時局自論3.2~厚労省 生活保護世帯数(平成27年5月分)を公表 数よりも期間の方が大事だ(後編)(東京都千代田区)
厚生労働省は毎月、報道機関向けに「生活保護の被保護者調査結果」を公表しているが、私が注目しているのは、世帯類型でみた被保護世帯数だ。4つの世帯類型のなかで「高齢者世帯(65歳以上)」だけが年齢で区分されている。そして、この「高齢者世帯」が被保護世帯の半分近く(49.1%)を占め、しかも一貫して増えている。他の3類型(母子世帯、傷病者・障害者世帯、その他の世帯)の世帯は横ばいか微減で推移しているのと対照的だ。「日本では高齢者が増えているのだから、生活保護を受ける高齢者世帯が増えてくるのは自然だ。」と考えがちであるが、それは早計だ。
生活保護を受けている高齢者世帯に支給される生活保護費(月額)をみると、単身世帯では約8万2千円、夫婦世帯では12万2千円(H26年度、1級地-1の場合)だ。一方、65歳から支給される国民年金(月額)は約6万5千円だ。(ただし、保険料を40年間納付した場合の満額支給額)国民年金を満額支給されていれば生活保護を受ける必要はないはずだ。なぜ、これほど生活保護を受ける高齢者世帯が多いのか。低年金・無年金の高齢者であれば生活保護が必要になるのは分かるが、それだけでは説明がつかない。
ここで、高齢者世帯だけが他の世帯類型と異なって年齢で区分されていることを考えれば説明がつく。すなわち、他の3類型(母子、傷病者・障害者、その他)の保護世帯について、世帯主が65歳に達すると「高齢者世帯」分類されてくるのではないか。そこに低年金・無年金の高齢者が加わって世帯数が増えているのではないか。そうだとすれば、生活保護世帯が固定化され、保護の期間が長期化していることになる。貧困層の固定化であり長期化である。富裕層の固定化・長期化と対照的である。固定化された一握りの富裕層と大多数の貧困層。これが日本社会の実相ではないか。格差社会を指摘したトマ・ピケティの著書「21世紀の資本」が日本でも売れているのには訳があった。※この項終わり。
(代表 天野 市栄)