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小説「朱鷺伝説」(第4回)

2017年4月11日ニュース

 雄太はその夜、夢のなかで不思議な体験をした。雄太の体が90年前の大正時代にタイムスリップしたのだ。時は大正8年1月14日の夜。雄太はお椀をひっくり返したような形をした雪の家にいた。ホンヤラドウだ。床には何枚もむしろが敷かれ中央には火鉢が置かれている。
 ホンヤラドウのなかには5、6人の子供たちが火鉢を囲んで暖を取っている。火鉢に敷かれた金網には狐色に焼けた餅が並んでいる。子供たちは大きな声で鳥追い歌の練習をしている。
 鳥追いだ 鳥追いだ だんなショの鳥追いだ
 どごからどごまで追っていった
 信濃の国から佐渡が島まで追っていった  
 何でもって追っていった
 柴の棒で追っていった     
 いっちにっくい鳥は ドウとサンギと小雀
 みんな立ちあがれ ホーイ ホーイ

 あの鳥ャどっから追ってきた
 信濃の国から追ってきた
 何もって追ってきた
 柴抜いて追ってきた
 一番鳥も二番鳥も飛立(たち)やがれ ホーイ ホーイ
 ホンヤラ ホンヤラ ホーイ ホーイ

「雄太君、甘酒よ。体が温まるわよ」
 赤い半纏を着た雪絵が甘酒の入った湯呑を雄太に渡した。
「ありがとう、雪絵ちゃん。いただきます」
 湯呑を両手で受け取った雄太は冷たくなった手を温めた後、湯呑を口に付けて甘酒を飲み始めた。
「温かい!甘くて美味しいね」
「雄太君、餅が焼けたわよ。まだ熱いから気をつけて食べてね」
 雪絵がこんがりと狐色に焼けた餅を皿に入れて雄太に渡した。餅から出た香ばしい匂いに雄太の鼻がひくひくと動いた。
「いい匂いがするよ。雪絵ちゃん、ありがとう」
(作:橘 左京)

posted by 地域政党 日本新生 管理者