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小説「廃屋の町」(第49回)

2017年8月3日ニュース

「工事の発注者が事前に設定する落札価格の上限額のことで、工事の内容や技術的程度に応じて決まる見積価格のことだよ。入札参加業者は予定価格よりも下回る価格で札を入れ、最も安い価格で札を入れた業者が落札者となる。時々、予定価格を上回る価格で札を入れて失格になる業者もいるけどね」
「利幅を考えれば予定価格に近い価格で落札した方がいいかもしれないけど、どうしてもその工事を受注したいと考える業者にとっては、利幅は少なくなるけど、予定価格よりもかなり低い価格の札を入れないと落札できないわけか」甘木が言った。
「そこで、業界の利益を最大化するため談合が行われるわけだ。落札率って、落札した業者が札に書き入れた価格を予定価格で割って出すんだろ?田沼市の落札率が県内の市町村平均よりも突出して高くなっているというのは、入札前に予定価格が業者側に漏れているってことじゃないかい?つまりは、官製談合が行われているってことだろう?」風間が言った。
「田沼市の落札率が県内平均よりも高いからといって、官製談合、つまり入札前に予定価格が漏れていると断定することは難しいね。限りなく黒に近いグレーだとは思うけど、状況証拠でしかないよ。入札等監視委員会でも、県内平均よりも落札率が高くなっていることや、予定価格に近いところで入札価格が等間隔に並んでいる状況を見て、談合を疑う委員さんもいるけどね」
「そういえば、田沼市は『歩切り』をして予定価格を低く設定しているので、落札するのが難しいって、親戚の建設会社の人が言っていたけど。『歩切り』って何のこと?」久保田が尋ねた。
「見積金額、正式には『設計書金額』っていうんだけど、この設計書金額をよりも低い価格で予定価格を設定することだよ。国からは設計書金額を予定価格にするようにと指導が出ているけど、田沼市の場合、『歩切り』をして設計書金額よりも低い価格で予定価格を設定しているんだ」
「どうして、そんなことをするんだろうね?」甘木が言った。
「入札参加業者に予定価格を知られないようするためなんだ。入札参加業者は入札書に記入する金額を決めるために、発注者から事前に公表される設計図書を基に、積算ソフトを使って工事費用を算出するんだ。この積算ソフトを使えば、設計書金額、つまり予定価格を、かなりの精度で割り出すことができるんだ」
 田沼市の場合、歩切りは設計書金額の10%の範囲で減額する方法で行われていた。表向きは入札参加業者に予定価格を知られないようにするためだが、実際の運用は違っていた。落札予定業者に有利になるようにと歩切りの幅を細かく調整していた。
(作:橘 左京)

posted by 地域政党 日本新生 管理者