。行きたいと思って決めておいたアトラクションは後回しにして、空いているアトラクションから見て回ることにした。
 乗り物に乗って異次元の世界を体験したり、アドベンチャーが楽しめるようなアトラクションはどれも人気が高く、入口前には長い行列ができている。一方、見て楽しむようなアトラクションやキャラクターグッズを売っているショップは比較的空いている。日差しの強い昼間はそちらを優先することにした。夕方近くになって日差しが弱くなったので、どうしても行きたいアトラクションに絞って並ぶことにした。最初に来た時よりは行列が短くなっている。気温も下がってきたので、並んでも待っていてもそれほど辛くはない。しかし午後に入ると、今度は近郊に住む人たちが時間指定の割引チケットを使って入園してくるので、そのことも考えて行動しないといけない。研一たちの待っている当日券は午後10時まで使えるチケットであるが、歩き疲れた3人は退場ゲートを潜って舞浜駅に向かった。駅前のレストランで夕食を食べた後、三人はへとへとになって帰路についた。
(作:橘 左京)

posted by 地域政党 日本新生 管理者