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小説「廃屋の町」(第31回)

2017年6月28日ニュース

「あなた、こちらの方、来年の市長選挙に出られる甘木さんよ。わざわざ挨拶に来てくださったのよ」
 女性は甘木から渡されたカードを夫に渡した。
「米山さん、初めまして、甘木雄一と申します」
「ああ、今度の市長選挙に出られる甘木さんですね。新聞で見ましたよ。現職の井上市長も4期目を目指して出馬するそうですね。今のところ、立候補予定者は二人のようですが……」
「そうですね。しかし、選挙まで半年以上ありますから、第三、第四の候補が出てくるかもしれませんね」風間が言った。
「一般論ですが、立候補者が多いほど、現職には有利に働きますね」
「どうしてですか?」風間が尋ねた。
「現職に対する批判票が分散されるからです。ところで、井上市長は前回の市長選の時、これが最後の選挙ですと有権者に訴えて当選したはずです。それが四期目の選挙も出るとなると、公約違反にあたるんじゃないでしょうか。この他にも、井上市長に対しては、箱物中心の市政運営だとか、あちこちでいろいろな批判が出ているようですが……」
「主人は3年前まで市役所に務めておりました。退職した時は、確か選挙管理委員会の事務局長だったわね。あなた」
「選挙管理委員会には10年ほどいました。ちょうど井上市長が初当選をした年に選挙管理委員会に異動になって、それから退職するまで在籍していました」
「それじゃ、井上市長の二期目、三期目の選挙も担当されたんですね?」風間が言った。
「そうです。選挙が始まると書記長という肩書になりますが……。市長選挙だけでなく市議選挙や県知事選挙、県議会議員選挙、それに国政選挙と、選挙が始まると準備に忙しくなります。特に解散総選挙になると、準備期間が短くて、おおわらわですよ」
「それだけ長く選挙の仕事に携わっていれば、選挙のことは何でもご存知ですよね。こっちは初めての選挙なものですから、選挙のやり方について一から勉強していますが、分からないことだらけです」
 風間が言った。
「地方選挙から国政選挙とさまざまな選挙がありますが、全て、選挙は公職選挙法という法律に基づいて行われていることをご存知ですよね?」
「その法律なら知っていますが、専門用語がたくさん出ていて、理解するのが大変です」
 風間が言った。
「私でよければ、お手伝いしましょうか?」
「本当ですか!ありがとうございます。選挙実務に精通している米山さんからご指導いただけるなんて、百人力です!後日、改めて、お願いに伺います」甘木はお礼を言った。
「お二人で挨拶回りをしているというお話ですが、一軒一軒、回っているんですか?」
「はい、そうです。住民の方から、直接お話を伺うことで、地域の実情が分かりますし、また課題も見えてきます。頂いたご意見を基に市長選挙に向けた政策を作っていきたいと考えています」
 甘木が答えた。
「それはいいことですね。今の市政を見ていると、上から目線で行われているような気がします。市民の声が市政に届いていないように思います。私が市役所に務めていた頃を思い出すと、上層部が政策を決定し現場の職員はただそれを実行するだけ、という上意下達の政策決定でした。日頃から市民と接している職員の意見や創意工夫を引き出すようにしないと、多額の税金を使った行政サービスも市民からはそっぽを向かれ、結局は税金の無駄遣いになってしまいますよ」
(作:橘 左京)

posted by 地域政党 日本新生 管理者