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小説「廃屋の町」(第127回)

2018年1月4日ニュース

 4月17日の日曜日、田沼市長選挙が告示された。甘木陣営は事務所近くの諏訪神社を出陣式の会場に選んだ。神社での必勝祈願を終えた甘木たちは駐車場で、選挙管理委員会に立候補の届け出に行った同級生の小島孝雄を待った。立候補の手続きを終えた小島が選挙の7つ道具を持って戻って来た。
「一番のくじを引いたよ!」小島が選対本部長の風間に報告した。
「一番のくじだって。小島、やったね!」風間が言った。
「小島、ありがとう」甘木は小島に礼を述べた。
 このくじの順は立候補の届け出の順番を決めるもので、選挙ポスター掲示板にポスターを張る個所や報道機関が立候補者の記事を書く順番を示したものだ。掲示板は二段で構成されていて上が一番、下が二番になっている。
 神社の駐車場には必勝の鉢巻を巻いた風間や久保田をはじめ甘木の同級生らを中心に70人ほどの支持者が集まった。改進党系市議8人と共立党市議2人の姿も見える。
「お父さん、頑張って!」
 娘の春香が声を掛けた。妻の美由紀、姉の山口久子の姿も見える。必勝と朱書きした鉢巻を巻いた甘木は選挙カーから伸びたマイクを手にして第一声を上げた。
「本日は、早朝より私、甘木雄一の出陣式にご出席をいただきありがとうございました。私は昨年9月に出馬表明して以来、自分の足で市内各地域、地区を隈なく回ってきました。これまで市内全世帯の約4分の3にあたる2万4千世帯を訪問し、市民の皆さまから、市政に関する様々なお話を伺ってきました。郊外だけでなく市街地でも急速に進む少子高齢化現象。空き家が増え、外で遊ぶ子供の姿が見えなくなって寂れてしまった地域があちこちに見られます。田沼市の未来を築くはずの子供たちが田沼市からいなくなっています。これは田沼市の将来に不安を感じた子育て世帯が市外に流失しているからです。3期12年続いた井上市政は無駄な公共事業に税金をつぎ込んで、市の借金を増やしてきました。増え続ける市の借金残高。借金の返済に不安を感じた子育て世帯が子供を連れて市外へと流出しています。一方で、やがては空き家になってしまう高齢者だけの家が増えています。利益誘導と既得権益者擁護の井上市政がこの先続くことを多くの市民が憂慮しています。市民不在の市政の流れを止めて、市民が主役の市政に転換することが求められています。私、甘木雄一は光の当たらない場所や光の届かない市民に『夢と希望』の光を届け、『市民の、市民による、市民のための市政』を実現します。どうか皆さんのお力で、私、甘木雄一に市長の椅子をお与えいただけますようお願い申し上げます」
 パチ、パチ、パチパチ。会場は大きな拍手で包まれた。
「お父さん、かっこいいよ!」春香の声が聞こえる。
「頑張れ!」「頑張ってよ!」同級生など支持者の声援があちこちで沸き起こった。
 選挙カーに乗った甘木は手を振って春香や支持者の声援に応えた。大勢の支持者に見送られながら甘木を乗せた選挙カーが出発した。ウグイス嬢の声が周囲に響き渡った。
「市長候補の甘木、甘木雄一でございます。不公平、不平等、不透明な市政の流れを断ち切り、公平、平等、透明性のある市政に転換しましょう!市長には甘木、甘木雄一に皆さんの大切な一票を託しましょう!」
「市長候補の甘木、甘木雄一でございます。市民不在の市政から市民が主役の市政に戻しましょう!市長には甘木、甘木雄一に皆さんの大切な一票をお願いします!」
「市長候補の甘木、甘木雄一でございます。無駄な公共事業ばかりで市の借金が増えています。子供たちへの借金の仕送りは許しません!市長には甘木、甘木雄一に皆さんの大切な一票を託しましょう!」
(作:橘 左京)

posted by 地域政党 日本新生 管理者