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小説「廃屋の町」(第93回)

2017年10月28日ニュース

 1月下旬、雪の降る中、甘木雄一の事務所に3人の男が訪ねて来た。
「ごめんください。こちらは甘木雄一さんの選挙事務所でしたね?」
「はい、そうですが。どちら様ですか?」事務所番をしていた久保田恵子が尋ねた。
「市議会議員の明間と申します。甘木さんはおいででしょうか?」
「あいにく、挨拶回りに出掛けていますが、間もなく戻ってくると思います。それまで、こちらでお待ちください」久保田は三人に着座を促した。
「ただいま」甘木と風間が言った。
「おかえりなさい」久保田が言った。
「今日の雪は降り止まないね。天気のいい日だと、外に出掛けて留守にしている家が多いんだけど、今日のような天気の悪い日は、家に居ることが多いみたいだよ。数はこなせないけど、家の中に上げてもらって、こっちの話を聞いてもらったり、家の人の話を伺ったりと、ゆっくり話ができて良かったよ」
 風間が言った。
「甘木君、お客さんがお待ちよ」久保田が言った。
「市長選挙に出馬される甘木雄一さんですね?私は市議会議員の明間昇と申します。こちらは県議会議員の加藤功さんです」
「初めまして、田沼市選挙区選出の加藤功と申します」
「私は市内で建設業をやっています青木敏夫と申します」
 3人は甘木に名刺を渡した。
「甘木雄一と申します。よろしくお願いします」
 甘木は顔写真入りの名前とプロフィールを書いたカードを三人に渡した。
「私は、選対本部長を務めています風間健一と申します。割烹『寿屋』を経営しています」
 風間は「甘木雄一選挙事務所選対本部長 風間健一」と書かれた名刺を3人に渡した。
「私は事務局長を務めています久保田恵子と申します」
 入れたてのコーヒーを持ってきた久保田が言った。
「市長選まであと、あと3か月ほどになりましたね。準備は順調に進んでいますか?」
 明間が甘木に尋ねた。
「初めての選挙なものですから、選挙実務のプロの方から、アドバイスを受けながら何とかやっていますが……」甘木が答えた。
「選挙実務のプロって?どなたですか?」明間が尋ねた。
「元田沼市の職員で、選挙管理委員会に長く務めていた方から教えてもらいながら選挙準備を進めています」甘木が答えた。
「その方って、もしかして米内修二さんですか?」明間が尋ねた。
「ええ、そうですが……」甘木が答えた。
「米山さんですか!我々市議も選挙になると米山さんにお世話になったもんですよ」
 明間が言った。
「今年は選挙イヤーですね。四月の統一地方選挙で県議選と市長選が行われ、10月には市議選と県知事選挙が行われます。気の抜けない一年になりそうです。統一地方選挙の前半の日程で行われる県議選の田沼市選挙区は、今回は選挙になりそうです」加藤が言った。
 県議会議員選挙の田沼市選挙区の議員定数は二人で、県政与党の民自党と野党の改進党が、それぞれ一議席ずつ議席を分け合っている。
「県議選には現職二人が出馬するって話を聞いていましたが、その他に新人が出るんですか?」
 風間が尋ねた。
「国会議員の元秘書が無所属で出馬するという情報が入ってきました。本日、甘木さんの事務所にお伺いした趣旨は、春の県議選と市長選、それに秋の市議選と選挙が続くなかで、連携・協力関係を構築できるのではないかということです。」加藤が言った。
「連携・協力関係とはどういうことですか?」甘木が尋ねた。
(作:橘 左京)

posted by 地域政党 日本新生 管理者