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小説「朱鷺伝説」(第7回)

2017年4月17日ニュース

 ピー、ピー、ピー。
「お父さん、鳥の鳴き声がするよ」
 里山で柴刈りを手伝っていた雄太が父に言った。二人は樹の枝に掛けられた朱鷺の巣を見つけた。灰色の産毛に覆われた3羽の雛が、巣の中で寄り添って鳴いていた。
「どうしたんだろう。もう親鳥が巣に戻っている時間なのだが……」父が呟いた。
 太陽が傾いて日陰になった山の斜面は薄暗く、周囲の空気が冷たく感じられる。
 ガー、ガー、ガー。ガー、ガー、ガー。
 二羽のカラスが巣の近くの樹に止まっている。どうやら雛を狙っているようだ。
 ピー、ピー、ピー。ピー、ピー、ピー。
 雛の鳴く声が山の斜面に木霊する。雛は恐怖と寒さで震えているようだ。
「このままではカラスに食われてしまう」
 父は樹に登って、巣から3羽の雛をそっと取り出して麻袋に入れた。
「雄太、暗くなる前に家に帰るぞ」
 父は雛を入れた麻袋を雄太に渡した。

 ピー、ピー、ピー。
 雄太の持った麻袋の中から雛の鳴き声が聞こえてくる。
 雄太の家は里山の麓にある。家に帰った雄太と父は、雑魚を鍋に入れて煮詰めて柔らかくした。冷えてゼリー状になった雑魚を、山で刈り取って来た柴木の棒先に付けて雛の口元に持っていったが、雛は人間を警戒しているのか、なかなか食べようとしない。
 二日目からは少しずつ食べるようになった。雛は成長し、だんだんと体が大きくなってきた。雄太と父は納屋の一角に金網で囲った大きな鳥小屋を作った。雄太と父が育てた雛は親鳥と同じくらいに大きくなった。止まり木の3羽の朱鷺は、時折、翼を羽ばたかせている。もうすぐ巣立ちを迎える。
 6月中旬。鳥小屋の扉が開かれて朱鷺が外に放たれた。3羽の朱鷺は雄太の家の周りを何回も旋回した後、里山に向かって飛んで行った。
(作:橘 左京)

posted by 地域政党 日本新生 管理者