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反知性主義がもたらす衆愚政治の危険(その2)

2015年7月17日トピックス

 古代ギリシャの哲学者プラトンは、物事を多数決で決する(直接)民主主義は最悪の政治形態だといっている。プラトンは人間が堕落して理性を失って社会が荒廃した結果が民主主義であり、また民主主義こそがそういった社会を生み出すと。つまり世の中の人間を頭の良い人間と頭の悪い人間を分類すれば、必ず頭の良い人間は少数者で頭の悪い人間は多数者になる。数に勝る頭の悪い人間によって社会が支配され、めちゃくちゃになるというものだ。いわば衆寓政治に陥ると言うのだ。だからプラトンは一番頭の良い人間が独裁するのが最も効率的でよい政治(哲人政治)になる主張する。

 プラトンが人間をあらかじめ優秀な人間と無能な人間とに色分けしていることに対しては違和感を覚える。人民一人一人に物事を決するための権利(投票権)を等しく与える民主主義が健全な形で機能するには、権利行使の判断材料となる情報が充分に与えられていることが大前提だ。プラトンの生存した時代は、情報を持った少数者と情報を持たざる多数者の情報格差があったはずだ。多数決で物事を決すれば情報を持たざる多数者の誤った判断が優先され政治にゆがみが生じることになる。
 プラトンよりも100年程前に生まれた孔子は「民は之に由らしむ可し、之を知らしむ可からず」という言葉を残している。「為政者は国民から信頼されて導いていかなければならないが、国民に正しい教えを完全に理解させるのはとても難しい」という意味だ。孔子がこの言葉を説いた時代は、民衆にあまり知識がなく文字を読めない人も相当いたはずだ。まして全国に隈なく情報を伝える手段もなかった。だからこそ為政者は自分の人徳を磨き、民衆の信用・信頼を得て、民衆を正しい方向に導かなければならなかった。情報化社会の現代。孔子やプラトンが生存した頃と違って情報格差はない。しかし巷に溢れる情報には、正しい情報もあれば誤った情報もある。根拠(裏付け)のある情報もあれば風聞・風説のような不確かな情報もある。反知性主義に陥らないよう、膨大な情報から必要な情報を探し出して分析・活用する能力(情報リテラシー)が求められている。

 世論を二分している安全保障関連法案が昨日(16日)衆議院で可決されて参議院に送られた。プラトン流の考え方(哲人政治)でこれまでの安全保障法案の国会審議を振り返ると、多数の愚民(国民)と少数の賢人(選良、国会議員)という構図が浮かび上がる。与党議員の振る舞いを見ていると「賢人会議(国会)で民主的ルール(多数決)に従って決めたのだから、愚民(国民)は文句を言うな。」と言わんばかりである。国民が愚民ということであれば、その国民に選ばれた国会議員は更なる愚民ではないか。(笑い)来夏の参議院選で賢者であることを証明しよう。
(あとがき)
 昨日、安倍首相は、新国立競技場について「国民の声に耳を傾けながら(大会が)成功するように万全の準備を進めていきたい」と記者団に語り、建設計画の見直しを検討することを表明した。また菅官房長官は同日の記者会見で「国民の理解が得られるよう丁寧に説明していく」と発言した。新国立競技場の整備費が2520億円に膨張したことに対して多くの国民から批判が出ていることを踏まえたものだ。ならば国民の理解が充分に得られていないと安倍首相自身が認めている安全保障法案をなぜ強行採決したのか。今の国会審議を見ていると少数の愚者による政治だ。
(代表 天野市栄)

 

posted by 地域政党 日本新生 管理者