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小説「廃屋の町」(第22回)

2017年6月10日ニュース

 馬場島から望む早月尾根にはガスがかかっていて1500mくらいまでしか見えない。もちろん、剣岳山頂や小窓尾根も見えなかった。天気は曇りから小雪まじりに変わった。気温は1度℃と低い。
 10時10分、小雪が降る中、二人は松尾平に向けて出発した。11時20分、松尾平(標高957m)に到着した。積雪は1.5mほどある。小休止の後、早月尾根に向けて雪の中を歩いた。先発で入山した二団体が残したトレースを歩くが、途中からトレースが雪に埋もれていたので登山靴に輪かんじきを付けた。
 12時20分、早月尾根(標高1080m)に到達し休憩をとった。辺りはガスで覆われ視界がほとんどきかない。気温は氷点下になった。北陸の特有の湿雪から、さらさらした乾いた雪になった。標高が上がるにつれてガスも次第に濃くなり、西風も吹いてきた。14時30分、標高1600m地点に到達。平らな場所を見つけそこで幕営した。
 二日目。3時に起床しテントを畳んで6時20分に幕営地を出発した。外は晴れていたがまだ暗い。歩いていくうちに、だんだんと辺りが明るくなってきた。少し登ると展望が開け、立山川の向こうに大日岳が見えた。天気は晴れ。下は雲海に覆われ、雲海の向こうに猫又山や赤谷山が見える。
 8時10分、急坂を登りきって三角点峰(標高1920m)に到達した。ここからは、山頂と小窓尾根のギザギザした稜線がよく見える。標高2050m付近にある池が二つ連なったところは立山川寄りの稜線部を歩いた。途中、昨日登頂を終えて下山した城東大学の学生四人とすれ違った。話を聞いたところ、山頂付近はガスがかかって視界は効かなかったという。
 二人は2224m峰に到達した。すぐ下の鞍部に早月小屋が見えた。11時20分、早月小屋に到着。先に到着した広陵大学のテントが一張りあった。野上と甘木は城東大学がテントを設営したと思われる場所を見つけ、シャベルで雪を払い除けた後、テントを張った。
 まだ時間があったので、天気の良い今日中に明日の登攀ルートを下見することにした。早月小屋から先に続く早月尾根を、雲海を背にして登った。12時10分、2470m峰に登ったところで東の方角を向くと剱岳山頂が正面に見え、難攻不落の砦のようだった。よく見るとシシ頭を下って降りる3人の人影が見えた。どうやら広陵大学の学生のようだ。2470m峰から剣岳を眺めながら2550m地点まで登ってみることにした。急登を登り終え2550m地点に到達した。稜線はこの先も続いている。明日の登攀ルートを確認した二人は、登頂を終えて下ってきた広陵大学の学生三人と合流し早月小屋に戻った。
 三日目、午前零時を過ぎたことから風が吹き始めて次第に強くなった。7時30分に起床、強風でテントがガタガタと揺れている。昨日の天気とは打って変わって吹雪になった。昨日登頂を終えた広陵大学のテントは撤収されていた。どうやら下山の途に就いたらしい。
 甘木と野上は予定していた今日の剣岳登頂は諦めた。吹雪が吹き荒れるなか、仮眠したり停滞用に用意した汁粉を食べたりしながら、終日、テントの中で過ごした。一日で1mほどの雪が積もり、早月小屋のトイレ前は埋まりそうになっていた。
(作:橘 左京)

posted by 地域政党 日本新生 管理者