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小説「廃屋の町」(第28回)

2017年6月22日ニュース

「議長!」と言って小林議員が挙手した。
「小林俊二さん」議長が指名した。
「では再質問に入らせていただきます。先ほどの私の質問。1点目の、合併して8年経った新田沼市の現状認識についてのご答弁ですが、これについては、合併建設計画に明記されている旧4市町村時代に建てられ、築後40年近くなった公共施設の再編整備に腐心したと。それというのも合併時の市長選のしこりが合併後にも残り、支所庁舎の廃止や新しい公共施設の配置を巡って中心部と周辺部とで軋轢が生じていると。8年前の市長選挙は、確か、旧田沼市長、現在の井上市長と旧2か町村長が推した旧春野町長の佐竹氏との一騎打ちであったわけですが、結果は井上市長が当選し、それが旧田沼市と旧三か町村地域とのわだかまりとして残ったという認識でよろしかったですよね?」
「議長!」と言って井上市長が挙手した。
「井上市長」議長が指名した。
「小林議員のおっしゃるとおりです。市といたしても、周辺部にお住いの旧3か町村の方が市役所に来る時や、通院や買い物で本町商店街に来られる高齢者のためにも、市域全体に市バスを走らせていますが、合併して却って不便になったという意見がまだ多く寄せられていますので、公共施設の再編整備計画の見直しが必要と考えています」
「議長!」と言って小林議員が挙手した。
「小林俊二さん」議長が指名した。
「市長が最後に、公共施設の再編整備計画の見直しが必要、と言われたわけですが、これは、私の質問の2点目、今後の市政運営の在り方、方向性ということに対する答弁と理解してよろしいですか?」
「議長!」と言って井上市長が挙手した。
「井上市長!」議長が指名した。
「そういう趣旨で申し上げました。御存知のとおり、合併特例債は返済時の元利償還金の7割を国から支給される地方交付税で賄うことができるという、国の財政支援が厚い起債(借金)であります。その特例債の発行期間が10年から15年に延長されたことから、約350億円ある合併特例債は、既に6割にあたる210億円は使っていますが、残り140億円を全部使って、旧3か町村時代の公共施設を改修し延命化することが、中心部と周辺部とのわだかまり、軋轢を解消できるものと考えています。併せて、2年後に新田沼市誕生10周年を迎えるにあたって、新市にふさわしい、新たな公共施設の整備が必要と考えています」
「議長!」と言って小林議員が挙手した。
「小林俊二さん」議長が指名した。
「今、市長が言われたことを要約しますと、合併後も残っている中心部と周辺部のわだかまりを解消し、田沼市民11万人の心を一つにする上で、合併建設計画にある公共施設再編整備計画の全面的な見直しが必要だと。具体的には、新田沼市にふさわしい公共施設を新たに建設する。一方で、周辺部に住んでいる住民の方の利便性を確保し、合併によるメリットを感じてもらえるように、旧3か町村時代に建てられた公共施設を改修し延命化を図る、という答弁ということでよろしかったですね?」
(作:橘 左京)

posted by 地域政党 日本新生 管理者