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小説「廃屋の町」(第118回)

2017年12月17日ニュース

「このアンケート調査は抽出範囲を広げて2回実施します。投票に行くけど投票先が決まっていない人はだんだんと絞られてきます。私どもはこの層に対して候補者の最終予想得票数の通知とアンケートに対する謝礼として商品券を配ります。実はこれだけでは歩留まり5割には届かないのです。このリストには世帯主の氏名、住所、電話番号が載っていますので、お客様の方でこのリストを活用した票集めをしていただきたいのです。例えば、掲載されている住所にパンフレットを送付することもできます。また、アンケート調査の2番目の質問が『市の政策に何を望むか』という項目になっていますが、回答の五番目『分からない』を除けば、景気が32%、生活が21%、福祉が19%、教育が11%の順になっています。新年度予算の中から景気や生活に密着した事業を抜き出して予算額と一緒にパンフレットに掲載すれば、政策を重視する有権者層には効果的です。現職の強みは予算編成権を持っていることです」遠山は思わず笑った。
「政策ねえ。義理人情で票を集める片田舎の選挙に政策なんかは要らないんじゃないか?」
「政策と言うと何か仰々しいイメージを抱きますが、政策を利益分配と言い換えると分かりやすくなります。有権者は自分たちの利益になる政策や事業を支持します。建設業界が公共事業予算の増額を要望するのと同じことです」
「そういう意味ではオタクと同じにようにウチも金券を配った方が効果的じゃないか?」
「お客様がそれをやれば公職選挙法違反の『買収』(法221条違反)になります」
「そうか。ところでオタクが提案する、この集票システムを使った選挙で勝った実績はあるのかね?」
「昨年10月に行われた戸板市長選挙です」
「なに!『戸田の軌跡』と言われているあの選挙か!」
 人口約15万人の戸板市の市長選挙が昨年10月に行われた。市長選挙は現職と保守系の新人で争われた。盤石な態勢で臨んだ現職が大差で新人に敗れた。「戸板の軌跡」と言われ、予期せぬ選挙結果にいろいろな憶測が飛び交っていた。
(作:橘 左京)

posted by 地域政党 日本新生 管理者