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小説「朱鷺伝説」(第2回)

2017年4月7日ニュース

「いただきます」雄太の家では、家族で夕ご飯の食卓を囲んでいた。
「お父さん。今日ね。佐渡島で10羽の朱鷺が外に放されたって、夕方のニュースに出ていたよ」
 雄太は仕事から帰って来た父に向かって言った。
「そうだね。お父さんも職場のテレビで朱鷺が放鳥されたニュースを見ていたよ」
 雄太の父は動物園に務めている。
「お父さん、放鳥された10羽は中国産の朱鷺を繁殖させて増やした朱鷺だってニュースで言ってたけど、どういう意味?」
「朱鷺の学名はニッポニア・ニッポンと言うんだけれど、昔は日本の東北地方や日本海側に生息していたごくありふれた野鳥だったんだ。お父さんは野生の朱鷺は見たことがないけれど、お父さんのお爺さん、雄太のひいじじが子供の頃には田んぼや小川で朱鷺が普通に見られたそうだよ」
「ひいじじが田んぼや川にいる朱鷺の姿を見たのは随分と昔のことでしょう?」
「そうだね。100年くらい前の明治から大正時代のことだね」父の話は続いた。
「昔は日本の各地に生息していた朱鷺だけれども、乱獲や開発によって数が減ってしまったんだ。昭和58年に佐渡島に残っていた日本産の5羽の朱鷺が捕獲されて人工繁殖で増やそうとしたけれどもうまくいかなかったんだ。平成15年には最後に残ったメスの「キン」が死んで日本産の朱鷺は絶滅してしまったんだ。そこで中国から贈られた朱鷺を人工繁殖させて増やすことにしたんだ。朱鷺保護センターで飼育している朱鷺が増えてきたことから、朱鷺が野生でも生きていけるようにと訓練した10羽を、今日、初めて自然界に放したんだよ」
(作:橘 左京)

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posted by 地域政党 日本新生 管理者