2024年4月
« 3月    
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

ブログ

評論「政治とカネ」(第8回)

2018年11月20日ニュース

 一般職の公務員と違って、特別職の公務員である閣僚や首長(いずれも政治家)による汚職がマスコミ報道によって公になっても、収賄罪として立件されるケース極めて少ないような気がします。なぜでしょう?理由は二つあると考えています。
 一つには「立件の困難さ」です。「収賄罪」の成立要件になっている「職務との関連性」の立証が極めて難しいからです。一般職の公務員と比較して特別職の公務員(政治家)の職務範囲が広くて曖昧になっています。例えば、首長の職務権限については地方自治法の第147条から第149条に定めてありますが、一般的、抽象的な内容になっています。第147条では「当該普通地方公共団体(都道府県、市区町村)を統轄し、これを代表する」とあり、次の第148条では「当該普通地方公共団体の事務を管理し及びこれを執行する」とあります。もう少し詳しく首長の職務権限を規定しているのが第149条で、「概ね左に掲げる事務を担任する」とあり9項目が列挙されています。「普通地方公共団体の議会の議決を経べき事件につきその議案を提出すること」(1号)、「予算を調製し、及びこれを執行すること」(2号)「地方税を賦課徴収し、分担金、使用料、加入金又は手数料を徴収し、及び過料を科すること」(3号)などです。

 首長の職務権限は多岐に渡っていますが、現場で遂行しているのは担当職員(一般職の公務員)です。住民や関係機関宛てに発行する公文書は首長名義になっていますが、実際は担当職員が首長の職務権限を代行しています。従って、「収賄罪」の成立要件になっている「職務との関連性」では、第一義には担当職員の職務との関連性が問われ、首長の職務権限にまで及ぶこと極めてまれです。首長から担当職員や上司である幹部職員に直接、不正行為を指示することはほとんど無いからです。首長からは「指示」ではなくて「示唆」が行われます。レクチャーなどで首長と接する機会が多い幹部職員は、首長から不正な行為を示唆されたとしても、真意を読み取り(忖度して)、不正行為を正当化(隠ぺい)するためのアリバイ作りや偽装工作に心血を注ぎます。「忖度」の見返りは、論功行賞的に行われる人事(昇進)や天下り先の提供です。首長と不正行為を示唆された腹心の幹部職員との間にも「ギブ&テイク」の関係が成立します。首長の私益実現のために奉仕した職員が厚遇される一方で、住民福祉向上という公益実現のために、法令を順守する真面目な職員は冷遇されたり、不正行為を指示した上司からパワハラを受けることもあるでしょう。

 政治家に対する収賄罪の成立を妨げているもう一つの理由は、行政上の便宜供与の見返りとして受け取った「カネ」が、政治家個人が受け取った「賄賂」としてではなく、自身が関係する政治団体が受け取った「政治献金」として経理処理されるからです。政治家の関与が疑われるような行政上の便宜供与を受けた個人や団体から受け取ったカネが政治資金収支報告書に記載されていなかったことが度々マスコミ報道されますが、受け取ったカネは便宜供与の見返りとして政治家個人が貰った賄賂だったかもしれません。政治家個人が貰ったカネであれば政治資金収支報告書に記載する必要はありませんが、収賄罪や所得税法違反の罪など重罰に問われ、政治生命が絶たれてしまいます。このような政治家としての生死にかかわる事態は絶対に避けなければなりません。そこで「カネの偽装工作」が行われます。本当は政治家個人が便宜供与の対価として受け取ったカネ(賄賂)なのに、自身が関係する政治団体が受け取った政治献金(寄附金)として偽装され、政治資金収支報告書の記入漏れという形で決着させているのではないかと考えています。便宜供与の対価として政治家が個人的に受け取ったカネ(賄賂)であっても、事件が発覚しそうになると政治団体が受け取った政治献金に摺りかえられてしまうので、結果的に政治資金収支報告書への記載漏れとなります。報告書を訂正して選挙管理委員会に提出すれば、それで事は終わりです。最初から政治献金として貰ったカネであれば、最初から政治資金収支報告書に記載されているはずですが、最初は政治家個人が賄賂として貰ったカネなのに、後になって政治団体が貰った政治献金として偽装工作が行われているものと考えます。

 政治家から便宜供与を受ける相手の多くはその政治家の支持者や支持団体ですが、政治家と支持者・支持団体の間で「ギブ&テイク」の関係が成立していることから、選挙になると政治家から便宜供与を受けた支持者や支持団体から票の取りまとめという形でお返しがきます。政治家が全体の奉仕者たる公務員(特別職)であるとの立場を忘れ、支持者や支持団体の利益確保を優先する一部の奉仕者になってしまうという、公益よりも私益を優先する構造的な問題が潜んでいます。国民(住民)の幸せよりも自身やその支持者(支持団体)の幸せしか念頭にない政治家(政治屋)の実相が見え隠れしています。
(作:橘 左京)

「真実は内側、裏側、後ろ側にある!元市長が明かす闇に隠れた真実!」
 小説「廃屋の町」好評発売中!

※本書の購入を希望される方は、ネット書店か宣伝用チラシを印刷して一般書店に提示してください。注文がスムーズに行えます。なお、一般書店では下記書店で在庫ありとの情報を得ておりますので、在庫状況を再度確認の上、注文してください。
「本の店 英進堂」
新潟市秋葉区新津1876
コモタウン新津 ホームセンタームサシ内
TEL.0250-24-1187

posted by 地域政党 日本新生 管理者