小説「祭ばやし」(第5回)
2017年1月21日ニュース
ピーシャラ ピーシャラ
ドドンコ、ドン ドドンコ、ドン
トコトン トコトン
チンチン、カンカン
太鼓の練習が始まって2日目。徹はベンチに座って春香の練習を見守った。お盆が過ぎた頃から朝晩の空気がひんやりとしている。少しずつ秋の気配が感じられるようになった。今夜は満月の夜だ。月明かりに照らされた地面の上で子供たちの影が動く。
トコトン、トコトン
太鼓から少し離れた場所で、春香と雄太君は先輩たちのバチさばきを見ながら慣れない手つきで木の板を叩いている。
ピー
練習の終わりを告げるホイッスルが鳴った。
「はい。今日の練習はこれで終わりにします。だんだんと上手に叩けるようになりました。この調子で頑張ってください。太鼓はゆっくり叩くと大きな音が出ます。6年生の木村君と鈴木君は今年が最後の太鼓になるので、しっかりと練習をして本番に備えて下さい」
指導役の井上さんの講評を聞いた後、子供たちは後片付けを始めた。後片付けを終えた春香がベンチで待つ徹のもとに戻った。
「春香、家に帰ろうか」
「うん」
突然、春香が立ち止まって夜空を見上げた。
「お父さん、まんまるいお月さまが出ているよ」
見上げると雲間から顔を出した満月が見える。
「春香、見てごらん。ウサギが餅つきをしているよ」
「えー。ほんとに!」
月齢がほぼ十五日なので新月から約十五日が経つと満月になる。満月の夜は十五夜。もう1か月もすれば中秋の名月が見られる。徹は思わず口ずさんだ。
「うさぎ うさぎ なに見てはねる」
「春香も一緒に歌う」
「うさぎ うさぎ なに見てはねる 十五夜お月さま 見てはねる」
(作:橘 左京)
posted by 地域政党 日本新生 管理者