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小説「朱鷺伝説」(第9回)

2017年4月21日ニュース

 9月中旬。ザク、ザク、ザク。
 山の麓の田んぼでは稲刈りが始まった。村人たちは、黄金色になった稲穂を鎌で刈り取っていた。
 神社近くの田んぼでも稲刈りが始まった。植えたばかりの苗を踏み荒らされた腹いせに、朱鷺を猟銃で撃ち殺した男の田んぼだ。たわわに実って頭を垂れた黄金色の稲穂を見ながら男は満足そうにつぶやいた。
「稲穂に付いた籾も大粒だし籾の数も多い。今年はいつもの年よりもたくさんの米が採れそうだ。それに案山子のおかげで雀も寄ってこない」
 しかし気になることがあった。案山子が立てられた隣家の田んぼでは、雀が群がって稲穂を突っついている。
「おかしいな。どうして、わしの田んぼにだけ雀が寄り付かないのだろうか?」男は不思議に思った。
 男は刈り取った稲穂を千歯扱(せんばこき)で脱穀して出てきた籾米を籾摺り機に通した。籾殻が取り除かれて出てきたのは、茶色い粒だった。
「あ、あ、どうしたんだ!」男はびっくりして、茶色い粒を手に取ってみたら、それは砂粒だった。男の田んぼで採れた籾のなかに入っていたのは黄色い米粒ではなくて、茶色い砂粒だった。
 雀は男の田んぼの稲穂に砂粒が入っていることを知っていた。雀は砂粒の入っている男の田んぼを避けて、米粒の入っている隣家の田んぼの稲穂に集まったのだ。
「もしかして朱鷺のたたりかもしれない。わしが朱鷺を鉄砲で撃ち殺したからだ」男はがっくりと肩を落とした。
 
 ザク、ザク、ザク。
 雄太は父と黄金色になった稲穂を鎌で刈り取っていた。里山の麓にある雄太の家の田んぼでも稲刈りが始まった。しかし田んぼに雀の姿はない。
「稲穂に付いた籾も小粒だし籾の数も少ない。それに雀も寄ってこない。今年はいつもの年よりも米が採れないかもしれない」
 父は刈り取った稲穂を手に持って言った。刈り取った稲穂は束ねられ稲架(はさ)に掛けられた。夕日を受けた稲穂は黄金のような輝きを放っていた。稲架に掛けられた稲穂は夜になっても輝き続けていた。しかし雄太も父もこのことを知らない。
 雄太と父は稲穂を千歯扱(せんばこき)で脱穀して出てきた籾米を籾摺り機に通した。なんと、籾殻が取り除かれて出てきたのは、黄色い米粒ではなく金色の粒だった。
「あ、あ、どうしたんだ!」雄太君と父はびっくりした。金色の粒を手に取って調べたら、それは砂金だった。籾のなかに入っていたのは米粒ではなくて砂金だった。雀は稲穂に砂金が入っていることを知っていた。雀が雄太の家の田んぼに寄って来なかったのは、好物の米粒が稲穂に入っていないことを知っていたからだ。父はつぶやいた。
「不思議なことがあるもんだ。あの夜、3羽の朱鷺が田んぼで植えていた黄緑色の苗は黄金を生む稲穂の苗だったのだろうか?もしかして、あの3羽の朱鷺の親鳥は佐渡島から飛んできたのかしれない」

 江戸時代初期に最盛期を迎えた佐渡金山は、当時としては世界最大級の金山だった。佐渡金山は江戸幕府の直轄地として管理され、幕府の財政を支えた。明治、大正の時代になっても佐渡金山では金や銀の採掘が行われていた。
(作:橘 左京)
【編集部からのお知らせ】
 27日から、小説「朽ちる町」を連載します。

posted by 地域政党 日本新生 管理者