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小説「祭ばやし」(第9回)

2017年1月29日ニュース

 ピーシャラ ピーシャラ
 ドドンコ、ドン ドドンコ、ドン
 トコトン トコトン
 チンチン、カンカン
 今日は最後の練習日。公園には大勢の見物客がいた。太鼓の練習に参加している子供たちの母親や祖父母たちだ。3日前から本番を意識した練習になった。和太鼓2台と樽太鼓4台を使って子供たちが交代で練習している。今まで下駄のような板を叩いて練習していた春香と雄太君は樽太鼓を叩いている。
 ドドンコ、ドン ドドンコ、ドン
 トコトン トコトン
「その調子。いいぞ!今日が最後だからね。気合を入れてがんばって!」
 指導役の井上さんの声に熱がこもる。
 ピー
 練習の終了を告げるホイッスルが鳴った。
 集まった子供たちの前で井上さんの最後の講評が始まった。
「練習は今日で全て終了しました。1週間前から始めた練習ですが、笛や鉦のリズムに合わせて上手に叩けるようになりました。お祭りの日には大勢の人がやってきて、皆さんが太鼓を叩く姿を見ていますが、緊張しないで普段どおりに叩いてください。丸一週間、練習が続いたので疲れがたまっていると思います。明日と明後日はゆっくり体を休めてください。お祭りは24日と25日の2日間の日程で行われます。24日は午後3時、25日は午後3時半に山車が出ます。15分前には公園に集合してください」
 井上さんの話は続いた。
「最後にお祭りの時に着る法被を配ります。青い法被は男の子用です。紅い法被は女の子用です。間違わないように持って帰ってください」
 練習を終えた春香が紅い法被を持って徹のもとに戻った。徹と春香は家路についた。
「ただいま」
 春香が台所に居る由紀子に帰宅を告げる。
「お帰りなさい。春香、スイカでも食べる。冷えているわよ」
 由紀子が冷えた西瓜を載せたお盆を居間に運んだ。お盆には銀杏切りにした西瓜が並んでいる。春香は西瓜を食べ終わると、早速、持って帰った紅い法被を試着した。小柄な春香には少し大きかったようだ。法被の袖に両腕を通した春香の姿を見て、徹は思わず高笑いした。法被姿の春香が筒袖を着て両腕を伸ばした恰好の奴凧に見えたからだ。
「お父さん。何がそんなに可笑しいの」
「だって春香の格好が奴凧に似ているからだよ」
「何よ、お父さんって嫌い」
 由紀子も貰い笑いした。機嫌を損ねた春香の頬がぷっくらと膨らんできた。今度はお多福のような顔になった。徹はじっと笑いをこらえた。
(作:橘 左京)

posted by 地域政党 日本新生 管理者