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小説「廃屋の町」(第102回)

2017年11月15日ニュース

「市長は今、部屋にいる?ちょっと話したいことがあるんだけど……」
 慌てた様子で中山は秘書係長の日下部に尋ねた。
「大丈夫ですよ。市長は在室しています。部長、どうかされたんですか?顔色が良くないですが?」
 日下部が言った。
「いや、何でもないよ。この後は、市長の公務予定は入っているの?」中山が尋ねた。
 日下部は日程表を開いて、
「いえ、この後、午前中は何も入っていませんが……」と答えた。
「分かった。ありがとう」
「中山です。失礼します」中山が市長室に入った。
「どうしたね?中山君、顔色が良くないね。体調でも崩したかね?総務部も新年度予算編成で大忙しだろうね。インフルエンザが流行っているそうじゃないか。体調管理には気を付けた方がいいよ」
 井上が言った。
「実は、先ほど長野日刊新聞の田辺結花という記者が、3年前に行われた市立病院の移転新築工事の入札について話を聞かせてもらいたいと言って、私のところに取材に来ました。田辺記者が言うには、その時に行われた入札が官製談合だったという情報が長野日刊新聞社に寄せられたということですが……」
「官製談合だって!新聞社にリークしたのは誰だ?3年も前に行われた入札の話が、どうして、今になって出てくるんだ。で、君は記者にどう答えたんだね?」
「法令や財務規則、入札要綱に基づき適正に行われた入札だと、議会の議事録を見れば分かるって答えました」
「確か、改進党の明間議員が、市議会で市立病院の入札執行について質問していたね。思い出したよ。最初に私が答弁して、再質問で入札課長だった君が答弁してたね?」
「はい、そうです。議会で答弁したとおりに記者に答えました。記者は納得しかねるような顔つきをしていましたが、それ以上の追及はありませんでした」
「それでいいんだよ。しかし、どうして今になって、3年前の入札の話が突然、出て来るんだろうか?3か月後に市長選挙が行われるこの時期に、こんな話が出てくるなんて、誰かが謀略をめぐらしたんじゃないか?」
「リークした人物を尋ねましたが、記者は教えてくれませんでした」
「そりゃ当然だよ。記者に聞いても情報源は絶対に明かさないよ」
「多分、新聞社に情報提供した人物は職員だと思うんですが……」
「多分じゃない!間違いなく市役所内から情報が漏れたんだよ。君を入札課長から総務部長に抜擢した私の気持は分かっているだろう?」
「はい、一足飛びで総務部長にさせていただいた市長のお気持ちは充分に分かっています」
「市立病院の入札情報が建設業協会に漏れていたという事実は極秘情報だったはずだ。君は入札課長として、その極秘情報を管理する立場にあったんじゃないか?」
「はい、そのとおりです」
「誰だね?情報を漏らした職員は。君なら検討がつくだろう?」
(作:橘 左京)

posted by 地域政党 日本新生 管理者