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評論「政治とカネ」(第13回)

2018年11月30日ニュース

 一方、出口である決算についてはどうでしょうか。予算がお金を使う前に決める計画であれば、決算はお金を使った後に出てくる結果です。決算は翌年度に開催される議会において、適正な執行であったかどうか審査に付されます。適正な執行と審査されると、決算は認定されます。議会が決算を認定しなくても、予算の執行が無効になるわけではありません。しかし、使い終えたもの、使った後のお金のことについては、議会(議員)はあまり関心がないようです。「出口は甘くは」という言葉は、そういう意味で使っています。決算は首長に対する議員のロビー活動(自身の支持者・支持組織への予算獲得活動)の成果が反映されていますから、決算を見てほくそ笑む議員(与党派議員)もいれば、臍をかむ議員(野党派議員)もいるのではないかと考えています。
 
 ところで、首長の裁量で決まる経費とはどのような事業でしょうか?それは事業費の全額について、税収や地方交付税など、使い道が自由な財源を充てることができる「単独事業」です。この単独事業に対して、事業費の一部として国からの補助金を充当できる「補助事業」があります。国の各省庁が所管する補助事業は事業目的(資金使途)が細かく定められているため、首長の裁量は働きません。首長は、国に対し事業採択の申請を行うかどうかを判断するだけです。しかし、かなりの程度、首長の裁量が働く補助事業があります。第二次安倍政権時に打ち出された「地方創生」です。当時の担当大臣は石破茂地方再生大臣でした。「地方創生」は総理直轄の行政機関である内閣府が所管する補助事業です。補助率が10割と破格な扱いです。地方負担が一切なく、その上、首長の裁量が働く補助事業ですから全国自治体はこぞって手を挙げました(採択申請)。

 補助事業も単独事業も「公共」と「非公共」に区分されます。「公共」というのは公共事業(ハード)のことですし、「非公共」は公共事業以外のソフト事業のことです。予算規模、一件当たりの事業費は「公共」の方が「非公共」よりも大きくなります。
 ここで注意していただき点は、国が地方に交付する補助金は「非公共」になりますが、補助金を貰った地方がその資金を公共事業予算に充てれば「公共」に分類されます。平成26年9月に安倍政権の看板政策の一つとして打ち出された「地方創生」をご存知でしょうか。この政策は、表向きの理由は地方の人口減少と衰退に歯止めをかけるための政策になっていますが、私が市長を務めたA市おける「地方創生」関連予算の執行状況などから察すると、全国の自治体にばら撒かれた「地方創生」関連の補助金の多くが公共事業予算に回されたのではないかと考えています。「地方創生」が前回行われた地方統一選挙がらみの政策だったことを考えますと、本当の目的は、政権与党の地方議員が選挙戦を有利に展開するための方策だったのではないかと考えています。予算の編成権・執行権を持つ首長と地方統一選挙を控えた政権与党の地方議員が手を組めば可能になります。私が住んでいるA市では首長と地方議員は親密な関係にあります。来年4月に地方統一選挙がありますが、政権与党は選挙対策のためどのような「我田引水」的な政策を打ち出してくるのか注視しています。

 最後に私が市長だった頃のことをお話しますと、私が市長に就任した当時、A市の財政は危機的な状況下にありました。合併前後に行われた過剰な公共投資によって、起債残高(借入金残高)が急激に増え、公債費(借入金返済額)が歳出予算の17%も占め、福祉など住民に身近な行政サービスに回す資金的な余裕はありませんでした。一方、公共事業については、起債制限はあるものの合併特例債(償還時に元利償還額の7割を国が負担)を活用できました。しかし、この合併特例債の起債枠(限度額)が限られていることや、活用できる期間が合併後10年という制約があったことから、公共事業を「無いと困る」ものと「有ればなお良い」とに仕分けして、「無いと困る」事業に合併特例債を充当しました。
 「無いと困る」公共事業として優先的に予算配分したのが小中学校施設の耐震化工事です。私が市長に就任する前のA市における小中学校の耐震化率は県内平均を大きく下回る状況だったからです。合併特例債のほか文部科学省の補助金も財源として活用しました。私が市長に就任して間もなく中国の四川省で大規模地震が発生しました。震災で多くの子供たちが犠牲になりました。中国四川省の大地震を受け、学校施設を所管する文部科学省が耐震化工事の補助率を引き上げたことも私の決断に後押ししてくれました。
 予算を審議し決算を認定する立場にあるのが議会ですが、私が市長に就任した当時の市議会の状況を申し上げますと、少数与党下での議会運営でした。26人(市長選の半年後に行われた市議選で定数22人に削減)中、私を支持する議員(与党派議員)がわずか8人しかいないという状況の中での議会運営を強いられました。数少ない与党派議員からは折に触れて、非公式の場(市長室や宴席)で要望(陳情)を頂きましたが、予算を伴うものについては、財施難を理由にお断りすることが多かったことを覚えています。このことが私の再選を阻んだ一因だと理解しています。
(作:橘 左京)

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posted by 地域政党 日本新生 管理者