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小説「廃屋の町」(第96回)

2017年11月3日ニュース

「青木建設の社長をしております青木敏夫と言います。ウチの会社は、土木工事を主体にした従業員が15人の小さな建設会社です。市の入札参加資格者名簿には、『土木』でCランク、『建築』でDランクの施工業者として登録されています」
「土木がCで建築がDですか。青木さんの会社では、市の公共工事を受注する機会は、年間どれくらいありますか?」甘木が尋ねた。
「はい、元請けでは年に5、6件受注していますが、多くは下請けや孫請けです。実際、市が入札に出す工事の多くはAやBランクの大きな業者しか受注できない工事です。細分化して1000万円以下の小さな工事にしてくれると、我々、中小の業者も受注することができるんですが……」
「そうすると、青木建設さんは元請けよりも、A、Bランクの業者が受注した大きな工事が細分化されて小さくなった工事を、下請けや孫請けで受注しているってことですか?」風間が尋ねた。
「はい、そのとおりです。県が発注する工事でもそうですが、元請けで受注すれば、それなりの儲けは出てきますが、下請けや孫請けで仕事をもらっても、雀の涙ほどの利益にしかなりません。しかし、安い仕事だからといって断れば、私らは食べていけません。儲けの少ない安い仕事だと分かっていながらもらっています」
「ところで、青木建設さんは建設業協会に加入されているんですか?」甘木が尋ねた。
「今は入っていません。去年の3月に協会を脱会しました。そしたら、なぜか、受注回数が減ってしまいました。協会に入っていた頃は年に十数件は受注できたんですが、今は5、6件と、協会に入っていた頃と比べて半分以下になりました」
「どうして協会を脱会されたんですか?」甘木が尋ねた。
「年会費が馬鹿にならない額ですからね」青木が答えた。
「そんなに高いんですか?年会費は幾らなんですか?」風間が尋ねた。
「年会費は均等割と実績割の二種類あって、均等割りは会社の規模に関係なく一律一社10万円です。一方、実績割の方は請負額の2%です。例えば1000万円の工事を受注すれば、実績割は20万円になります」青木が答えた。
「田沼市の今年度の公共工事予算は約67億円だから、市が発注した公共工事を建設業協会加盟の建設会社が全部、受注したと仮定すると、実績割は総額で約1億3000万円にもなるよ。それに国や県が発注する田沼市内の公共工事を受注すれば、総額はもっと増えることになるね。建設業協会の事務所経費や職員の人件費を差し引いても、かなりの余剰金が出ているんじゃないのかな?」
 風間が電卓を叩きながら言った。
「余剰金は数千万円規模になりますね」青木が答えた。
「ええ!そんなにあるんですか!」久保田が驚いた様子で言った。
「実は、この数千万円規模の余剰金が政治献金に回っているんです」青木が答えた。
「ええ!政治献金だって?税金が政治献金に化けているんだって?」風間が驚いた顔付きで言った。
「政治献金については、私の方から説明します」と加藤が言って、話を続けた。
「政治資金規正法によって、政治献金は誰が誰に対して年間幾らまで寄附できるかが決まっています。政治献金は、誰による寄附かで団体献金と個人献金に分けられます。団体献金は、業界団体や労働組合、宗教団体などによる寄附で、寄附の相手は政党や政治資金団体です。一方、個人献金の方は、個人による寄附で、寄附の相手は政党や政治資金団体、その他の政治団体、政治家個人です。団体献金も個人献金も年間の寄附額に制限があります。団体献金の方は750万円から1億円の範囲です。一方、個人献金の方は政党や政治資金団体に対しては無制限ですが、その他の政治団体や政治家個人に対しては、150万円までです。政治献金についての一般的な説明はここで終わりにして、青木さん、話を続けて下さい」
(作:橘 左京)

posted by 地域政党 日本新生 管理者