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オンブズマン通信15.2~ハイテク園芸ハウスで育てた官業トマト(その2)

2017年7月25日ニュース


【地域政党日本新生イメージキャラクターウィズ」君】

 地元紙の伝えるところによれば、国道290号沿いの村杉温泉入口付近にある阿賀野市の観光物産施設「うららの森」に、市が国の地方創生交付金2500万円を使って整備した大型園芸ハウスで5月頃から栽培されていたトマトの収穫が始まり、同所で地元の旅館が考案したトマト料理の試食会が開かれたという。市ではこのトマトを「うららトマト」と命名し、将来は阿賀野市産のブランド品として売り出したいという。
 「ブランド品のトマト?」果たして、園芸ハウスで栽培された「うららトマト」のどこにブランド価値があるのだろうか?胸をワクワクさせながら記事を追っていくと、ブランド価値はトマト本体ではなく、トマトを栽培している園芸ハウスにあるようだ。( ´艸`)
 この園芸ハウス、遠方からハウス内の温度や湿度をスマートファンで把握でき、換気窓やカーテンも遠隔操作できるという。まさにハイテク施設だ。もしかしてトマトの栽培もオートメーション化され、ロボットが作っているのではないかと思ったが、記事には誰が栽培したトマトなのか書いていなかった。そこで市議をしている弟に聞いたところ、市(農林課)の職員がトマトを栽培しているという。
( ´艸`)
 記事によれば、「うららトマト」の料理を試食した参加者からは、「さっぱりして食べやすい」「夏バテに効きそうだ」などのコメントがあったという。「うららトマト」ではなく、スーパーで買った普通のトマトを使って同じ料理は作ったらどんなコメントがあっただろうか?「さっぱりして食べやすい」「夏バテに効きそうだ」?( ´艸`)
 この「うららトマト」は園芸ハウス前で6個230円で販売しているという。実は「うららの森」には野菜直売所がある。地元の農家が丹精込めて栽培した旬な野菜が所狭しと並んでいる。この時期、直売所にはトマトも並んでいることだろう。これって官業による民業圧迫ではないかだろうか?(#^ω^)
 うららトマトの記事が掲載された22日付けの地元紙にスーパーの折り込みチラシが入っていた。スーパのチラシに新潟県産のトマトが198円(税別、Sサイズなら4個、Мサイズなら3個)の値段が表示されていた。、1個当たりの価格をうららトマトとスーパーのトマトとで比較してみると、66円(スーパーMサイズ)、50円(スーパーSサイズ)、38円(うららトマト)の順になる。「うららトマト」は市の職員が作っている。職員の人件費をコスト(経費)に含めれば、「うららトマト」の1個当たりの値段を1000円くらいにしないと、経営収支が合わないのではないだろうか?( ´艸`) ※この項終わり。
(あとがき)
 小生、連日の熱帯夜で寝不足気味の中、このブログを書いている。ブログは毎回、午前零時にアップされる。読者諸氏におかれましては、眠れぬ夜にはブログを開いていただきたい。ブログが一服の清涼剤になって、安眠への誘いとなれば幸いである。なかには不眠症の誘因になってしまうケースもあるかも知れないが、そういう方は、ブログの閲覧はご遠慮いただきたい。
 ネット情報のヘビーユーザーなら、お気付きのことと思われるが、起動させたパソコン画面の周辺に突然、最近閲覧したサイトに関連した広告が表示されることがある。なかには見たくもない広告が見たい場所を占拠している悪質なケースも時々見受けられる。ご安心あれ。このサイトはブログを見たい人に、見たいだけ開放している極めて良心的なサイトである。
(代表:天野 市栄)

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小説「廃屋の町」(第44回)

2017年7月24日ニュース

 プルルル、プルルル
 甘木の携帯が鳴った。電話は風間健一からだ。
「風間だ。今、いいかい」
「ああ、大丈夫だ」
「この前、ウチの店で市役所課長会の親睦会があってね。財政課長をしている杉田昇が、途中、宴席を抜け出して帳場にいた俺のところにやってきてね。甘木に会って話したいことがあるって言うんだ」
「杉田昇って、中学の同級生の杉田君だよね」
「そう、同級生の杉田だよ」
「杉田君が僕に話したいことがあるって、どんな話だろう?」
「公共工事の入札についての話だって。詳しい話は甘木に会った時にするそうだ」
「公共工事の入札の話?」
「杉田が言うには、入札情報の漏洩だよ」
「それって官製談合ってこと?」
「そう、官製談合が行われているかも知れないってことだよ。そこで、杉田との会合の日程について相談したいんだけど……」
「日時や場所については、風間にまかせるよ」
「分かった。それじゃ今度の日曜日の午後2時にウチの店ということで、どうだい?杉田が甘木と会っているのを市役所の職員に見られたくないというもんだから。ウチの店を提供することにしたよ。昼間は使っていないカラオケルームなんかどうだろう?あそこなら、防音壁もあって話し声が外に漏れる心配もないからね」
「僕の方はそれで構わないよ。日曜日の午後2時だね。日程を入れておくよ」
「杉田との会合には久保田恵子にも声を掛けることにしたよ。恵子には市役所に務めている妹がいるんだ。その妹から市役所の内情を知ることもできるからね」
 日曜日の午後2時。風間が経営する店の中にあるカラオケルームに、甘木雄一、杉田昇、久保田恵子、それに店主の風間健一の4人が集まった。
「風間、面倒をかけて悪かったね。この時間帯は夜の宴会の準備で忙しいんじゃないかい?」
 杉田が言った。
「日曜日は昼間に宴会が入ることはあっても、夜に入ることはめったにないんだ。宴会といってもウチの場合、市役所や会社関係の飲み会がほとんどで、仕事がある平日や土曜日に入ることがあっても、仕事が休みの日曜日の夜に入ることはないね」
「健ちゃんから、市長選挙の作戦会議をウチの店でやるから来てくれって言われてきたけど、ここはカラオケルームじゃないの?まさか、これからカラオケをやるってこと?私、この前、友達とカラオケボックスに行ったばっかりよ」久保田が言った。
「恵ちゃん、会議が終わったら、二人でデュエットでもする?『銀恋』なんかどうだい?」
「音痴な健ちゃんと一緒に歌うのはもう懲り懲りだわ!この前の同級会で健ちゃんとデュエットしたけど、音程が崩れてめちゃくちゃだったじゃないの!」
「冗談はここまでにして、杉田君の話を聞こうじゃないか」甘木が杉田に目配せをした。
(作:橘 左京)

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オンブズマン通信15.1~ハイテク園芸ハウスで育てた官業トマト(その1)

2017年7月23日ニュース


【地域政党日本新生イメージキャラクターウィズ」君】

 私が愛読する地元紙(日刊紙)には、週に5回、地域版ニュースとして県内を7つの地域に分けて、地域ごとの旬な話題が掲載される。私が現在、住んでいる阿賀野市は「下越」地域に入る。「下越」地域に含まれる市町村は9つある。私は、毎朝、今日はどんな地元のニュースが掲載されているのだろうかと、胸をワクワクさせて地域版(下越版)の紙面を開く。「あれ?今日も載っていない」「下越」版に地元の話題が掲載される回数が、ここ数年、極端に少なくなっている。なぜだろうか?たまに掲載されるニュースと言えば、毎年、恒例の観光イベントぐらいである。
 人口の多い地域であれば、至る所で多種多様な住民活動が行われ、必然的に地域版に掲載される話題も多くなるのではないかと考え、「下越」地域に含まれる9つの市町村の人口を調べてみた。阿賀野市の人口は、現在約4万3千人で、9市町村中5番目の人口規模であるが、残念ながら人口規模の割には記事の掲載回数が少ないように感じる。一方、同じ「下越」地域に含まれる、隣町の阿賀町の人口は阿賀野市の4分の1程度であるが(9市町村中7番目)、阿賀野市と比べると記事の掲載頻度は高いように感じる。記事の掲載頻度は必ずしも人口規模に比例している訳でもないようだ。
 ところで、この新聞社には下越地域に村上、新発田、五泉、津川の4つの支局がある。阿賀野市を担当する支局は新発田支局だ。新発田支局は4つの市町村(新発田市、阿賀野市、胎内市、聖籠町)を担当している。阿賀野市を担当している記者が同時に聖籠町も担当しているという話を、市議をしている弟から聞いたことがある。一方、阿賀町には津川支局がある。阿賀野市を担当する記者は兼任、阿賀町を担当する記者は専任。もしかして、阿賀野市と阿賀町の掲載頻度が違うのは、担当記者が兼任か専任かの違いによるものかもしれない。
 地元の旬な話題が「下越」版に掲載される日を待ち望んでいたところ、昨日(7月22日)、久々に地元の記事が掲載された。「阿賀野 市の園芸ハウス産トマト初収穫 地元旅館が料理考案」という見出しである。※次号に続く。
(あとがき)
 五頭連峰(標高約千メートル)を境に隣接する「阿賀野」市と「阿賀」町は名前がよく似ていることから、時々、間違えられることがある。市外に住む知人に言われたことがあるが、両市町に対する市外の人の見立ては阿賀野市≦阿賀町だそうだ。阿賀町の方が阿賀野市よりも知名度(地名度?)が高いという意味である。両市町に対する地元紙の記事の扱いが知名度の優劣を決めているとすれば、事は深刻だ。
(代表 天野 市栄)

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小説「廃屋の町」(第43回)

2017年7月22日ニュース

 10月上旬、県議会議員の山田良治と田沼市土地改良区理事長の松本正蔵が市長の井上将司と、市長室のソファーで向き合っていた。松本正蔵は井上市長の後援会「将進会」の会長を務めている。
「先日、井上市長の出馬表明の新聞記事を見た後援会の幹部から、どうして前もって知らせてくれなかったんだ、というからお叱りの電話をいただきました。私からは、市長の4選出馬は本人が悩んだ末に下した苦渋の決断で、あらかじめ後援会の役員会で相談して決める内容ではない、というような話をして、うまくとりなしておきました」
「ありがとうございました。松本会長さんには大変ご迷惑をお掛けしました。9月の市議会で出馬表明する前に、マスコミに漏れてはいけないと考え、松本会長さんや一部の後援会幹部の方にだけ、私の胸のうちをお話しさせていただいたのですが、結果的に会長さん一人にご迷惑をお掛けする結果になってしまい、申し訳ありませんでした」
「そんなことは、たいしたことじゃありませんよ。それよりも、年が明けたら後援会総会を開いて、井上市長の4選出馬を後援会の皆さんに周知させて、選挙戦に向けた準備に取り掛かろうと思っていますが、所詮、相手は政治経験も行政経験もない素人です。年齢が若いだけの泡沫候補ですから、そんなに急いで準備を進める必要もないとは思いますが……」
「松本会長さん、後援会の方はよろしくお願いします。いくら相手が無名の新人とはいえ油断は禁物ですよ。元総理の大泉俊太郎さんがこんなことを言っていましたね。『人生には三つの坂がある。のぼり坂、くだり坂、そしてまさかである』って、政治の世界には、この『まさか』が付き物だってことですよ。大泉さんの後任の浦部総理が体調不良で突然辞任したのは、この『まさか』だったわけですよ」
「確かに、浦部総理は就任一年足らずで辞任しましたからね。誰もそうなるとは思っていませんでしたから、本当に『まさか』の辞任劇でした」松本が言った。
「松本理事長、その『まさか』が選挙になると、時々起きることがあるんだよ」山田が言った。
「もしかして『戸板の奇跡』のことですか?」松本が言った。
「そう、ちょうど一年前の10月に行われた戸板市長選は、現職と保守系候補の新人で争われた選挙だったよ。民自党長野県連は現職を推薦して盤石な体勢で臨んだ選挙だったよ。現職の当選は間違いないと、高を括っていたら、大差で現職が新人候補に敗れてしまった」山田が言った。
「戸板市長選挙で、その『まさか』が起きたってわけですね。実は、今日、こちらにお伺いしたのは、県が事業主体になって行う圃場整備事業に対して、市から財政支援をお願いできないかと思いまして、山田県議さんと一緒に伺ったわけです。市長もご存知のとおり、田沼市内の田んぼの多くが2反歩(約20アール)区画になっています。こんな小さな区画の田んぼでは大型の農業機械も使えません。そこで大型の機械が入るように4反歩(約40アール)区画に田んぼを広げれば、作業効率も上がって農家も助かるわけです。しかし、この圃場整備事業は農家負担があることから、事業の施行区域に田んぼを持っている農家全員の同意がないと事業を実施できないんです。米の販売価格が下がっていく中で、特に小規模経営の農家から同意を得るのが大変難しくなっています。農家負担が軽減されれば、全員の同意が得られそうなので、農家負担に対する市の財政支援をお願いしたいということです」
 松本が言った。
「井上市長、私からも、農家負担の軽減のためにも市からの財政支援を是非ともお願いしたい。長野県内の平場にある田んぼは、その殆どが4反歩区画に整備されたが、田沼市内の田んぼは、まだ2反歩区画の小さな田んぼが多い。農家全員の同意がないと、県は事業採択ができない。私は田沼市内で行われる県の公共事業予算をなるべく沢山確保し、工事は市内の建設業者からやってもらうことが、田沼市選出の県議会議員としての役目だと思っているよ」山田が言った。
「確か、圃場整備事業の事業費は、国、県、市町村、農家の4者で負担することが法律で決まっていたはずですが……。その上、更に市が農家負担に対して助成するってことができるんでしょうか?」
 井上が言った。
「市長、心配はいらないよ。合併特例債を使えばいいんだよ。特例債は返済額の7割を国が負担してくれるので、実質、市の負担は3割で済む。私のライフワークにしている、県事業の田沼川の河川改修工事も、市の負担分は合併特例債を使っているじゃないか。国からの財源手当が厚い合併特例債を残しておくのはもったいないよ。特例債の発行期間が10年から15年に伸びたんだから、限度額の350億円全部を使い切る覚悟を示さないと、来春の市長選挙で、建設業界からの支援は難しくなるよ」山田が言った。
「脅しですか?それは山田県議さんも同じことですよ。分かりました。ご期待に沿えるよう検討します」井上が言った。
「市長、お互いに来春の地方統一選挙で当選して、まだまだ遅れている田沼市の農業基盤整備を充実させようじゃないか。田沼市内の公共事業予算が増えれば、建設産業の雇用も増えて、若者の地元定着も図られる。若者を市外に流失させないようにするためにも、田沼市の基幹産業である建設産業の振興は大事だよ」山田が言った。
「私も県の土木部出身ですから、山田県議さんが今おっしゃたことはよく分かっていますよ。早速、担当部署に指示を出しますよ」井上が言った。
「よろしくお願いします」松本が深々と頭を下げた。
(作:橘 左京)

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小説「廃屋の町」(第42回)

2017年7月20日ニュース

 甘木と風間の挨拶回りは12月になっても続いた。二人は子育て世帯の多い新興住宅地を尋ねた。ある家では障害を持った子供を養育している主婦から、ごみの無料チケットの枚数を増やして欲しいという要望を受けた。次に訪ねた家では、休日に子供を遊ばせる場所が少ないので、遊具付きの児童公園を作ってほしいという要望を受けた。また別の子育て世帯の主婦からは子供の医療費の完全無料化や小中学校の学校給食費の無償化の要望を受けた。甘木と風間は子育て世帯の多い住宅団地を回ってみて、子育て支援の拡充が必要だと感じた。
「田沼市は県内18市の中で最も子供の割合が少なく、人口10人に対して子供は2人しかいない。一方、お年寄りは3人だ。残りの5人が働いている世代の人口だ。また田沼市の合計特殊出生率が県内最下位の1.16になっているのは田沼市が子育てしにくい環境にあるからだよ」
「今、甘木が言った子育てしにくい環境にあるってどういう意味だい?」
「田沼市が誕生して今年で8年目に入ったけれど、合併後の8年間を振り返ると無駄な公共事業が大変多くなっている。無駄は公共事業が増えたおかげで市が抱える借金も増えている。その借金を返すのは今働いている世代だし、将来働く世代になる子供たちだ。彼らに借金返済の負担を負わせようとしているのが今の井上市政だよ。ここ数年、子育て支援の厚い戸板市に子育て世代が逃げている。子育て世帯は子供と一緒に動くから子供の人口が減るのは当然だよ」
「まったく、甘木の言う通りだ」
 田沼市の近隣にある戸板市は、市営の工業団地に企業進出が続き、固定資産税など、市税収入が増え財政力指数が1を超えたことから、普通交付税の不交付団体になっている。財政的に豊かな町になった戸板市では、保育料の無料化、学校給食費の無償化など、急激に増えた子育て世帯に対する支援が充実している。
(作:橘 左京)

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小説「廃屋の町」(第41回)

2017年7月18日ニュース

「さっき話した圃場整備事業だよ。この事業によって大きな区画になった田んぼが、簡単に転用されてしまうことがあるんだ」
「転用って何ですか?」風間が尋ねた。
「農地を農地以外の用途に変えてしまうことだよ。土地改良事業の事業費は、農家負担以外は全て税金で充てられている。圃場整備事業で大きな区画になった田んぼは、8年間は転用できないことになっているが、公共事業用地として買収されると8年間の縛りがなくなるんだ。農家にとっては農地のままで売るよりも、公共用地として売った方が高い値段で売れるし、税金もかからない。いいこと尽くめだ。自分では耕作しないで農地を持っているだけの『土地持ち非農家』のなかには、将来、公共事業用地として転用されることを期待して農地を持っている農家もいるよ」
「興味深いお話を伺いました。多額の税金を使って美田を作っておいて、その美田を多額の税金を使って、公共事業用地として買収されて転用される。多いなる税金の無駄遣いですね」甘木が言った。
「そういえば、昨年、竣工した市立病院は田んぼを埋め立てて建設したんじゃなかったかな」
 風間が言った。
「思い出したよ。あの場所は圃場整備事業によって4反歩(約40アール)区画の田んぼに整備された優良農地があった場所だよ。事業が終わってまだ5年しか経っていないので、公共用地といえども転用はできない農地だったんだ。それが例外的に県から転用の許可が下りたんだよ。聞いた話だけど、病院建設用地として買収された田んぼの多くは、田沼市土地改良区の松本正蔵理事長が所有する田んぼだったらしいよ」
「え、え!ほんとうですか?山田県議が県に圧力をかけて、本来であれば転用できない農地に対して無理やり県の許可を出させたんじゃないですか?我々が支払った税金で私腹を肥やすなんて許せないね!井上市長は選挙公約で、文化会館と総合体育館の建設を目玉事業として挙げるらしいけど、建設予定地は高速道路インター付近の農地だって噂が流れているよ。市立病院の用地買収の時みたいに、何かきな臭い匂いがするよ」風間が言った。
「最後に一つ、甘木さんに検討してもらいたいことがあるんだ」
「それはどんなことですか?」
「農家の後継者対策だよ。昔の農家は、夜が明けると朝飯前に田んぼに出掛けて仕事を始め、朝飯を食べた後、また田んぼに出掛けて行って、日が暮れるまで仕事をしたもんだよ。田植えや稲刈りの時期になると、昼の弁当を持って、朝から日が暮れるまで田んぼで仕事をしたもんだ。私は小さい頃から家の手伝いをしながら、親の背中を見て育った。だから、自然と自分は農家の後継ぎになるんだって思うようになって、農業高校を出た後、家に入って農業を継いだよ。しかし、今の若いもんは、家業よりも会社勤めの方を選ぶ。二人の息子も農家は嫌だって言って会社勤めを選んだ。今は、家に残っている娘から手伝ってもらっている。ゆくゆくは婿養子をもらって農家を継いでもらいたいと思っているよ。甘木さんには期待しているよ。是非、市長になって我々専業農家のための農政をやってもらいたいと考えているよ」
「町場の商店主からも後継者が見つからないという話は伺いました。後継者難から廃業に追い込まれる中小零細な事業者が多いという話はよく聞きますね。農業であれ、商工業であれ、個人経営の事業者は、みんな後継者不足に悩んでいることが良く分かりました。今ほど頂いたご意見は、市長選に向けた政策に反映させたいと思います。お仕事中、時間を割いて頂きありがとうございました」
 甘木と風間は農家に礼を言って、次の目的地に向かった。
(作:橘 左京)

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小説「廃屋の町」(第40回)

2017年7月16日ニュース

「『農家のため』に行われている土地改良事業が、実際は、土地改良区のため、建設業者のために行われているんじゃないかって思っているよ」
「どういう意味ですか?」甘木が尋ねた。
「土地改良事業は土木工事が主体となる公共事業だけど、この工事を請け負う中小の土木業者が農村部に集中しているんだ。この集落にも青木建設という小さな土木業者の本社事務所がある。これら農村部にある土木業者の多くは農業と兼業でやっているが、なかには農地は持っているが耕作をしない『土地持ち非農家』の業者もいるよ。青木建設は農家もやっているけどね。それに社長の青木敏夫は土地改良区の理事をやっているよ。農村部にあるこれら中小の土木業者と土地改良事業が密接に関係しているんだ」
「関係しているって、どういうことですか?」甘木は尋ねた。
「農村部にある中小の土木業者は規模の小さな土木工事であれば直接請け負うことができるんだが、工事の規模が大きくなると大手の業者が受注して、工区に分けられ小さくなった工事を、中小の業者が下請や孫請けで請け負っているんだ」
「青木建設は下請けや孫請けで受けている工事が多いんですか?」甘木が尋ねた。
「そうだね。利幅が少ないって社長がぼやいているけどね。土地改良事業の工事は稲刈りが終わった後に始まって、翌年春の田起こしまでの間に行われるんだけど、この時、農閑期に入った農家が土木作業員として雇われているんだ。私も青木建設の仕事を手伝ったことがあるけどね」
「土地改良事業って、農家の冬場の仕事を提供しているんですね。農家にとってはいいことじゃないですか」風間が言った。
「確かに、専業農家は農協に米を出荷すれば春まで仕事はない。農家にとっては冬場も仕事があるというのはありがたい話かも知れないが、これって土地改良事業で農作業が効率化されて、余剰になった時間を使って農業以外の仕事をして農家の年間所得を増やしてくれ、という話じゃないか。農作業が効率化されても、米の収量が増えるわけではない。農業収入が増えないのに、事業費の一部を農家が負担するため、逆に経費の方は増えてくる。その結果、農業所得が減ってしまう。減った分を補填するために、農家が土木作業員として冬場に働くというのは、矛盾していると思うけどね。もちろん、農家にとって必要性の高い土地改良事業もあるけど、そこまでしなくてもいい事業もあるよ。さっきも言ったように、土地改良事業の中には、農家のためというよりは、土地改良区のため、建設業者のために行われている事業も多いと思っているよ」
「おっしゃるとおり、矛盾していますね。工業生産を例にして考えるとよく分かります。工場や機械設備などの生産設備への投資は、生産性を引き上げ、また付加価値の高い製品を作って、売り上げを伸ばすために行われます。一方、土地改良事業は作業効率が上がっても、米の収穫量が増えるわけでもないし、品質のよい米ができるわけでもありません。作業効率が上がって余剰になった時間を使って、減った農業所得の穴を農業以外の所得で埋めるというのは、確かに矛盾した考えですね」甘木は言った。
「土地改良事業でもう一つ矛盾した話があるんだ」
「それは、どんなことですか?」甘木が尋ねた。
(作:橘 左京)

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小説「廃屋の町」(第39回)

2017年7月14日ニュース

「事業の計画段階で、事業を実施する国や県が、事業費の一部を負担する私ら農家を集めて説明会を開くんだけど、担当者は『この事業を実施することによって、作業時間が短縮しますとか、作業効率が上がります』といったことを言うんだが、おかしいなと思ったね」
「どうしてですか?」風間が尋ねた。
「我々、米農家はいろいろな農機具を使って米を生産している。田んぼで使う農機具を挙げれば、トラクター、田植え機、除草機械、刈り取り機などがある。作業時間が短縮しても、余った時間で何をすればいいんだろう。『兼業農家の農作業を請け負えばいいじゃないですか』って国や県の担当者は言うけれど、兼業農家も農機具は一揃え持っている。そんな簡単な話じゃないね。それにもっとおかしな話があるよ」
「おかしな話?」甘木が尋ねた。
「圃場整備事業といって、事業が行われる区域に点在する小さな区画の田んぼを、所有者ごとに集めて大きな区画の田んぼにするために行われ土地改良事業のことだよ。事業費も大きくなるし農家負担も上がる。圃場整備事業が終わると、換地処分によって、田んぼの所有権が施工前に点在していた小さな区画の田んぼから、集約化されて大きな区画になった田んぼに移るんだ」
「換地処分?」風間が尋ねた。
「現況に合わせて土地の権利関係を一斉に変えてしまう法的な手続きだよ」甘木が答えた。
「甘木さん、よく知っていますね。この時、大きな区画に届かない農地の所有者は、清算金をもらって農地を手放してしまうんだ。小規模な農家が手放した農地を担い手の農家に集めて大きな区画にした後、土地の所有権も大きな区画に合わせて登記される」
「一度に登記をやれば、登記手数料もばかにならないですね」風間が尋ねた。
「『嘱託登記』といって、事業主体の公共団体が登記手続きを行うため、登記手数料は一切かからないんだ」
「それって税金を使うってことですか?田んぼは農家の個人財産ですよね。その個人財産に対して行われる公共事業に多額の税金が投入されているって、矛盾を感じますね。私は、町場で飲食店を経営していますが、店も農地と同じように商売に必要な固定資産ですよ。昨年、店を改装した時に、金融機関から公的な融資は受けましたが、行政からの補助金は、一切なかったですよ」風間が不満顔で言った。
「農業に税金を使っているのは日本だけじゃないよ。国内農業を保護するための政策は欧米諸国でも行われているよ」甘木が言った。
「甘木さん『食料安保』って言葉を知っていますか?」
「ええ、知っています。生きていく上で必要な食料を、必要な時に安定的に入手できる権利のことですよね。日本のような食料自給率の低い食料純輸入国では、セーフティーネットとしてとらえているようですが……」
「そのとおり。米の自給率は100%だが、米以外の食料自給率は非常に低くなっているよ。米の国内自給率が100%なのは、我々米農家が頑張っているからだよ。頑張っている農家に行政が税金を使って支援をするのは、ごく自然だと思うけど、その税金の使い方がおかしいと思っているよ」
「具体的にどんな点ですか?」甘木が尋ねた。
(作:橘 左京)

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小説「廃屋の町」(第38回)

2017年7月12日ニュース

「土地改良事業は、我々農家も事業費の一部を負担し、土地改良費として年賦で返済することになっている。所有する田んぼの面積が多いと返済する金額も増えてくるので、経営規模が大きい専業農家ほど大きな負担になっているよ。米の消費量が減っていくなかで、販売価格は少しずつ下がっている。過剰生産を抑制するために行われてきた国の減反政策も数年後には廃止される。そうなれば過剰生産が一層進んで米の販売価格はもっと下がっていくだろう。生産費は上がる一方で、販売価格の下落による減収。我々、コメ農家の将来は暗澹たるものだよ」
「農業以外の収入の方が多い兼業農家と比べて、農業収入しかない専業農家にとっては、は、厳しい経営環境にあると思います。それに追い打ちをかけるように今回の台風被害ですからね」甘木が言った。
「農家負担がある土地改良事業は、農家が事業を実施する国や県などに申請して行われている」
「通常の公共事業、例えば、道路や河川の整備、それに公共施設の建設などは、地元住民の陳情を受けて行われていると聞きますが、申請に基づいて行われる公共事業があるなんて初めて聞きました」甘木は言った。
「形だけ農家が申請者になっているだけで、主導しているのは土地改良区だ。土地改良区は農協と同じように農家が組合員となって組織している公的な団体だ。農協も土地改良区も設立にあたっては県の認可が必要だ。農協は農家が栽培する作物の生産から流通までを担当している。そのほか、農協は農業用の資機材の提供、金融、保険も扱っている、いわば総合商社だ。一方、土地改良区の方は作物の生産に必要な農地の基盤整備を担当している。土地改良区は国や県、市町村、土地改良区が行う土地改良事業費の農家負担分を農家から賦課金として毎年、春と秋に徴収しているんだ」
「まるで税金の取り立てみたいだな」風間が言った。
「そうなんだ。この賦課金は税金と同じように強制的に徴収することができるんだ」
「強制的に徴収?」甘木が尋ねた。
「税金の滞納処分と同じ仕組みだよ。農協にはこんなに強い権限はないけど、土地改良区は持っているんだ。そのうえ土地改良事業費の農家負担だけでなく、土地改良区の運営経費も賦課金として徴収できることになっている」
「運営経費って、どんな経費ですか?」甘木が尋ねた。
「光熱水費や車両費など事務所の維持経費もあるけど、ほとんどは役職員の人件費だ」
「田沼市土地改良区の職員給与が市役所職員の給与表に合わせて作っているって話を聞いたことがあります。土地改良区も『親方日の丸』ってことか」風間が言った。
「話を元に戻すと、この土地改良事業が、本当に農家のために行われているのか疑問に感じている。農家というよりも、事業を推進する立場にある土地改良区や工事を請け負う建設会社のために行われているんじゃないかって、思っているよ」
「どういう意味ですか?」甘木が尋ねた。
(作:橘 左京)

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小説「廃屋の町」(第37回)

2017年7月10日ニュース

 次に甘木と風間が向かった先は、市街地の周辺部にある農村集落だ。農村集落は屋敷も広ければ住宅も大きい。田沼市の農家は今年8月下旬に日本列島を通過した台風15号によって、甚大な農業被害に見舞われた。田沼市の農業被害額は県内の農業被害額の6割も占めている。
「ごめんください」玄関先で甘木と風間は挨拶をしたが、家の中からは返事はなかった。
 ガー、ガー、ガー、と何か機械の動く音が、住宅の後ろにある農作業場から聞こえて来た。風間が「もしかして、裏の農作業場にいるかもしれない。行ってみようか」と言って、二人は機械の音が聞こえる農作業場に向かった。農作業場には作業服姿の農家の人が乾燥機を回していた。
「お仕事中にお邪魔してすみません。来年4月の市長選挙に立候補を予定している甘木雄一と申します」と言って、甘木は一礼した後、名前とプロフィールを書いた顔写真入りのカードを農家の人に渡した。
「この前、新聞に出ていた人だね。あんたのような若い人に市長になってもらって、田沼市の農業を再生してもらいたいよ。しかし、今回の台風被害には参ったよ。私ら専業で米を作っている農家ほど、今回の台風による痛手は大きかったよ。刈り取り間近い稲穂が一晩で白穂に変わってしまった。実際に収穫してみたら未成熟な米や白い斑点の付いた米が多かったよ。収穫量が減ったことや米の品質低下で大幅な減収になりそうだ。農業共済で減収分が補填されるといっても1〇〇%じゃない。台風被害で農家の収入が減っても、農機具代のローン返済や土地改良費の賦課金は待ってはくれない。これらの経費を差っ引けば収支は赤字になってしまう。被害農家の中には、後継者がいないこともあって農業をやめたいと言っている大規模農家もいるが、この農家の田んぼを引き受けてくれる農家が見つからなくって困っているそうだ。田沼市の農業は、今、存続の危機に直面しているよ。こんな時にこそ、行政はしっかりと救済すべきじゃないだろか」
「おっしゃる通りですね。今回の台風による田沼市の農業被害は、被害面積、被害額とも県内最大規模です。国や県の画一的な支援だけでは不十分だと思います。被害規模が県内でも一番大きかった田沼市の農家を救うためにも、市当局は独自の救済策を打ち出すべきです」甘木が言った。
「農家でもない甘木さんからそこまで言ってもらうとありがたいよ。それともう一つ、これは農家でないと分からないことかも知れないが、土地改良事業という公共事業を知っているかね?」
「すみません。土地改良事業という言葉を初めて聞きました」甘木は答えた。
「農業用の水路や道路を整備したり、田んぼの区画を広げたりして、農地の生産性を上げるために行われる公共事業のことだよ」
 土地改良事業は、農用地や農業施設の改良・開発・保全・集団化を目的に行われる公共事業で、灌漑・排水施設、農業用道路、農業施設の新設や管理、区画整理、農用地の造成・埋立て・干拓、災害復旧などの事業が挙げられる。土地改良事業は、国・都道府県・市町村・土地改良区などが事業主体になって実施されるが、通常の公共事業と異なって、受益を受ける農家が事業主体に申請して行われる。事業費は国、県、市町村が負担するほか、受益を受ける農家も受益面積に応じて負担する。
(作:橘 左京)

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