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小説「廃屋の町」(第115回)

2017年12月11日ニュース

「選挙の関係は、だいたい、こんなところですかね。皆さんには面白いものをお見せしますよ。『寄り道』の入口に付けた防犯カメラは、甘木陣営の事務所に向けてありますが、先日、録画した画像を再生したら、面白い映像が出てきましたよ」と言って、山田会長が部屋にあるモニターのリモコンスイッチを入れた。部屋にいる七人は冷えたカツ丼を食べながらモニターの映像に視線を向けた。モニター画面には、甘木の事務所から出て来た背広姿の二人の男と作業着姿の大柄な男が映し出された。
「背広を着ている二人は、改進党の加藤功県議と改進党系の明間昇市議じゃないですか?」
 井上が言った。
「市長の言うとおり加藤県議と明間市議ですね。あの作業着姿の大柄な男は誰だろう?」
 遠山が言った。
「ああ、あの男は青木建設社長の青木敏夫だ。前は建設業協会の会員だったけれど、年会費が高いだとか、協会に入っていても満足な仕事がもらえないと文句を言って協会を出て行った人物ですよ。松本さん、青木は土地改良区の理事をしているんじゃなかったですか?」
 山田会長は吐き捨てるように言った。
「あの野郎、裏切ったな!」松本が眉間にしわを寄せながら言った。
「業界の掟を破ればどうなるか、思い知らせてやりますよ」と言って、山田会長がリモコンスイッチを切ろうとしたところ、モニターに甘木事務所の駐車場に入っていく高級外車が映し出された。車のドアが開いてべっ甲縁の眼鏡をかけた小太りの男性が甘木事務所の入口に向かって歩いていく。
「あの男の人は岩村建設社長の岩村健吾さんではないですか?」松本が驚いた顔で言った。
「ほんとうだ。岩村さんだ!」森山が言った。
「協会の副会長が甘木の事務所に行くなんて信じられない!岩村さんには、今日の会合に出て欲しいって声を掛けたんだが、何てことだ!」
 予期せぬ映像を目の当たりにした山田会長は驚愕した。
(作:橘 左京)

posted by 地域政党 日本新生 管理者