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小説「強欲な町」(第2回)

2018年3月7日ニュース


[マモン コラン・ド・プランシー『地獄の辞典』より]

「私ですか?私の場合、国債で運用しているので、所長や野上さんが持っている投資信託のように元本割れの心配はありません」
「国債って、個人向け国債ですか?」
「はい、変動金利の10年満期の国債です」
「変動金利ですか。一般的には、株価が下がると金利が上昇し、反対に株価が上昇すると金利が下がるといわれています。日経平均株価の動きに注意を払った方がいいと思いますよ。また金利は為替と密接に関係しています」
「金利が為替と関係があるって、どういうことですか?」佐久間が甘木に尋ねた。
「分かりやすく説明すると、まず、為替相場が円高になった場合を考えてみましょう。円高というのは、外国の通貨と比較して円の価値が高くなるという意味なので、円高になれば外国製品がたくさん買えることになります。石油、食料品、原材料など海外から輸入している製品が安く買えることになるので物価は下がります。物価が下落すれば金利は低下します。従って、為替相場が円高に動けば金利は低下してきます。反対に、為替相場が円安になると、輸入品の値段が高くなるので、日本国内の物価は上昇します。円安というのは、円の価値が下がるという意味なので、円安になれば海外製品が少ししか買えなくなります。その結果、物価が上昇し、連動して金利も上昇します。従って、為替が円安に向かえば金利は上昇します。また、日本と外国との金利差も日本の金利に影響を与えます。ここでいう金利は政策金利のことを指しますが…」
「今、所長がおしゃった政策金利って何ですか?」佐久間が甘木に尋ねた。
「政策金利は、各国の中央銀行が普通銀行に対して融資をする際の金利のことです。日本と外国とで金利差があると、二国間でお金が移動したり、為替が変動するからです。例えば、日本とアメリカの金利差が拡大したケースを考えてみます。日本の金利が下がって、アメリカの金利が上がった場合、日本の金融商品に投資するよりもアメリカの金融商品に投資した方が有利ですよね。なので、円をドルに換えてアメリアの金融商品を買おうと円売り・ドル買いが進みます。アメリカに向かって日本から、どんどんお金が出て行くので、ドル高・円安がなります。では反対に、アメリカの金利が下がって日本の金利が上がった場合はどうでしょうか。この場合、日本の金融商品に投資した方が有利になりますから、ドルを円に換えて日本の金融商品を買おうと円買い・ドル売りが進みます。このように、アメリカからどんどん日本にお金が入ってくるようになり、円高・ドル安になっていくのです」
 甘木が自信ありげに答えた。
「ということは、私が持っている国債は、半年ごとに金利が変動するタイプなので、為替の動きにも注意しないといけないってことですね」佐久間が言った。
「そういうことになりますね。お金は国境を越えて移動していますので、国内だけでなく、海外の経済の動きにも注視する必要がありますね」甘木が話を締めくくった。
「佐久間さん、コスモスの花って、ピンク色だけかと思ったけど、赤や白、黄、オレンジと様々な色があるんですね」佐久間が先ほど、花瓶に活けたコスモスを見ながら野上が言った。
「そうなんです。コスモスは秋桜という別名もありますが、花びらの色が桜のようにピンク色だけじゃないんですよ」佐久間が笑顔で答えた。
「『乙女の真心』、『乙女の愛情』でしたね」色とりどりのコスモスを眺めながら甘木が言った。
「所長、それって、コスモスの花言葉ですか?」野上が尋ねた。
「当たり!清純な佐久間さんのイメージにぴったりな花ですね」
 野上の言葉を受けて佐久間は頬をほのかに紅潮させた。
(作:橘 左京)

posted by 地域政党 日本新生 管理者