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小説「廃屋の町」(第25回)

2017年6月16日ニュース

 田沼市役所二階にある市長室で、市長の井上将司、市議会議長の遠山信一、副議長の小林俊二の3人が集まって煙草をふかしながら話し合っていた。井上は吸っていた煙草を灰皿に押し付けて言った。
「最近、分煙、分煙と世間がうるさくいうもんだから、私のような愛煙家はなにかと肩身が狭いですよ。市役所でもわざわざ分煙用の部屋を作ったが、たばこ好きな職員がかわいそうだ。あんな狭い部屋の中で大勢が煙草を吸えば換気扇も役に立たない。かえって逆効果ですよ。幸い、ここ市長室は聖域です。たばこ好きの部課長連中は、私へのレクチャーを口実に時々たばこを吸いにやってきますよ」
 議長の遠山が「市議会の方も女性議員が5人もいるため、以前は煙草が吸えた議員控室での喫煙は御法度になりました。でも議長室は別です。議員や職員が煙草を吸いにやってきますよ。人が集まればいろいろな情報が入ってくる。いわば、たばこ外交ですね。たまに煙に巻かまれることもありますが……」と、井上市長に相槌を打つように言った。
 井上は話を続けた。
「来春の市長選挙のことで、先日、たぬま新報の高橋編集長が4期目の出馬について探りを入れに来ましてね。私が3期目の当選を決めた後に彼の取材を受けたんですが、その時、私は3期12年が一区切りだと答えたことを覚えていたらしく、それを確認しに来たようです。一般論ですが、4期目の出馬となると、マスコミからは多選批判が出てきます。私自身、まだ体力、気力とも十分あるし、やり残した仕事もたくさんあります。二年後には新田沼市が誕生して十周年を迎えます。合併して人口が増えたのに新市にふさわしい新しい公共施設がまだ一つもない。新市建設計画に入っている文化会館と総合体育館の建設を私の手で成し遂げ、合併10周年の記念行事を祝いたいんですが、遠山さんや小林さんはじめ、市議会からも力を貸してもらえないでしょうか?」
 井上市長の4選出馬に向けた決意を聞いた遠山と小林の二人は、一服、吸った後、ゆっくりとうなずいた。
「あとは市長が出馬表明をするタイミングですが、9月定例会で出馬表明をされた方がいいと思いますよ。合併後8年間の総括と今後の市政運営の在り方について、一般質問の中で、我々の会派の議員が市長の考えを伺いますので、それに答える形で出馬の意志表示をするというシナリオはどうですか?」
 遠山が提案した。
「そうですね、その方が自然ですね。前回の市長選が終わった後、3期12年で一区切りと言った手前、こちらから記者会見を開いて、4期目を目指して市長選に出ますというのも格好が悪いですからね」井上が答えた。
(作:橘 左京)

posted by 地域政党 日本新生 管理者