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小説「廃屋の町」(第106回)

2017年11月23日ニュース

「市長、いいことを思いついたよ。『田沼市職員 現行犯逮捕 免許取消期間中に無免許運転』という見出しで、新聞沙汰になるというシナリオはどうかね?」
「そんなことができるんですか?」
「坂井はいまでも車を運転しているんだろう?」
「ええ、調べればすぐに分かりますが、坂井は車で通勤していると思います。また公用車を運転することだってあるでしょう」
「公用車じゃまずいから、坂井盛男が自分の車を無免許運転しているところを、警察に逮捕させるんだ。公務員の坂井盛男の名前は一回り大きな活字になって新聞に載るだろう。坂井の無免許運転が新聞に載ったら、今度は坂井に対する懲戒処分をマスコミに発表するんだ。そうすれば、坂井盛男の名前はもう一度新聞に掲載されるだろう。トップに楯突くとどういう仕打ちを受けることになるのか、職員に知らしめるにはいい機会だと思うよ。坂井が無免許運転をしていることを所轄署に連絡しておく必要があるが、それは市長の方でやってもらいたい」
「分かりました。ところで、中山邦夫のところに速度超過、点数12点、取消1年とありますが……」
「ああ、それかね。中山部長は30キロオーバーのスピード違反を2回やったようだ。2回とも富山県内だそうだ。その結果、免許取消1年の行政処分になった。市長、中山部長も懲戒処分の対象になるんじゃないのかね?」
「ええ、重い方から停職、減給、戒告の順になりますが、彼には、まだやってもらうことがありますから、処分保留ってところですか」
「中山部長の件は市長に任せるよ。いずれにせよ、私も市長も、選挙を目前に控えた大事な時期だ。選挙に影響するような不祥事が外部に漏れないように情報管理はしっかりやってもらいたいよ」
「分かりました」
 山田が帰った後、井上市長は中山部長を呼んだ。
「失礼します」
「まあ、掛けたまえ」
「はい」
「君が入札課長の時、入札係の主任をしていた坂井盛男って職員、今は財政課の予算係長をしているそうだが……。彼ね、一年半前、新潟県内で酒気帯び運転をして警察に捕まっているそうだよ」
「え、え、本当ですか?確か奥さんの実家が新潟県内だって、彼から聞いたことがありましたが……。酒気帯び運転をした場合は減給処分になりますが、どうしますか?」
「坂井が犯した大罪は職務上知り得た入札業務に関する秘密を漏えいした守秘義務違反だぞ。減給で済む問題ではないだろう!」
「では、どのようにすればよろしいでしょうか?」
「免職だ!」
(作:橘 左京)

posted by 地域政党 日本新生 管理者