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小説「廃屋の町」(第103回)

2017年11月17日ニュース

「おそらく、当時、入札係の主任をしていた坂井盛男だと思います」
「坂井って職員は、今どこの部署にいるんだ?」
「財政課の予算係長をしています」
「財政課?財政課長の杉本のところかね?杉本は市長選に出る甘木の中学時代の同級生だそうだね?」
「はい、そうです。観光振興課長の木下信行も甘木の同級生です」
「大事なこの時期に、3年前の市立病院の建設工事の入札で官製談合が行われたなんて、世間に知られたらどうなるか、君、分かっているだろうね?」
「は、は、はい、分かっています。それで私はどうすればいいんでしょうか?」
「忖度してくれたまえ?」
「ええ、忖度?」
「私の胸中を推し量れば、今、君のやるべきことは分かるだろう?」
「は、は、はい、充分に分かっております。それではこれで失礼します!」
 中山は足早に市長室を出て行った。
 井上市長は山田県議の携帯に電話をかけた。
「市長の井上です。建設業協会の賀詞交換会ではお世話になりました。実は大変な事が起きまして、それで県議さんに電話をしましたが、今、よろしいですか?」
「ああ、大丈夫だよ。市長、大変なことって、一体何だね?」
「昨日、長野日刊新聞社に市立病院の移転新築工事の入札で官製談合が行われたという情報提供があったらしくて、さっき新聞社の田辺って女性記者が中山総務部長のところに、取材に来ました。中山部長は、入札は法令や規則に従って適正に行われたと記者に話したそうですが……。新聞に載ったりしますかね?」
「市長、大丈夫だよ。新聞には載らないと思うよ。談合情報が入札前にマスコミに伝われば、新聞に載るだろうけど、終わった後のしかも3年前の入札だろう。恐らく電話による匿名の情報提供だったんだろうね。田辺って記者は、寄せられた匿名情報の裏付け取材に中山部長のところに行ったんだと思うよ。ところが中山部長の話からは裏が取れなかったので、諦めて帰ったというわけだよ。でもその記者が物証を掴んでいれば話は別だ」
「物証?」
「例えば、官製談合が行われたことが分かるような、関係者のやり取りを記録したメモとかが新聞社に渡っていれば、まずいことになるがね……」
「メモはないと思います。記者は中山部長の話を渋顔で聞き終えた後、そのまま帰りましたから、メモとかの物証は持っていないと思いますよ」
(作:橘 左京)

posted by 地域政党 日本新生 管理者