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小説「廃屋の町」(第99回)

2017年11月9日ニュース

「はい、田沼市建設業協会の頭文字をとって『TK』です。このTK口座を経由して、会員企業から年会費を徴収したり、逆に個人献金を振り込んだりしています。もちろん、年会費の領収書の宛名は会社名義ですが……」青木が答えた。
「すごいわ!政治資金の集金・分配システムが出来上がっているのね!」久保田が言った。
「このTK口座は、もう一つ別の用途でも使われています」青木が言った。
「もう一つの用途?」甘木が尋ねた。
「入札参加協力金の決済口座です」青木が言った。
「入札参加協力金?」久保田が尋ねた。
「落札業者から落札できなかった入札参加業者に支払われる協力金です。形だけ入札に参加した業者に対して、落札業者から支払われる手間賃です」青木が言った。
「形だけ入札に参加した業者って、どういう意味ですか?」風間が尋ねた。
「落札予定の業者以外の入札参加業者のことです。最初から落札することを考えていない業者のことです。実は、入札前に落札する業者が決まっています。」青木が答えた。
「入札前に落札する業者が決まっているって、それって談合でしょう?」久保田が尋ねた。
「そうです。入札談合です」青木が言った。
「それと、今、入札協力金って聞いたけど、落札業者は落札しなかった業者に対して、幾ら払うんですか?」久保田が尋ねた。
「例えば、A社が1000万円で落札したとします。この工事の入札にはA社のほかに10社が参加したとします。そうしますと、落札したA社は落札額1000万円の1%にあたる10万円を、入札協力金として10社に1万円ずつ、均等に支払います。この入札協力金の決済は協会に預けているTK口座を介して行われています」青木が答えた。
「1億円の工事を受注すれば、1社あたり10万円の入札協力金が支払われるということか」
 風間が言った。
「建設業協会に支払う実績割の年会費が受注額の2%。それと形だけ入札に参加した業者に支払われる入札協力金が受注額の1%。合わせて3%になります。田沼市が発注する公共工事の平均落札率が95%以上と県内市町村の平均と比べて極めて高くなっていることと何か関係があるんでしょうか?」
 甘木が尋ねた。
「田沼市の公共工事の落札率が高止まりになっているのは、発注者側から入札情報の提供があるからです」青木が答えた。
「それって、官製談合ってことでしょう?」久保田が尋ねた。
「そうです。入札談合にしろ、官製談合にしろ、これらの調整は建設業協会で行われています。山田信夫会長と市役所OBの栗山守男事務局長の二人が采配しています」青木が答えた。
「栗山守男って、市の建設課長をやった人じゃないの?」久保田が言った。
「そうです。建設業協会の事務局長のポストは、合併前から田沼市建設課長の天下りポストになっています」青木が答えた。
「だから、市が発注する公共工事の入札情報も入手し易やすくなっているんだろうね。特に予定価格は喉から手が出るほどに欲しい入札情報だからね」風間が言った
「実は、協会が管理しているTK口座には更に、もう一つの用途があるんです」青木が言った。
(作:橘 左京)

posted by 地域政党 日本新生 管理者