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小説「廃屋の町」(第109回)

2017年11月29日ニュース

 杉田が市長室に入ると中山邦夫総務部長が、
「杉田課長、懲戒審査委員会では、坂井さんが起こした交通違反事件に対して、管理監督者の立場にある貴方に対しても、懲戒処分が相当として市長に報告がありました。これから井上市長から懲戒処分をお伝えします。市長、よろしくお願いします」と言って、井上に目配せした。
「えーそれでは、懲戒処分通知書を読み上げます。懲戒処分通知 杉田昇、
市職員分限懲戒審査委員会での審議の結果、地方公務員法第第29条の定めに従い、貴殿に以下の処分を課すことが決定したので通知します。減給10分の1、2か月。本件の直接的責任は坂井盛男の交通法規違反にあることは明らかですが、貴殿の指導監督も未熟で不十分な点が認められます。貴殿の監督次第では未然に防止できた不祥事であり、深い反省を要します。今後はこうした不祥事を起こさぬよう一層職務に専心されることを切望します。以上。なお、この処分に不服のある場合は、行政不服審査法に基づき、処分があったことを知った日の翌日から起算して60日以内に公平委員会に対して不利益処分に関する不服申立てを行うことができます。平成28年2月13日、田沼市長井上将司」
 坂井盛男が逮捕されて10日後、田沼市は無免許運転の現行犯で逮捕された財政課係長の坂井盛男を懲戒免職にしたことをマスコミに発表した。翌朝の長野日刊新聞の社会面に、「無免許運転の田沼市職員 懲戒免職」という見出しで、次の記事が掲載された。
「田沼市は、無免許運転の疑いで逮捕された田沼市財政課係長の坂井盛男(42歳)を懲戒免職処分にしたことを発表した。坂井元係長は、2月二日、市役所前の国道を無免許で自家用車を運転しているところを田沼署の署員によって逮捕されていた。また、上司の財政課長は監督責任を問われ減給10分の1、2か月の懲戒処分となった」
 坂井盛男の無免許運転による懲戒免職処分が新聞に掲載されたことで、市役所の職員は震え上がった。井上市長が市職員の交通違反歴を調べ上げ、井上市政に批判的な職員に対する粛清が行われたのではないかという噂が広まった。
 坂井盛男と採用同期の建設課道路維持係長の横田紀夫は、坂井が市役所から排除されたのは、3年前に行われた市立病院建設工事の官製談合をリークしたからでは思った。横田は坂井が入札課の主任だった頃、同期の飲み会で、坂井から「市立病院の工事入札で不正行為が行われた」という話を聞いたことを思い出した。市道の維持補修の発注業務を担当している横田は、上司で建設課長の佐々木健一から時々、奇妙な用事を頼まれることがあった。その用事とは、糊付けされた茶封筒を田沼市建設業協会の栗山守男事務局長に届けるというものだった。栗山守男は佐々木課長の前任者だ。田沼市建設業協会の事務局長のポストは、代々、建設課長の天下り先のポストになっている。今年の3月末で退職する佐々木が栗山の後任として建設業協会事務局長に天下ることになっていることを横田は知っていた。佐々木課長から渡されたあの茶封筒にはどんな内容の文書が入っていたのだろうか。もしかして、予定価格などの入札情報だろうか?
「くわばら、くわばら」横田は自分の身に危害が及ばないよう念じた。
(作:橘 左京)

posted by 地域政党 日本新生 管理者