「いちえいの市議会短信」VOL.10
「我は兵を持って戦いを決せん
塩を以て屈せしめることをせじ」
●道路除雪体制と消雪施設の整備について~その2
田中市長は就任以来、政策の「金看板」として消雪パイプの新設を掲げ、毎年度、数億円(2億~3億円)規模の事業費を投じてきました。平成24年度から令和2年度までの9年間における総事業費は約24億円、整備済延長は46.4キロメートルになります。
一方、合併前の旧4か町村時代に整備され、老朽化した消雪パイプの修繕・更新事業については、令和2年度までの9年間で、総額の事業費が約15億円、整備済延長で18.4キロメートルとなります。
上記に掲載した事業費及び整備済延長から分かるように、「修繕・更新」よりも「新設」を優先にした事業実績となっています。消雪パイプを新設する路線について、決算書付属書類の「主要な施策の成果報告書」によれば「家屋連坦部など堆雪スペースが確保できず機械除雪が困難な路線」としていますが、この要件に当てはまる地域・地区は、主に道路の両側に住宅が連坦する市街地にある道路になります。阿賀野市が誕生(平成16年)して開発された新興住宅地を除けば、合併前の旧4か町村の役場庁舎(現在の本支所庁舎)の周辺部に形成されている市街地がこの要件に該当します。これらの地域・地区にある道路は、旧町村時代に整備済みの路線であり、今まさに、経年劣化による老朽化が進行し、修繕・更新が急務な路線となっています。
一方、「成果報告書」に明記されている消雪パイプの新設個所をつぶさに観察すると、「家屋の連坦部」にも当てはまらない、また市内でも降雪量が少ない地域にある路線においても施工されているようです。
「(消雪パイプが」無いと困る」地域にある路線として、旧4か町村時代に整備された消雪パイプの老朽化対策が後回しにされ、一方、「自治会からの新設要望がある」ことを大義名分にした「(消雪パイプが無いよりは)有った方がなお良い」地域においても、新設工事が行われている実態が見受けられます。
地球温暖化による「暖冬小雪」の気候トレンドを踏まえれば、消雪パイプの新設にあたっては「必要性」や「費用対効果」を充分に検討した上で行うべきものと考えます。またSDGs(持続可能な開発目標)が示す17の目標の一つに「つくる責任、使う責任」があります。「(生活)環境の持続可能性を確保」するためにも、つくる側の行政と使う側の住民との『対話と共感』が不可欠であると理解しています。
そこで、新潟県土木部出身で土木行政のエキスパートでもある田中市長に道路消雪施設(消雪パイプ)の整備についての考え方をお伺いします。
【AI秘書Wisの小話】
●長者の万灯より貧者の一灯~その2
地元選挙区選出の自民党県議H氏の新聞折込みチラ(後援会報)を拝見すると、強大な政治力を誇示している様子がよく分かる。チラシの表紙には「年頭のご挨拶」と題し、新型コロナウイルス、持続可能な社会の構築(SDGs)、「ロマン(夢)をリアリティー(実現)に」の3項目について、H県議は言及している。併せて、写真3枚が掲載されている。いずれの写真もH県議、花角新潟県知事、田中阿賀野市長の3人が写っている。
2頁目には花角新潟県知事、自民党のS衆議院議員(北信越ブロック選出)、田中阿賀野市長、後援会総連合会長S氏の4人のあいさつ文が顔写真付きで掲載されている。3頁目には阿賀野市議会の最大会派「新風あがの」のあいさつ文と併せて構成議員の8人衆の顔写真が載せてある。
H県議とチラシに掲載されている政治家(首長、議員)との関係は、執行権(予算執行権と許認可権限)を握る首長と、首長の執行権を政治的に利用しようとする、執行権を持たない議員(県議、市議)との間の、公共事業を通じた密接(三密?)な関係が見えてくる。
3頁目下段と4頁目上段には、「阿賀野市に関する県政」と題して、「阿賀野市県事業要望会及び阿賀野市県事業を建設促進懇談会と阿賀野市内で施工されている県営事業(安野川の河川改修、ほ場整備事業)について施工場所の写真入りで掲載されている。
H県議の政治信条である「ロマン(夢)をリアリティー(実現)に」は公共事業で体現されている。上記県営事業の事業費の一部は阿賀野市も負担している。それゆえにH県議は田中市長とも緊密(三密?)な関係を保持している。
当選8期目のH県議は自民党県議のなかでは重鎮である。自民党新潟県連のナンバー2の筆頭副会長を務めたことがある。(会長は原則として国会議員)H県議は「ハード事業」においては遺憾なく政治力を発揮しているが、「ソフト事業」では残念ながら、同氏の政治力は全く認められない。それを如実に物語る事象がある。阿賀野市内にある唯一の県立高校「阿賀野高校」入試の志願倍率だ。地元紙「新潟日報」2月27日付けの記事によれば、阿賀野高校(定数115人)の最終倍率は0.31と普通科高校50校中最下位の倍率だ。昨年の最終倍率も1倍に届かなかった。一方、隣の五泉市にある村松高校(定数80人)は0.45倍。同市には他に五泉高校(総合学科、定数200人)がある。五泉高校の最終倍率は1.09倍。
阿賀野高校(旧水原高校)はH県議の母校である。母校存亡の危機を肌身に感じたのか、H県議は盟友の田中市長とタッグを組んで阿賀野高校の活性化(志願者増)に向けて腐心した様子を市民新聞「あがの新報」(2019年7月号)が紙面トップで伝えている。しかしH県議が首を突っ込めば突っ込むほど事態は悪化の一途だ。いっそうのこと、公共事業限定ではあるが政治力を発揮していただき、豪奢な新校舎を建設すれば、富裕層の子弟が大勢入学するかもしれない。